明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(72) 自然エネルギーの可能性とは

2011年04月25日 03時30分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110425 03:30)

昨日24日は全国でいろいろな催しがありました。東京では渋谷に5000人、
芝公園に3000人が集まったと伝えられています。浜岡原発のある静岡
では800人、広島400人だそうです。また前日23日には草津の初めての
デモに70人が参加とか。雨の中で盛り上がったそうです。それぞれについて
動画がアップされ始めているので、後で集めてみたいと思っています。
(情報をお持ちの方、どんどんおよせください)


脱原発機運は徐々に広がりだしつつありますが、こうした動きは政府内部
からも出てきつつあります。その一つが環境省の動きです。同省はある意味で
経産省などと違った利害を持っていると思いますが、21日に自然エネルギーの
可能性に言及し、風力発電で、原発40基分を賄えるという大胆な提言を
行いました。明らかに脱原発気運をにらみつつ、環境省サイドのエネルギー
政策への転換を意図しているのだと思います。

しかし記事を読んで、僕はなんとも言えない違和感を感じました。とくに記事には
環境省が小水力発電を過小評価していることが書かれており、納得できま
せんでした。また環境省による上からのエネルギー転換の提言にも、どこか
共感できないものを感じました。

そこで、友人で、小水力発電の普及を目指しており、岩波ブックレット
『地域の力で自然エネルギー』の著者の一人である古谷桂信さんにコメントを
依頼したところ、丁寧な解説を送っていただけました。文章もさすがなので
今宵はこれをそのままみなさんにお送りしたいと思います。岩波ブックレット
につては、下記を参照して下さい。
http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/2707860/top.html
以下、古谷さんの文章をお送りします。

自然エネルギーへの転換にあたっては、ただ原子力を風力、小水力に変える
ことだけでなく、電力の管理の仕方を、一極集中から、地域主体へと変えることが
大切であること、そのとき、私たちは新たな可能性を手にすることができるのだ・・・
という点がミソだと思います。

***********************

古谷桂信さんからのメッセージ

守田さんから、環境省の再生エネルギーの理論上の調査に関する記事について
質問がありましたので、みなさんにもお届けします。
まず、朝日新聞と共同通信の記事を読んでみてください。

***

風力発電で原発40基分の発電可能 環境省試算
朝日新聞 2011年4月22日5時0分 http://t.asahi.com/27c3

 環境省は21日、国内で自然エネルギーを導入した場合にどの程度の発電量
が見込めるか、試算した結果を発表した。風力発電を普及できる余地が最も
大きく、低い稼働率を考慮しても、最大で原発40基分の発電量が見込める結果
となった。風の強い東北地方では、原発3~11基分が風力でまかなえる計算だ。

 同省は震災復興にあたり、風力発電を含めた自然エネルギーの導入を提案
していく方針だ。

 今回の試算は、理論上可能な最大導入量から、土地利用や技術上の制約を
差し引き、さらに事業として採算性を確保できることを条件に加えた。

 試算によると、固定価格買い取り制度など震災前に政府が決めていた普及策
だけでも、風力なら日本全体で約2400万~1億4千万キロワット分を導入できる。
風が吹いているときだけ発電するため、稼働率を24%と仮定。それでも出力
100万キロワットで稼働率85%と仮定した場合の原発約7~40基分に
相当する。

 ただし東北など電力需要を上回る発電量が期待できる地域がある一方で、
電力会社間の送電能力には現状では限界がある。試算どおりに導入するのは
短期的には難しいとみられている。

 家庭以外の公共施設や耕作放棄地などを利用する太陽光発電や、用水路
などを活用する小規模の水力発電についても検討したが、多くの導入量は
見込めなかった。これらを普及させるには、さらに技術開発を促すなど追加的な
政策が必要だという。

***

風力や地熱の潜在力大きいと発表 東北のエネルギー調査
2011/04/21 19:37 【共同通信】http://goo.gl/SR6Zt

 環境省は21日、風力や地熱、水力発電など再生可能エネルギーの利用
可能性について、東北地方(新潟県を含む)では、火力や原子力などによる現行
の発電量を上回る潜在力があるとする調査結果を発表した。福島第1原発
事故を受け原子力を含むエネルギー政策の見直しが避けられない中、注目を
集めそうだ。

 環境省が民間調査会社に調査を委託。規制などのため立地困難な場合を除き、
風速や河川流量などの一定要件を満たす場所すべてで設置を進めると仮定し、
発電可能な電力量を推計した。

 それによると、風力発電は陸上と洋上設置を合わせて全国で19億キロワット
の発電が可能だった。うち東北地方は3億キロワットで、東北電力の2009
年度の供給力1655万キロワットを大きく上回った。

