人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

インゴ・メッツマッハ―指揮新日本フィルでR.シュトラウス「アルプス交響曲」を聴く

2013年01月13日 07時03分24秒 | 日記

13日(日)。自民党が政権を取って安倍晋三首相になってから、最近、新聞報道などで「アベノミクス」という言葉がよく使われるようになりました 「安倍」と「エコノミクス」を足した言葉ですが、「デフレ経済克服のためにインフレターゲットを設定して、日銀法改正も視野に入れて、大胆な金融緩和措置を講ずる政策」のことを言うようです。これがうまく行けばいいのですが、失敗すると日本の借金がさらに膨大に膨らむという危険を孕んでいます 安倍首相には「アベのミス」と言われないよう、また「金融緩和」ならぬ「これアカンワ」と呆れられないよう、慎重に取り組んでほしいと思います

 

  閑話休題  

 

昨日の朝日の別刷「be」の一面「フロントランナー」がベルリン・フィルの第1コンサートマスター・樫本大進を取り上げていました 「失敗はありましたか?」という質問に、彼は次のように答えています

「初めてバイオリン協奏曲をやったとき、ソロが弾き始め、”ベートーヴェンはいいねえ”と思いながら聞いていたら、次にオケが入るところを完全に忘れていました 物心ついたころからソロしかやってませんでしたから。でも、ほかの第1バイオリンもだれも弾きませんでした。その瞬間、”このオケすげえ”と思いました。自分たちはわかっているのに、コンマスが弾かないから弾かなかった コンサートの後は全員、超うけてました 試用期間が始まって1か月ぐらいだったので、”終わったな”と思いました(笑)」

この記事を読んで、あらためて”ベルリン・フィルはすげえ”と思いました 第1ヴァイオリンの奏者は楽譜ではなく、コンマスを優先して演奏しているわけですね ほとんどのオケはコンマスが弾かなくても楽譜通りに弾いてしまうのではないでしょうか。それだけに、コンマスの責任は大きいわけですね。ベルリン・フィルはダテにベルリン・フィルじゃないことがよく判りました

 

  も一度、閑話休題  

 

昨日、すみだトリフォニーホールで新日本フィルの第503回定期コンサートを聴きました プログラムは①J.シュトラウス「ウィーンの森の物語」、②ヤナーチェク「利巧な女狐の物語」、③R.シュトラウス「アルプス交響曲」です。指揮はインゴ・メッツマッハー、コンマスはチェ・ムンスです

指揮者のインゴ・メッツマッハ―は1957年、ドイツ・ハノーファー生まれで、現代音楽のオーソリティーとして名を馳せた人です 今年9月からの新日本フィルの新シーズンでダニエル・ハーディングとともに常任指揮者を務めることが内定しています

舞台を見ると、左からコントラバス(Vnの後ろ)、第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置を取ります。ドイツの指揮者はこの編成が多いようです 指揮台の左側には1曲目の「ウィーンの森の物語」で活躍するチターが置かれ、演奏者の常石さやかさんがスタンバイしています

J.シュトラウス「ウィーンの森の物語」は、1868年(明治維新の年!)にポルカ「雷鳴と電光」に次いで作曲された彼の代表的なワルツです ホルンによる序奏に続いてチターがウィーン情緒豊かに奏でられると、何故か涙が出てきそうになりました 28年前にウィーンの公園で見たJ.シュトラウス像を思い浮かべていました。チターといえば映画「第3の男」のテーマ・ミュージックで有名ですが、日本人のわれわれも郷愁をそそられます。メッツマッハ―のタクトのもと、オーケストラは情緒たっぷりに演奏して新年に相応しい音のプレゼントを届けてくれました

2曲目のヤナーチェクの歌劇「利口な女狐の物語」は、新聞連載小説「狐のビストロウシュカ」に基づいて1921~23年にヤナーチェク自身が台本を書いて作曲したものです 物語は「女狐が森番に捕まるが逃げ出し、穴熊の巣穴を乗っ取って暮らし、男狐と結婚するが、行商人を怒らせて撃たれ、残された森番は過去を回想、循環する生命の縁に感じ入る」というものです

この曲は初めて聴きましたが、音響が面白い曲です 途中、弦楽器が演奏しているのに、まるでコーラスが歌っているように聴こえる箇所があり、驚きました これはメッツマッハ―効果でしょうか

休憩後のR.シュトラウス「アルプス交響曲」は、「スプーンでも管弦楽化できる」と豪語した自信家のR.シュトラウスが、歌劇「影のない女」の第2幕と第3幕の作曲の間の100日間でオーケストレーションした、彼の最後の交響詩です 作曲者が10代半ばのときオーストリア国境付近のドイツ最高峰ツークシュピッツェに挑み、激しい嵐に遭遇した登山が原体験になっていると言われています

アルプスの夜明けから、登山に挑み、山頂に達して、また下山して、日没を迎える、という一連の模様を、音で描写したものです 100人を超える演奏者が、夜の静けさを、日の出の感動を、山頂に立った喜びを、雷鳴と嵐の轟音を、再び夜の静けさを、表現していきます 「牧場で」においてはカウベルが鳴らされます。牛が首にぶら下げている大きなベルですね カウベルを音楽に使ったのは彼とマーラーぐらいでしょう。しかし、全体的な音楽の構造を比べてみると、マーラーが観念的なのに対して、R.シュトラウスは余りにも具象的です。”自然描写”そのものと言ってもいいかもしれません

メッツマッハ―はオケから十二分の力を引き出し、色彩感豊かなアルプスの一日を再現していました終演後は次期常任指揮者メッツマッハ―と熱演したオーケストラの面々に対する拍手が鳴り止みませんでした

 

          

コメント (2)
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