4日(火)。わが家に来てから38日目を迎えたモコタロです
ぼくのお世話係のおねーちゃんが帰ってきた、これで安心!
閑話休題
昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング2014-2015の第1作、ヴェルディの歌劇「マクベス」を観ました これは今年10月11日に米メトロポリタン歌劇場で収録されたライブ録画映像です キャストは、マクベス夫人=アンナ・ネトレプコ(ソプラノ)、マクベス=ジェリコ・ルチッチ(バリトン)、パンクォー=ルネ・パーペ(バス)、マクダフ=ジョセフ・カレーヤ(テノール)他で、演奏はファビオ・ルイージ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団、演出はエイドリアン・ノーブルです
シェークスピアの原作によるオペラの舞台は11世紀のスコットランド。魔女たちから国王になると予言された武将マクベスは、妻と共謀して国王ダンカンを暗殺する マクベスの次に同僚の武将バンクォーの息子が国王になるという魔女の言葉に惑わされたマクベスは、パンクォーを手にかけるが、即位を祝う宴会にパンクォーの亡霊が出現する。気が違いそうになるマクベス夫妻に、魔女たちはパーナムの森が動かない限り王座は不動だと告げる しかし、ダンカンの遺児が率いる軍勢はパーナムの森の木を伐りそれをを動かしながらマクベスの城へと押し寄せ、遂にマクベスを倒す
19世紀イタリア・オペラの大作曲家ジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)は少年時代からシェイクスピアに傾倒して、全ての劇作品をオペラ化したいと夢見ていたといいます 結果的にはこの「マクベス」を含めて3作品に止まりましたが、この作品はヴェルディが32~33歳の時に作曲され、1847年に初演されました
ルイジの気迫のこもった指揮で第1幕が開きます。魔女たちがマクベスとバンクォーに将来の予言をします。夫人のもとに戻ったマクベスが予言の話を聞かせると、夫人は予言どおりにするためには現国王ダンカンを暗殺するしかないとほのめかします そして夜の闇にまみれてマクベスはダンカンを刺殺します。その後で歌われるマクベスとマクベス夫人の二重唱は、弱気のマクベスと強気の夫人との性格が良く表れた歌です 夫人を歌うネトレプコのパワーには凄いものがあります。また、合唱の場面では、フォルテで歌われる合唱を突き抜けてネトレプコのフォルティッシモの声が浮かび上がります。何という強力な歌唱力と迫真の演技でしょうか
90分の本編(第1幕・第2幕)が終わると、今度METで「カルメン」のタイトルロールを歌うラチヴェりシュヴィリが出演歌手にインタビューします
最初にマクベスを歌うルチッチが「マクベスは当たり役ですが、長い間歌ってきて何か変化はありますか?」と訊かれ、「この役は7年前から歌っています。格言がありますよね。ワインは長く寝かせるほど芳醇な味わいになる、という。あれと同じですよ」と答えていました
次にバンクォーを歌ったパーペが「第2幕で死んでしまう役ですが、どういう気分ですか?」と訊かれ、「後半は歌わなくても良いので楽です(亡霊として)出演はしますが。私はこの役を1991年から歌っています」と答え、インタビュアーを驚かせていました
次いでマクダフを歌ったカレーヤが「私はこの役を19歳の時に歌ってオペラデビューを果たしたんですよ」と答えて、これまたインタビュアーを驚かせていました
休憩後に再びインタビュー映像が流れます。最初は指揮者ルイージです。ネトレプコの素晴らしさについて訊かれ「彼女は、その役に成りきっているところが凄い」と答えていましたが、それ以上の解説は要らないでしょう
そしてヒロインのアンナ・ネトレプコです。登場するなり「はーい、元気?」といった調子で最初からハイテンションです。インタビュアーに「今回のような悪役はどうなの?」と訊かれ「わたし、クレージーだし・・・・でも、この役は自分に合っていると思うの。だから歌ってみたかったのよね」と答えていました。インタビュアーが「あなたは普段は良い人なのに、役柄上、悪い人を演じなければならない。それについてはどう?」と問いかけると「そうなのよ、わたし普段はとても良い人なのに・・・」(ここで、後ろの方でインタビューを聞いていたスタッフや歌手が大声で笑い出す)ネトレプコは「誰よ、いま笑ったのは」と憤慨して見せます。インタビューが終わると、また陽気にスタッフや歌手たちに手を振ってスキップしながら去って行きました これが歌も演技もどーしようもなかったら、単なるアッパッパーですが、歌も演技も世界最高峰なのですから唖然とします
パワフルで圧倒的な歌唱力と、お茶目でオフザケな両面を持った現在のMETの看板歌手こそアンナ・ネトレプコです
オペラは第3幕・第4幕に入ります。第4幕でマクベス夫人の歌う「夢遊の場」はネトレプコの真骨頂でした あまりにもネトレプコが素晴らしいものだから、他の歌手陣が霞んでしまいそうですが、一人一人を取ってみれば抜群の歌唱力です
上映時間は歌手たちへのインタビューや約10分間の休憩等を含めて3時間18分。入場料は3,600円。21日(金)まで新宿ピカデリー、東銀座の東劇などで上映中です
METライブビューイング2014-15の日本語ガイドブックが出ています。今期上映される全12作品のストーリー、歌手のプロフィール等が写真入りで紹介されています。1冊税込で1,440円です。ライブビューイングをご覧になる方にとっては必携です