人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「没後50年記念 フランシス・プ―ランクの夕べ」を聴く~エスプリだけじゃない!

2013年10月24日 07時03分09秒 | 日記

24日(木)。昨夕、初台の東京オペラシティコンサートホールで「没後50年記念 フランシス・プ―ランクの夕べ」を聴きました プログラムは2部構成になっており、第1部が小品を中心とする室内楽、第2部が協奏曲・宗教曲です

「プーランクの曲だけでどれだけの人が集まるのか?」と他人事ながら心配していましたが、会場に入ってビックリしました ほとんど満席です。自席は1階12列12番、センターブロックのかなり前の席です

第1部は①メランコリー、②3つの小品、③モンパルナス、④フルート・ソナタ、⑤クラリネット・ソナタ、⑥六重奏曲が演奏されます。ほとんどが6分から12分程度の短い曲で、六重奏曲だけが約20分ほどかかります。全曲を通じてピアノ演奏は菊池祐介です

1曲目の「メランコリー」と2曲目の「3つの小品」は菊池祐介のピアノ独奏です。「メランコリー」はドビユッシーに曲想が似ていますが、やはり違います。「3つの小品」の第1曲「パストラーレ」は聴いていてプロコフィエフの「ロメオとジュリエット」の一部の曲が頭に浮かびました

菊地とともに、ソプラノの臼杵あいが朱色のドレスで登場、3曲目の「モンパルナス」を歌います アポリネールの詩に曲を付けたものですが、臼杵は両手も使って表情豊かに歌い上げました

4曲目の「フルート・ソナタ」はプーランクの代名詞的な曲です。メロディーを聴けば「ああ、この曲ね!」と思い出す親しみやすい”フランス的”な曲です 淡いブルーのドレスを身にまとった上野由恵のフルート独奏です。ピアノ伴奏に乗せて”アニュイ”な世界を表出します 私も過去に1年間フルート教室に通った経験がありますが、相当な難曲だと思います 上野由恵はニュアンス豊かにいとも簡単に演奏します

この曲は1957年6月にジャン=ピエール・ランパルのフルートで初演されました ランパルで思い出すのは、1983年頃、フルート教室のクラスメイトの女性を誘って上野の東京文化会館に彼の「フルート・リサイタル」を聴きに行った時、まるで2本か3本のフルートを一度に吹いているのではないかと思うほど超絶技巧曲を鮮やかに吹いていたことです

さて、5曲目の「クラリネット・ソナタ」はN響首席・伊藤圭のクラリネット独奏です。とくに第2楽章「ロマンツァ」がしみじみとしたいい曲想です

第1部最後の「六重奏曲」は菊池祐介のピアノ、上野由恵のフルート、大阪フィル首席・大島弥州夫のオーボエ、伊東圭のクラリネット、東京フィル首席・黒木綾子のファゴット、N響・福川伸陽のホルンによって演奏されます

ピアノを後ろに、向かって左からフルート、オーボエ、ホルン、ファゴット、クラリネットという態勢を採ります。3つの楽章から成りますが、かなり賑やかな曲です 演奏を観ていると実に楽しそうです 個性と個性、自己主張のぶつかり合いですが、それでもなお調和が取れているのは、それぞれが他のメンバーの演奏に耳を傾ける余裕を持った実力者揃いという証拠でしょう。見事なアンサンブルでした こういう演奏を聴くと、ますます室内楽を聴きたくなります

こうして一連の小品集を聴いてみると、”軽妙洒脱”で”エスプリに満ちた”クープランの魅力をたっぷり味わった思いがします

 

          

 

第2部は①オルガン、弦楽とティンパ二のための協奏曲、②スターバト・マーテルが、鈴木雅明指揮東京フィル、オルガン=鈴木優人、ソプラノ=臼木あい、新国立劇場合唱団によって演奏されます

東京フィルのメンバーが登場します。通常は、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという態勢を採りますが、今回はヴィオラとチェロが入れ替わっています 鈴木雅明シフトでしょう。弦楽器とティンパ二のみで管楽器は一人も居ません。コンマスはどこかで見たことがあると思ったら、今年6月にサントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデンで、ラヴェルの「ピアノ三重奏曲」をチェロの堤剛、ピアノのクレール・デゼールとともに演奏した依田真宣であることが分かりました 彼の実力はその時のブログに書いた通りです 彼は東京藝大大学院を卒業後、東京フィル、神奈川フィルでゲスト・コンサートマスターを務めており、今回は指揮者が東京フィルの常任ではなく、バッハ・コレギウム・ジャパンの鈴木雅明であることからゲスト・コンマスとして呼ばれたのかも知れません

鈴木優人(鈴木雅明氏の子息)によるパイプオルガンの力強い序奏で「オルガン、弦楽とティンパ二のための協奏曲」が始まります この序奏を聴いただけで、これまでの”軽妙洒脱”なプーランクというイメージが覆されます 曲は単一楽章から成りますが、全曲を通して何かに訴えかける強い主張があります。この曲には衝撃を受けました プーランクの音楽の幅広さと深さを認識させられました

最後の曲は「スターバト・マーテル」(悲しみの聖母)です。オケとともに新国立劇場合唱団が登場しますが、女声24に対して男声36という割合です 曲は全12曲から成りますが、ソプラノ独唱、混声合唱、管弦楽により間断なく演奏されます

第6曲にはソプラノ独唱があり、前半で「モンパルナス」を歌った臼杵あいが白の衣装に”お色直し”してパイプオルガン下に登場、悲しみを歌います プーランクは歌曲のジャンルを最も愛したと言われていますが、歌を生かすためオケの伴奏は控えめに書かれているようです。臼杵のソプラノはもちろんのこと、何と言っても合唱が素晴らしい さすがは世界に通用する新国立劇場合唱団です

この日は、これまでのプーランクに対する”軽妙洒脱”で”エスプリに満ちた”というイメージを一新する有意義なコンサートを聴くことが出来て、とてもラッキーでした

 

          

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