 温泉発電を含む地熱発電は、全国1400万キロワットのうち東北が350万
キロワット。河川や農業用水を利用した中小水力発電は、全国1400万キロワット
に対し東北430万キロワットだった。

 環境省は「太陽光は地域によって大きな差は出ないが、風力や地熱は地形
など自然条件から東北に大きな可能性がある」と話している。

 また、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を導入した場合、事業
として採算が取れる発電量も試算。風力発電は全国ベースで2400万~1億
4千万キロワット、地熱発電は110万~480万キロワットだった。ただ今国会
に提出済みの同制度の導入を盛り込んだ関連法案は、成立の見通しは
立っていない。

***

再生可能エネルギーの普及を目指すときの私のスタンスは、本質的に地域
密着型の社会資本である自然エネルギーの導入にあたっては、そこに住む人が
主役になれるか、導入にあたって主体的に参加できるのか、ということを
重視しています。

原子力を筆頭にした現在の電力会社体制で進められたあらゆる電源開発は、
その正反対の立場です。

そこで、今回の環境省調査の結果ですが、とくに、北海道と東北が風力の
適地だということは自然エネルギーの関係者間でも共通認識はあります。

ただし、この調査には、急激な勢いで普及していた風力発電開発に、なぜ急激に
ブレーキがかかったかということへの懸念、反省がまったく反映されていません。

私も、風力の可能性は否定しませんが、これまでの風力発電の開発は、プチ
原発のように、地元や地域の了解や意志がほとんど反映されないような形での
導入が進みました。

そういうところの多くでは、低周波による健康被害がでたり、実際には上手く
稼働しなかったりした例が多数みられました(滋賀県草津市の琵琶湖博物館横の
風車など)。

補助金が容易に取れ、水力のように、水利権の縛りなどがなかったため、一部の
企業によって乱開発が進み、風力発電全体のイメージが低下しました。

その反省に立ち、地域の資源を自分たちが探し、自分たちの力で、地域を
豊かにしていく可能性がもっとも高いのが、小水力利用なのです。

水力は水利権が厳格で、勝手に使うことができないという理由もありますが、全国
小水力利用推進協議会という普及団体の中心メンバーが、私と同じ発想でいる
ことも大きな理由です。

小水力の専門家、茨城大学の小林久教授は、「小水力は主要な脇役になれる」
と表現しています。

風については、そういう全国的な普及団体は聞いたことはありません。

人口密度が高く、複雑な地形の日本では、風力についても、地元の資源としての
位置づけが必要ではないかと思います。

そのように地元が捉えて開発された風力発電は上手くいっています。

プチ原子力的な発想の風力が、たとえ原発30基分導入されても、それは人を
幸福にはしない施設ではないかと思います。

小水力は、私の認識では賦存量は最大で300万キロワットくらいで、原発3基分
ほどです。

共同通信の記事の1400万キロワットというのは、3万キロワット以下ですので、
中水力も含めていますね。環境配慮をしなければ、それくらいは可能ということで
しょう。

ともかく、私が現在、小水力に力を入れているのは、小水力が再生可能
エネルギー導入の地域でのスターター役と、トレーニングツールとして最適と
考えているからです。

賦存量では、波力、風力、地熱、バイオマスの方がたくさんあることは事実です。

全体の資源量と使いやすさを見極めることも大事ですが、今は、「エネルギーを
市民が自分たちの手に取り戻しうる」ということを実感してもらうことがもっとも
大事だと考えています。


ですから、今年度、高知で小さいものでの実効性のある発電機を数カ所導入し、
来年度中には、市民の手での小水力発電所を数カ所稼働させることを目標に
しています。

もっと急ぐべきかもしれませんが、自然エネルギーもやり方をあやまったら、
以前の風力と同じ失敗を繰り返す可能性もありますので、、、。





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明日に向けて(71)28日、再びATTAC京都の催しで講演させていただきます・・・。

2011年04月25日 02時00分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110425 02:00)

昨日24日は、京都・同志社大学でエントロピー学会があり、後藤政志さんらが
講演されました。僕も朝10時から夕方5時までこの会合に参加し、その後、後藤
さんを始め、講師の方々等々との懇談会に参加し、ずいぶんとたくさんの
お話を聞くことができました。尊敬する後藤政志さんにお会いし、直接、お話を
聴くことができて感激でした。

たくさん報告したいことがあるのですが、今宵は遅くなってしまったので、またの日に
ゆずりたいと思います。

さて28日に再びATTAC京都の方たちの催しに呼んでいただけることになりました。
案内を転送します。お近くの方でお時間のある方はお越しください。

*****************************

■ATTAC京都 マザーアースデイ企画のご案内■

 わたしたちATTAC京都は、福島原発事故を「いくつかある中の一つの原発
事故」に終わらせるのではなく、日本社会を根本的に変革していくために、
これから市民が(そう、市民みずからが!)今までの社会、経済を見つめ直す
ことが重要だと考えます。

