鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

蟷螂図鐔 加賀 Kaga Tsuba

2010-06-10 | 
蟷螂図鐔 加賀




蟷螂図鐔 無銘加賀

 平滑に仕立てた赤銅地の表面を微細な石目地に仕上げ、金の平象嵌で蟷螂のみを描き表わした作。足と手の先端、長く伸びた触覚、左右に開いた口。いずれも0.2ミリほどの太さの線象嵌である。雪ノ下図鐔とは全く同じ造り込み。蟷螂のみを簡潔に描いており、黒一色の中に立つ孤高の蟷螂の印象がある。

雪ノ下図鐔 加賀 Kaga Tsuba

2010-06-10 | 
雪ノ下図鐔 加賀




雪ノ下図鐔 無銘加賀

 この鐔は、以前紹介したことがあるも、加賀象嵌の作例を眺める上で特徴顕著である点と、頗る繊細緻密な作業の上に成り立っている作品であるため、再度鑑賞したい。
 初夏の木陰に可憐な花を咲かせる雪ノ下の、その特徴的な様子を極細の線描で表わした鐔。毎々同じ表現にならざるを得ない加賀象嵌だが、この作品では、細く伸びる花弁、綺麗な曲線を描く蔓、葉脈を0.3ミリほどの幅の平象嵌と毛彫で表わしている。特筆すべきは花弁の中央をわずかに窪ませて柔らか味を表わす特殊な手法、葉裏にみられる微細な毛状の突起は銀光沢の強い特殊な金属を0.1ミリほどの粒状に固着して表現している。葉は金と朧銀の平象嵌に毛彫。殊に美しい作例である。□