人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

我々は戦闘のさなかにある~西加奈子著「炎上する君」を読む

2013年01月04日 07時03分01秒 | 日記

4日(金)。年末年始はコンサートの予定が入っていないので映画と読書が中心となっていますが、家で時間がある時はBGM代わりにクラシックを流しながら読書をしています ここ数日はクラウディオ・アバド指揮ロンドン交響楽団によるメンデルスゾーンの交響曲全集を聴いています 全交響曲(第1番~第5番)のほか「真夏の夜の夢」序曲などが収録されていますが、どれもが若き日のアバドの溌剌とした演奏です これまで、まとめてメンデルスゾーンを聴く機会はなかったですが、こうやって集中的に聴いてみると、あらためて彼の天才を感じます。どのオーケストラでもよいから「メンデルスゾーン・ツィクルス」をやってくれないでしょうか メンデルスゾーンは”ヴァイオリン協奏曲ホ短調”や”真夏の夜の夢”や”交響曲第4番『イタリア』”ばかりではありません。ほかにもいい曲がたくさんあります

 

          

          

 

  閑話休題  

 

西加奈子著「炎上する君」(角川文庫)を読み終わりました 著者のプロフィールによると、1977年テヘラン生まれ、大阪育ち。関西大学法学部卒業後、2004年「あおい」でデビュー、2008年に「通天閣」で織田作之助賞を受賞しています 数年前、NHK-BSテレビの「週刊ブックレビュー」でコメンテーターの一人として出演していて、関西弁でお薦め本をコメントしていたのを思い出します

この本は「太陽の上」、「空を待つ」、「甘い果実」、「炎上する君」、「トロフィーワイフ」、「私のお尻」、「舟の街」、「ある風船の落下」の8つの短編から成ります

「空を待つ」は、作家である私は、ある日散歩中に自分と同じ機種の携帯電話を拾います。待ち受け画面は”空”でした その携帯に届いたメールに何の気なしに返信したところ、また返信がきます 相手は自分のことを知らないはずなのに、作家としてスランプに落ち込んでいる自分を励ましてくれます。そして遂に自分でも納得のいく作品を書き上げます。最後まで男か女かも分からない相手からの返信を待ちます

この作品は、自分自身がケータイを失くして間もない時に読んだので、他人事とは思えませんでした 誰かが私のケータイを拾って、そこに誰かからメールが届きます。発信者は私が知っている人ですが、ケータイを拾った人は発信者を知らない人です その人はどうするでしょうか?そんなことを考えてしましました

「炎上する君」は、男っぽい女二人、梨田と浜中は、足が炎上している男の噂話ばかりしていましたが、ある日、銭湯にその男が現われ、彼女たちは彼を追いかけます 彼と会話をした彼女たちは、間もなく自分たちの足が炎上することに気が付きます

梨田も浜中もあえて女性を意識した化粧や言葉使いを避け、お互いに監視していましたが、”炎上する男”に会った時から”女”を意識するようになります そして宣言します。「我々は、戦闘のさなかにある。恋という、戦闘である

そして恋愛中の者たちに向けメッセージを送ります

「恋愛のさなかにいる君、恋の詩をつづる君、恋の歌を歌う君よ。

周辺の人間に、馬鹿にされるだろう、笑われるだろう、身の程知らずだと、おのれを恥じる気持ちにも、なるだろう。だがそれが何だというのか

君は戦闘にいる。恋という戦闘のさなかにいる。誰がそれを、笑うことが出来ようか 

君は炎上している

その炎は、きっと誰かを照らす。煌煌と。熱く。

君は、炎上している

著者のこのメッセージは強いものです。チャラチャラしてないで本気であたれ これは戦闘だ と言っているようです。

「ある風船の落下」も面白い作品です ストレスがガスとなり、身体を膨張させて、ついには体が浮き上がる「風船病」にかかったハナの話です。風船病にかかった多くの患者が空に浮かぶ中にハナも仲間入りしますが、そこで知り合ったギョームに説得されて再び地上に落ちていくことになります 西加奈子の作品を読むのは初めてですが、発想が面白いと思いました

 

          

コメント
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