鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

時鳥図小柄二題

2010-06-08 | 小柄
時鳥図小柄二題



① 時鳥図小柄 銘 佐野道好(花押)



② 時鳥図小柄 銘 行年七十三歳政随

 初夏の鳥として和歌にも詠まれている時鳥。それ故にPhoto①のように月を描き添えた雅な表現とされることが多い。佐野派の道好(みちよし)の手になるこの小柄は、赤銅魚子地に月は金の色絵でぼかした表現。時鳥は高彫金色絵。このぼかしの手法は金工では難しい。金工の特徴は色金の境界部分が鮮明になるからで、ぼかしを施すために布目象嵌や、ここで用いられているケシと呼ばれる色絵手法を採ることがある。この作では魚子地によって効果が高められている。□
 Photo②の政随(まさゆき)の作は、同じように時鳥を題に得ていながらも緊張感に満ち満ちている。戦いに向かう武士の姿を見るようでもある。川中の逆茂木の存在が、この空間のおかれている状況を暗示しているのだ。
 江戸時代の金工が採る時鳥や野鳥を題に得た図は①のような風雅な作例が多い。琳派のような文様表現もこれに類している。