人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

モナスティルスカ(Sp)鮮烈なデビュー~METライブビューイング、ヴェルディ「アイ―ダ」を観る

2013年01月22日 06時59分00秒 | 日記

22日(火)。明後日24日(木)12:05から内幸町の飯野ビル1階エントランスロビーで「ランチタイムコンサート」があります 今回の出演は12歳でドイツ・スタインウェイピアノコンサートで第3位入賞、東京音楽大学2年在学中の川脇かれんさんです

プログラムは①ショパン「エチュード作品25-1」「幻想即興曲」「ソナタ第3番より第1楽章」、②ドビュッシー「前奏曲集Ⅱ巻」より「第7番 月の光の降り注ぐテラス」、「第12番 花火」、③ショパン「エチュード作品10-1」「ワルツ第6番 子犬のワルツ」、④リスト「BACHの名による幻想曲とフーガ」です

このコンサートの出演者は、今はほとんど無名に近い人たちですが、将来性を感じさせる若手の俊英が選ばれています お近くにお出かけの際には、ベーゼンドルファ―の美しい音色に耳を傾けていかがでしょうか

 

          

 

  閑話休題   

 

昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、ヴェルディ「アイ―ダ」を観ました これは昨年12月15日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上映された公演のライブ映像です キャストは、アイ―ダにリュドミラ・モナスティルスカ(ソプラノ)、ラダメスにロベルト・アラーニャ(テノール)、アムネリスにオルガ・ボロディナ(メゾソプラノ)、アモナズロにジョージ・ギャグ二ッザ(バリトン)、ラムフィスにステファン・コツァン(バス)、エジプト王にミクローシュ・シェべスチエン(バス)ほか、ファビオ・ルイジ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団、演出はソ二ヤ・フリゼルです

1869年、スエズ運河が開通し、記念としてエジプトのカイロに歌劇場が建設されました。そのこけら落としのためにヴェルディが58歳の時に作曲したのがオペラ「アイーダ」です 結局、こけら落としには間に合わなかったものの、1871年12月24日に大成功のもとに初演が挙行されました

物語は、一言でいえば、エジプト護衛隊長ラダメスと、敵方のエチオピアの王女アイーダとの相思相愛の仲に、ラダメスを愛するエジプト王女アムネリスが絡んだ悲恋物語です

幕間のインタビューで、この日がMETの「アイーダ」1129回目の公演だと言っていました アイーダだけで1129回ですよ METの歴史の重みを感じさせます。

また、このオペラの第2幕では”アイーダ・トランペット”によって勇壮な「凱旋行進曲」が奏でられ、エジプト軍の兵士が次々と行進してきますが、行進する兵士だけで約100人が登場し、そのうち半数が舞台裏にもどって着替えをして戦利品を運ぶ民になって再び登場するのだそうです オーケストラ、合唱、歌手、エキストラ、衣裳、大道具、小道具などすべて合わせると1,000人規模の人たちが関わっているとのこと。METの「アイーダ」に賭ける意気込みを感じます

METの舞台には本物の馬3頭とポニー2頭が登場します インタビューでルネ・フレミングが馬とポニーにニンジンをあげながら、「多くの馬の中からどういう馬を選ぶの?本番で馬が急に騒いたらどうするの?」と質問すると、飼育係は「多くの馬の中から落ち着いた馬を選びます。そのうえで、馬の近くで大きな音を出したり、オペラを大音響で聴かせたりして、大音響やオペラ音楽に耳を慣れさせます 途中で落ち着かなくなった場合は、控えの馬を登場させます」と答えていました。その昔はゾウを舞台に乗せたそうですから、ソーゾウを絶します オペラは表に出る出演者でけでなく、裏方も大変なことがよく分かります

アイーダ役のモナスティルスカはウクライナ出身のドラマティック・ソプラノです。この公演がMET初デビューとのことですが、実に堂々たる歌唱力で、弱音からフォルテまで美しい声で周りの空気を自分の世界に引き込みます これまで何度か「アイーダ」を観てきましたが、これほど”強い”アイーダを観たことはありません 敵陣の奴隷になりながらも、最後まで愛するラダメスを慕って意志を貫き通す強いアイーダです

ラダメス役のアラーニャは、METの看板テノール的な存在です。何を歌っても張りのあるしっかりした歌声を聴かせてくれます 今回のライブビューイングで気になったのは、彼の歌う時だけ高音部が音割れしているような金属的な音が聴こえました。これはどうしたことでしょうか。アラリャ と思いますが、アラーニャには全く責任はありません

そしてアムネリス役のボロディナの迫力は凄いものがあります 低いメゾの特性を生かした”ドス”の効いた迫力ある歌声でアリアを歌います また、彼女は歌だけでなく”目”でアムネリスの心象を現していました あの目に睨まれたら誰もが身がすくんでしまうでしょう 数年前、オペラ好きの小泉首相がNHKホールにMETの来日公演を観に来た時、ボロディナがサン=サーンスの「サムソンとデリラ」のデリラを見事に歌いきったのを思い出します。その時のサムソンはプラシド・ドミンゴでした

第2幕の「凱旋の場」ではバレエが踊られますが、これがまた楽しいのです ヴェルディは勇壮なアリアや心を打つアリアだけでなく、こうした楽しいバレエ音楽も書いているのです 

古代エジプトを意識した大がかりな舞台装置、多くの登場人物、勇壮な音楽、そして華麗で楽しいバレエ、「アイーダ」こぞ”グランド・オペラの中のグランド・オペラ”だといっても過言ではないでしょう

第4幕が終わり幕が下りると、会場のあちこちから拍手が聴こえました 映画館で拍手は珍しい、と思って入場の際に配られた「アイーダ」のタイムスケジュールの欄外を見ると、目立たない字で次のように書かれていました

「生の舞台さながらに、拍手や”ブラボー”の歓声を歓迎いたします」

METライブビューイング「アイーダ」はインタビュー、休憩を含めて合計3時間44分の上映です。新宿ピカデリー、東銀座の東劇ほかで25日(金)まで上映されます。入場料は3,500円(事前に座席指定を)。本物のオペラを観ると思えば安いものです

 

          

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