 今回は、福島原発事故後、毎日のようにその危険と私たち大人がやるべき
ことをブログ等で発信しつづけてくださっている守田敏也さんと一緒にこの事態
との向き合い方について考えます。そしてセルジュ・ラトゥーシュ著『経済成長
なき社会発展は可能か?』の翻訳をされた中野佳裕さんからは、今後の日本
復興に必要な課題について、みなさんと今までの日本の歴史を確認しながら
お話していただきたいと思います。

   もうひとつの日本は可能だ!
     一緒に考えよう!これまでの日本、そしてこれからの日本。

日時:2011年4月28日(木)PM 6:00~9:00
場所:ひとまち交流館 京都 第4会議室
(市バス「河原町正面」下車スグ、京阪「清水五条」駅より徒歩8分)
http://www.hitomachi-kyoto.jp/access.html
参加費:500円(収益は被災者支援カンパにさせていただきます)

【講演1】守田敏也さん
「福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中を生きる」

概要:福島原発事故は、日本政府によって、レベル7の放射能漏れ事故と評価
されるに至りましたが、依然、炉心の安定的冷却にはいたらず、予断を許さない
状態が続いています。しかも連日、大気や海洋、地下水の深刻な放射能汚染
が続き、さらに長期化することも確実視されています。この事態に、私たちは
いかに立ち向かうべきか、みなさんと一緒に考えたいと思います。同時に、
原発が未来世代への巨大な暴力を内包しているのではという点も考えて
いきたいです。

【講演2】中野佳裕さん
「原発震災に直面して、わたしたちはどのような社会を求めるのか:
〈戦後〉の歴史に学ぶ」

概要:東日本大震災は、大規模な地震・津波と深刻な原発事故と連動する複合
的な災害となっています。これからの日本をどのように創ってゆけばよいのか、
多くの人が真剣に議論を始めています。本講演では、原発依存型開発に代表
される戦後日本の社会発展の歩みを世界史的な枠組みから捉え直し、日本
復興に必要な政治的・倫理的課題や、「日本の市民と政府がそれぞれにとる
べきリーダーシップ」について議論します。

講演者プロフィール
■守田敏也(もりたとしや)
同志社大学社会的共通資本研究センター客員フェローを経て、フリーライター
として取材活動中。脱原発運動の他、京都大文字山を中心に、ナラ枯れ防除
活動などにも関わってきた。専攻は社会的共通資本の研究。近郊の山を
歩きまわり、自然と人のつながりを考察してきた。著作は『山と森にしのびよる
「ナラ枯れ」』世界2010年5月号など。

■中野佳裕(なかのよしひろ)
国際基督教大学助手・研究員、立命館大学非常勤講師。専攻:開発学、平和学、
社会政治哲学。訳書にセルジュ・ラトゥーシュ著『経済成長なき社会発展は
可能か?』(作品社、2010年)。

【参考資料】 
★ブログ「明日に向けて」。http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011(守田敏也さん)
★「生まれてくる生命(いのち)を支える社会を創る」雑誌『世界』2011年5月号、
所収(中野佳裕さん)

主催:ATTAC京都
協賛:ジュビリー関西ネットワーク、市民社会フォーラム
お問い合わせ:kyoto@attac.jp


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明日に向けて(70)米紙の東電批判の裏を読む

2011年04月24日 09時00分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110424 09:00)

先ほどの記事に関連して、非常に気になる記事が朝日新聞から出されている
ので紹介します。
「『排気の遅れ、水素爆発招いた』米紙が原発事故分析」という記事です。

それによると、米紙ウォルストリート・ジャーナルが、事故の初期に、東電が
放射能の放出を伴う「排気」=ベントを躊躇したことが、事故を深刻化したと
批判しているといいます。朝日新聞はただそれを「客観的」に伝えています。

しかしこのウォルストリート・ジャーナルの内容はうのみにできない。
東電を単純に悪者にすることは危険だと思うのです。なぜかと言えば、ここには
同じことがあったときに、速やかに排気をしろという強い提言が含まれている。
過去のことよりも、今後のことが念頭にあって、この記事が出て来ているように
思えるのです。

事故初期を振り返ってみると、格納容器は確かに2倍の圧力で膨れ上がろうと
していた。そのとき政府もまた東電にベントを命じました。しかし最近になって
はっきりしてきたことは、このときのベントでもの凄い放射能が排出された。
数回のベントで、チェルノブイリの10分の1に近づくようなものが出されたのです。

