とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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2000年間で最大の発明は何か

2007年05月16日 20時59分43秒 | 書評
私が過去2000年間で最も大きな発明は何かと問われれば、間違いなく米テレビシリーズ「スタートレック」をあげるだろう。

人は時として現実を受け入れることができず、妄想や想像の世界に生きることを見いだそうとする。
それには様々な原因が考えられるが、それらは過酷な競争社会であったり、受験のプレッシャーであったり、営業ノルマへのプレッシャーであったり、失恋や片思いといった性的な悩みかも分らない。
これら様々な要因が人の心を押しつぶそうとした時、家庭の居間でのんびりと観賞のできるテレビ番組が「心の救世主」となり、そのドラマの世界にどっぷり浸かり現実世界から逃避することにより自己の救済を図るようになるのだ。

逃避するために、テレビの中の虚実の世界が人間の想像と妄想の世界を大きく膨らませ、やがて「これは、現実ではないのか」と錯覚させるがごとき様相を呈するに到る力があることを証明したのが「スタートレック」なのだ。

番組のファンは番組の熱烈な信者として「トレッキー」という称号を与えられる。
このトレッキーのユニークさは映画「ギャラクシークエスト」にもパロディとして描かれるくらい個性に富んでいる。

トレッキーは公衆の面前で宇宙船エンタープライズ号のユニホームを恥じらうことなく纏う。
また別のトレッキーは映画の撮影でもないのに、しらふで特殊メイクを施して、異星人のユニホームを纏い「カリマー!」などと叫んだりする。
さらに別のトレッキーは人がマジメに話をしているのに、「船長、それは非論理的です」などと相づちを打ったりするのだ。

周囲が思わず引いてしまうその光景は、まさしく「ある種の宗教」を彷彿させるオーラを持つ。

この状況が40年も持続される姿は、世界三大宗教が創造された初期の光景と酷似していることだろう。

なお、筆者も過去に番組のユニホームを纏い街中で仲間とアホをしたこことがあるが、それは今では秘事である。

ということでネット上で「キリスト生誕から2000年の間に成し遂げた人類の一番大きな発明は何ですか?」と質問を投げ掛け、主に科学界に席を置く著名人が答えた返答集が本書である。

多くの人々が「グーテンベルグ式の印刷機」を挙げているが、編者があとがきで述べているように、発明とは事実の積み重ねの結果生まれてきたものであって、忽然と姿を現すものでもないわけだ。
その積み重ねと条件を備えた人材の出現が、発明品を生み出す。
そしてそれは確実に人々の生活や、考え方を変化させ、人類の歴史を形作っていっている。
このれは否定することのできない事実でもある。

読み進むうちに「この人、何が言いたいの?」という意見もないではないが、思わず相づちを打ったり、自分ならこういう考えがある、と考え、そして想像しながら読み進んで行ける楽しい一冊であることは間違いない。

~「2000年間で最大の発明は何か」ジョン・ブロックマン編 高橋健次訳 草思社刊~


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