人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

これはオペラか?オラトリオか?~千住明の「万葉集」を聴く~東響オペラシティシリーズ

2013年01月20日 07時48分11秒 | 日記

20日(日)。昨日、初台の東京オペラシティ・コンサートホールで東京交響楽団の演奏会を聴きましたプログラムは千住明のオペラ「万葉集」です。台本は俳人・黛まどかで、演奏会形式、フルオーケストラ版での演奏です 指揮=大友直人、ソプラノ=小林沙羅、メゾソプラノ=谷口睦美、テノール=吉田浩之、バリトン=福島明也、東響コーラスという面々です

2009年と2011年に東京文化会館小ホールで初演された作品をオーケストラ版に編曲した作品で、日本最古の和歌集「万葉集」から”額田王”の生涯を描いた「明日香風編」と、”大津皇子”と”大伯皇女”のレクイエムである「二上挽歌編」が演奏されました

 

          

 

開演前にロビーでプログラムを読んでいると、会場内から指揮者・大友直人の声が聞こえてきたので急いで席に着きました 大友と千住と黛の3人が舞台上に並びプレトークが始まったのです 大友は「現代音楽というとお客様の入りが少ないのが普通なのですが(笑)、今回の公演は千住さんと黛さんの知名度の高さのおかげもあってか、チケットはソルド・アウトになりました」と解説。その通り会場はほぼ満席です

次いで千住が「今回の作曲に当たっては、映画やポップスなどを含め、いろいろと手がけてきた作曲の集大成として、やりたいようにやった。各方面から批判もあるかもしれないが、完成した時は気分爽快だった 作曲途中で3.11東日本大震災に遭遇したが、われわれは運命的に書かされているのだと感じながら作曲に取り組んだ」と解説しました。

次に黛がこの作品の概要を簡単に説明しました。大雑把にまとめれば「”明日香風編”は7世紀の日本が舞台で、天智天皇、天武天皇の兄弟と額田王と姉の鏡王女との間の恋物語。”二上挽歌編”は天武天皇崩御後の物語」です

舞台上にはコンマスの大谷康子のもと東響メンバーに加え男女混合コーラスが後方に控えていて極めて窮屈そうです そこにソリストたちが登場、コーラス前にスタンバイします 額田王を歌う小林沙羅はいま売出し中のソプラノです 鏡王女を歌う谷口睦美は二期会で活躍中のメゾソプラノです

第一部「明日香風編」の冒頭は弦楽器による弱音で始まりますが、いかにも”現代音楽風”です 次いで4人のソリストが同時に同じ内容のアリアを輪唱で歌い、合唱に続いてソプラノ独奏が「昔々奈良の明日香に都があった頃・・・・・」と歌い出します 歌い回しを聴いていると、日本の作曲家が書いた歌の歌わせ方に共通しているように思います。独特のイントネーションで歌います いつか新国立劇場で瀬戸内寂聴原作、三木稔作曲によるオペラ「愛怨」を聴いた時も感じました 小林沙羅の歌う日本の歌ってとても良いと思います

谷口睦美は長い髪で衣装も”明日香風”といった感じのシックなもので、このオペラに賭ける彼女の意気込みを感じます 後半には女性陣はお色直しして登場しましたが、小林が明るい桜色なのに対し、谷口はやはりシックな衣装で”明日香風”でした 歌も伸びのある声で素晴らしかったです

第2部の開始のため大友のタクトが振られようとしている中、1階中央右側ブロック席のおばさんの声が止みません 東響の定期会員ではありませんね、断言しますけど 黛まどかの名前につられて”一見さん”客として物見遊山でやってきたのでしょう もう二度と来るなと言っておきます

最後の最後にフル・オーケストをバックに4人のソリストと合唱とが全員で「青き炎を身にまとい 灯りつづけよ 我らが胸に! その魂が燃え尽きるまで 輝き続けよ ひたすらに 輝き続けよ 頂に・・・・大和の国の頂に! 頂に!」と歌いますが、このフィナーレこそ作曲家・千住明と俳人・黛まどかが伝えたかったメッセージなのだな、と感じました この作品は”オペラ”というより人間賛歌をテーマとした”オラトリオ”と呼んだ方が相応しいような気がします

終演後、会場一杯の拍手とブラボーの中、会場席の千住と黛が舞台に呼ばれた時、1階後方席の約1名がブーイングを叫んでいました。あれは、作曲者への非難のブーイングだったのでしょうか よく分かりません。人は慣れないものに対しては拒否反応を示すものです。気持ちは分かりますが、残念ながらちょっと浮いていました

 

          

               〔1、2月号のプログラム表紙はクリムト作

               ストックレー・フリーズ 狭き壁面の原図〕

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