人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「METライブビューイング2022~2023シーズン」ラインナップ決まる / 東京シティ・フィル(7/9)のチケットと取る / トーマス・マン「リヒァルト・ヴァーグナーの苦悩と偉大」を読む

2022年06月13日 07時16分04秒 | 日記

13日(月)。「METライブビューイング 2022~2023シーズン」のラインナップが発表されました METライブのホームページによると、今年11月25日から来年7月20日までに全10演目が上映されます ラインナップ(上演順)は次の通りです

ケルビー二「メデア」(MET初演)カルロ・リッツィ指揮、デイヴィッド・マクヴィカー演出。ソンドラ・ラドヴァノフスキー、マシュー・ポレンザーニほか。

ヴェルディ「椿姫」ダニエル・カッレガーリ指揮、マイケル・メイヤー演出。ネイディーン・シエラ、スティーヴン・コステロ、ルカ・サルシほか。

ケヴィン・ブッツ「めぐりあう時間たち」(世界初演)ヤニック・ネゼ=セガン指揮、フェリム・マクダーモット演出。ルネ・フレミング、ケリー・オハラ、ジョイス・ディドナートほか。

ジョルダーノ「フェドーラ」(新演出)マルコ・アルミリアート指揮、デイヴィッド・マクヴィカー演出。ソニア・ヨンチェヴァ、ピョートル・ベチャワほか。

ワーグナー「ローエングリン」(新演出)ヤニック・ネゼ=セガン指揮、フランソワ・ジラール演出。ピョートル・ベチャワ、クリスティーン・ガーキーほか。

ヴェルディ「ファルスタッフ」ダニエル・ルスティオー二指揮、ロバート・カーセン演出。ミヒャエル・フォレ、アイリーン・ペレスほか。

R.シュトラウス「ばらの騎士」シモーネ・ヤング指揮、ロバート・カーセン演出。リーゼ・ダーヴィドセン、イザベル・レナード、エリン・モーリーほか。

テレンス・ブランチャード「チャンピオン」(MET初演)ヤニック・ネゼ=セガン指揮、ジェイムズ・ロビンソン演出。ライアン・スピード・グリーン、エリック・オーエンスほか。

モーツアルト「ドン・ジョヴァンニ」(新演出)ナタリー・シュトゥッツマン指揮、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出。ペーター・マッテイ、アダム・プラへトカほか。

モーツアルト「魔笛」(新演出)ナタリー・シュトゥッツマン指揮、サイモン・マクバーニー演出。エリン・モーリー、ローレンス・ブラウンリー、トーマス・オーリマンスほか。

上記の通り、新シーズンの特徴は、第一にMET初演が3演目、新演出が4演目と進取の精神に溢れた内容になっていることです 第二に、シモーネ・ヤングとナタリー・シュトゥッツマンという2人の女性指揮者が3公演タクトをとるということです 歌手陣が最強のプログラムはケヴィン・ブッツ「めぐりあう時間たち」です ルネ・フレミング、ケリー・オハラ、ジョイス・ディドナートといったMETを代表する女性歌手陣が出演します 世界初演なのでどういう内容のオペラかまったく分かりませんが、興味を惹かれます 唯一残念なのはMETのディーヴァ、アンナ・ネトレプコの名前がないことです

ということで、わが家に来てから今日で2710日目を迎え、北朝鮮の金正恩国務委員長(朝鮮労働党委員長)は12日、ロシアの独立記念日に当たる「ロシアの日」に合わせて、プーチン大統領に祝電を送り、「ロシアの尊厳と安全、発展を守るための正義の偉業実現へあらゆる挑戦と難関を果敢に乗り越え、大きな成果を収めている」とプーチン氏を讃え、同氏の支持を表明したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     核の脅威を背景に 世界を混乱に貶める独裁者同士で気が合うらしい 困った奴らだ

 

         

 

東京シティ・フィル「第69回ティアラこうとう定期演奏会」のチケットを取りました 7月9日(土)午後3時からティアラこうとう大ホールで開かれます。プログラムは①バルトーク「舞踏組曲」、②モーツアルト「フルート協奏曲第1番K.313」(Fl=首席:竹山愛)、③ブラームス「交響曲第3番」です 指揮は同フィル常任指揮者・高関健です

 

     

 

         

 

トーマス・マンの講演集「リヒァルト・ヴァーグナーの苦悩と偉大」(岩波文庫)を読み終わりました トーマス・マン(1875ー1955)は「魔の山」(1924年)で有名なドイツ出身の小説家です 本書はトーマス・マンがリヒァルト・ヴァーグナー(1813ー1883)を論じた講演2篇を収録しています

