6日(木)。わが家に来てから40日目を迎えたモコタロです
きみ、ゴマちゃんだろ。昔の名前で出ています、ってか!
閑話休題
角田光代著「紙の月」(ハルキ文庫)を読み終わりました 角田光代は1990年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー、その後、いくつかの文学賞を受賞し、2004年には「対岸の彼女」で直木賞を受賞しました。その後も数々の賞を受賞し続けています
わかば銀行の契約社員・梅澤梨花は食品会社社員・正文を夫に持つ41歳の女性。二人に子供はない 梨花は美人であることから顧客の受けも良く、営業成績が優秀なため1ランク上の契約社員になる 顧客の一人、70代半ば過ぎの平林孝三の孫、光太との出会いが、彼女の運命を大きく変える 映画作りに夢を抱く大学生の光太が借金を抱えていることを知った梨花は、その借金を返済べく資金援助する 光太に、無理をしていると思われないために、わざと贅沢な買い物をしたり一流ホテルに泊まったりする そのための資金が必要になり、梨花は遂に偽の証書を作って顧客を騙し、その金を横領して光太に貢ぐようになる しかし、光太は自分から梨花にああしてほしいとかこうしてほしいとか要求したことはない。梨花が一方的に”施している”に過ぎない。そうしたことが長続きする訳がなく、光太は梨花に内緒で若い女性と付き合うようになり、興信所の調べにより梨花はその事実を知る 梨花は銀行の抜き打ち検査的な調査をかろうじて免れるが、これ以上は日本に居られないと悟り、タイに海外逃亡を図る しかし、いつまでも逃げおおせる訳がなく、新聞の三面記事に”女性銀行員1億円横領”の見出しが載る
「紙の月」というタイトルは、梨花が光太のために買い与えたマンションの一室で花火を観る次のシーンから取られています
「ネオンサインと花火が薄淡く染める夜空が、どーんどーんという轟音とともにのしかかってきて、ゆっくりと自分を押しつぶしていくような気がした。梨花はあわてて光太の手を握った。光太は梨花に手を握らせたまま、握り返すことをしなかった。『花火の向こうに月がある』ぽつりと光太が言った。たしかに切った爪のように細い月がかかっていた。花火が上がるとそれは隠され、花火の光が吸い込まれるように消えるとそろそろと姿をあらわした」
「切った爪のような細い月」は、実体のない薄い紙切れのような嘘で固めた生活を象徴しています 花火のような華麗な世界は轟音とともにすぐに消え去ってしまう。光太は「花火が消えたら、梨花の本当の姿が現われていた」と感じたのかも知れません。二人の関係を象徴するシーンです
文庫本の帯に「話題作ついに映画化! 11月15日(土)全国公開」とあります つい先日、主演の宮沢りえが東京国際映画祭で最優秀女優賞を受賞したというニュースに接しました この作品は映画で見ると面白いと思います