鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

水辺に鷺図鐔 橋本一至

2010-06-01 | 
水辺に鷺図鐔 橋本一至


水辺に鷺図鐔 銘 橋本一至(花押)

 水辺の風景を一幅の掛軸を見るように美しく彫り表わした、橋本一至(はしもといっし)の頗る綺麗な鐔。一至は後藤一乗の門人の一人。師風の正確で精密な彫刻表現を得意としている。この鐔は、一乗にみられるような微細に揃って詰み澄んだ魚子地に長閑な景色を描いているも、絵画風であり文様風であり、琳派の影響を受けていることが良くわかる。一至には、一琴などにもみられるような、鉄地に独特の鏨使いになる植物図があり、独創を試みたと推測される作もある。師風を手本としたとは言え、とにかく美しい。
 赤銅(しゃくどう)とは金と銅の合金で、表面を特殊な薬と反応させて真っ黒な色合いに仕上げる。これが色揚げ。赤銅だけではない。金無垢地も、朧銀、銀、素銅、真鍮などなど、金工作品に施されている金属すべては最終的なこの色揚げによって独特の美しい色調を呈するのである。
 この鐔は、作品の表面が綺麗に揃った微細な点の連続であるため、モニタによってはモアレが生じて見え難い場合があります。ご容赦下さい。