とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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バンテージ・ポイント

2008年03月08日 20時32分16秒 | 映画評論
映画「戦火の勇気」(1996年作)は湾岸戦争で戦死した一人の女性兵士の最期の姿を様々な視点から描き出した戦争ドラマだった。
戦死した女性が繊細であったとか、臆病であったとか、勇敢であったとかを喧々諤々と議論するような映画で、日本人の目から見てどちらかというと戦死した人に失礼ではないか、というような内容だった。
主演したのはメグ・ライアン。
90年代アメリカ映画ラブコメの女王が演じたこの映画は、ラブコメ脱却を図った本人とは裏腹に芳しい成績を収められなかったような気がしないでもない。
それが証拠にメグ・ライアンの姿をスクリーンで見かけることがすっかり無くなり、ロブ・ライナー作品やノーラ・エフロン作品がお気に入りの私としては、少しばかり寂しいところではある。

このメグ・ライアンの実生活での夫だったのがデニス・クエイド。

イメージとは裏腹に男に色目を使うことに余念が無かったメグ・ライアンの度重なる浮気を赦しつづけていた寛大なご仁だったが、ラッセル・クロウとのなんだかんだをきっかけに別れた。
以後、メグ・ライアンはスクリーンから姿を消した一方、デニス・クエイドは作品に恵まれ始めたと言えるのかも知れない。

今日公開されたばかりに「バンテージ・ポイント」はそういう一作。

久しぶりの土曜日休みで「退屈やの~」と時間を持て余したところ、「んなら映画でも観に行くか」と自分で自分を励まして見に行ったのがこの映画だった。
その結果は大正解。

まったく期待もせずに、というか、もともと見る予定もなかった映画なので、できが良かっただけに感激もひとしおだ。
なんといっても映画の構成がバッチリ。
メグ・ライアンの「戦火の勇気」が一人の人物にスポットライトを当てた複数パターンのドラマとすれば、元夫のデニス・クエイドの今回の作品は、ひとつの出来事にかかわるひとつの出来事に対してスポットライトを当てた凄い映画だったということが言える。

ともかく見ていて、休む暇がない。
緊張の連続なのだが、複数の同時進行されるドラマがどのようにつながり、どのような結末を迎えるのか。
不安と期待で観客の頭は一杯になる。
観客はひとつひとつのドラマを見つめる「天空からの目」の位置にいるのかも知れないが、神様と違うのは結末を知らないこと。
ともかく「どう繋がるんだ?」というのが最期まで目を放せない構成になっているのだ。

それに盛り上げ方が凄い。
もともとテンポの速い映画にも関わらず終盤の3分の1は、スティーブ・マクイーンの「ブリッド」なんか敵にならない、というぐらい凄いカーチェイスが展開される。

ともかく、元嫁さんのメグ・ライアンが没落したのとは反対に、50を過ぎてからメキメキ男を上げてきたデニス・クエイドである。

ところで、映画館から出て歩いていると若いカップルが「ハリソン・フォードみたいだったね」と言っていたのには、まったく同意しなければならないと思った。
ある意味、クエイドはフォードより凄かった。

~「バンテージ・ポイント」2008年作 コロンビア映画~


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