 

     

 

第1回目の講演「リヒァルト・ヴァーグナーの苦悩と偉大」は1933年2月10日、ミュンヘン大学の講堂で行われたものです その3日後の2月13日がヴァーグナーの没後50年目に当たり、この講演はそれを記念するためのものでした マンはその翌日から、この講演録を持ってアムステルダム、ブリュッセル、パリを回り、各地でのヴァーグナー記念の催しに出席すべくドイツを旅立ちました。しかし、この1933年はナチスの政権掌握の年でした 旅程を終えたマンが静養のため滞在したスイスで読んだ故国の新聞には「トーマス・マンは『逃亡』したことによって、当然受けるべき処罰を免れた」と言う記事が載っていたのです さらに、4月のミュンヘンの新聞には「リヒァルト・ヴァーグナー都市ミュンヘンの抗議」と題して、マンのこの講演を非難する声明文が掲載され、その署名者にはバイエルン州文部大臣、バイエルン国立劇場総監督、音楽アカデミー議長、商工会議所会頭等と並んで、作曲家リヒャルト・シュトラウス、ハンス・プィッツナー、指揮者ハンス・クナッパーツブッシュの名もあったのです マンが国外にあった約2か月の間に政治的状況は急変し、マンは身の危険が予想され帰国出来なくなってしまったのです

この声明文の内容は、「われわれは偉大なドイツの巨匠リヒァルト・ヴァーグナーを最も深淵なるドイツ的感情の音楽的演劇的表現と感ずるものであるが、この巨匠への追憶を、トーマス・マンが傲慢・不遜にも審美主義的スノビズムによって汚したことは許せない フロイトを引き合いに出したり、ヴァーグナーの作品をディレッタンティズムであると叫んだり、ましてやヴァーグナーの音楽を世界に適応し、世界に受け入れられる性質があるなどと的外れで思い上がった称え方をしているのに至っては我慢がならない」という趣旨のものでした

たしかにマンは講演の中で、ヴァーグナーの作品の中にある「帝王的な、デマゴギー的な、大衆支配的な側面」を指摘しており、ヴァーグナーを崇拝し利用しようとするヒトラーからすれば、反体制的人物とみられても不思議ではありません 声明文にリヒャルト・シュトラウス、ハンス・プィッツナー、ハンス・クナッパーツブッシュなどが名を連ねたのは、ナチ政権下で強制されたのか、保身のため政権に忖度したのか分かりませんが、戦時下とはそういうものかもしれません

マンはヴァーグナーがリストに当てた手紙を何通か紹介していますが、「ニーベルングの指環」の作曲に取り掛かった時の手紙には次のように書かれています

「存在しない世界を造り上げるという血の出るようなつらい仕事を私の精神がやってのけなければならないことになれば、私はどのような形にせよ自分がちやほやと甘やかされている気分にならなければならないのです 私は今また『ニーベルング』のプランと、これを実際に仕上げる仕事にとりかかったので、どうしても必要な、芸術的で逸楽に満ちた気分をわが身に与えるために、たくさんのものが手をかしてくれねばならなかったのです わたしはこれまでよりもっとよい生活をすることができなければならなかったのです!」

これについてマンは、「ヴァーグナーの想像力を助けるために、彼にちやほやと甘やかされている気分を与える手段が何であったかは、知られている」として、次のように語っています

「それは、彼が身に着けた、けわた鴨の羽毛入りの絹のガウン、寝る時に掛けた、縁飾り付きで薔薇の花飾りを刺繍したサテンの掛布団、いずれも浪費的な奢侈三昧を手に触れる形で示しているような品々であり、彼はこのために数千の借財を背負ったのです

私には、マンのこうした言動がドイツの誇る巨匠ヴァーグナーの尊厳を損ない、ナチ政権を刺激したのではないかと思えます

第2の講演「リヒァルト・ヴァーグナーと『ニーベルングの指環』」は、それから4年後、チューリヒ市立劇場におけるこの楽劇の上演に際して、1937年11月16日にチューリヒ大学講堂で行われた講演です この前年の末にマンはドイツ国籍をはく奪されています マンは講演の冒頭で、ドイツにおけるヴァーグナー現象の「乱用」について批判しています 講演の内容は『ニーベルングの指環』の成立過程などが中心となっていますが、第1回目の講演とダブる部分が少なくありません

ドイツにおけるヴァーグナーの位置を考えるのに参考になる講演集です ワグネリアンをはじめクラシックファンの皆さんにお薦めします

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