だからこそ、東電はためらった。猛毒を撒くことに躊躇したのです。とても
民間の一企業にできる判断ではないと思ったことでしょう。それに対して政府は
「すぐ行え、ただし東電の判断で行え」としか言ってくれなかった。それで東電は
動揺を続け、その挙句にベントを行ったのです。

政府はなぜ自分の判断でしなかったのか。明らかに責任回避のためだったと
思います。それは周辺住民に大変な危機が迫っていることを告知することの
責任回避でもあったかもしれない。ともあれそのようにして、ベントは行われ
ました。猛毒がまかれることが告げられぬままに。


実は現在も、それと同じような状態にあるのではないか。またしても工程表は
東電の名前で出されている。そしてそこには、1号機に続く2号機、3号機の
窒素封入も書き込まれています。繰り返し述べてきたように、この場合も、
相当に大量の放射能が窒素に押し出されて出てくる。つまりドライベントと
同じようなことが行われることになるのです。

東電はまたしても、深い動揺の中にあるのではないでしょうか。いやあっても
おかしくないと思えます。再び三度、東電の名で、猛毒を撒かねばならない
からです。あるいはそのために、2号機、3号機への窒素封入が始まって
いないのかもしれない。
この点を再びアメリカ政府はいらいらし、ウォルストリート・ジャーナルにこの点を
書かせているのではないか。そうしたことが予想されます。

こう考えると、事故数日後に、東電が事故対処からの全面撤退を政府に
申し出たことの理由もみえてくるような気がします。あのとき僕は東電には
もう出来ることがないので、撤退したいといいだしたのだと思ったし、そんな
人たちはとっとと、いなくなってもらえばいいのにと思いました。

その点で、菅首相がどなりつけたことにも否定的でした。しかし、今、思うのは、
東電はもう一企業として責任を負わされる範疇を超えている、政府に判断して
欲しい。そこから逃げ出したいと思ったのではないか。それに対して管首相は
責任主体に逃げられるとかなわないので、どなったのではないか。そんな
風に思えます。

そしてそうした脈絡からこの記事が出てきた背景を考える時、工程表に
書かれた2号機、3号機への窒素封入作業が、非常に、重く、危機的なもの
として僕には移ります。

どうか、みなさん。ここに注目してください。たとえ破局的に爆発にいたらざる
とも、事故初期と同じように、大気中に非常に高い濃度の放射能が飛び出して
くる可能性があると僕は思います。

近くの方たちに、早急に被ばく対策を強化すべきことを伝えてください。
とくに福島の子どもたち、近隣の子どもたちは、校庭から高い放射線が出ている
からだけでなく、原発そのものが危機的であり、さらに放射能漏れが深刻さを
増す可能性が高いからこそ、できるだけ早く疎開させてあげることが必要だと
思います。


・・・今日は午後10時より後藤政志さんが同志社大学で講演されるので、
これから飛んでいきます。ぜひ、ここに書いたことも質問してこようと思います。

**************************

「排気の遅れ、水素爆発招いた」 米紙が原発事故分析

2011年4月23日21時20分 朝日新聞
 23日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は、福島第一原子力
発電所の事故について、放射性物質の外部放出を懸念し、東京電力が格納
容器内のガスの排出をためらったことで水素爆発を招いたとする分析記事を
掲載した。

 同紙は、同原発1号機は地震・津波の発生から半日たった3月12日午前
2時半に格納容器内の圧力が2倍に達し、東電は排気を決めたとしている。

 しかし、準備などに手間取り、実際に排気できたのは同日午後。その
約1時間後に水素爆発が起きて原子炉建屋が破壊された。これに伴う炉心の
損傷はなかったが、「壁」の一つが失われたことでその後の大量の放射性
物質の放出につながったほか、炉の冷却のための作業を妨げる原因にも
なった。

 同紙によると、日米の専門家は排気の遅れで水素爆発が起きやすい条件が
できたと考えている。放射性物質と水素を含む格納容器内のガスは、排気
専用のパイプを経由して建屋の外にある排気塔に導かれるが、圧力が2倍に
なるまで待ったため、パイプの継ぎ目などからガスが漏れやすくなり、
建屋内に充満した可能性があるという。

 専門家は「放射性物質の放出を心配するあまり排気に慎重になったことが、
事態を悪化させたようだ」とみている。水素爆発の防止を重視する米国は、
格納容器内の圧力が耐圧の上限に達する前でも早めに排気を行うことに
しており、同様の方針は韓国や台湾でも採用されていると指摘している。

 米国では、1979年のスリーマイル島原発事故で作業員の判断ですばやく
排気が行われ、原子力規制委員会(NRC)が追認したが、日本では排気は
「最後の手段」として、電力会社のトップや政府の判断を待ってから行う体制。
記事はこうした考え方の違いも排気の遅れにつながった可能性を指摘した。
(パナマ市=勝田敏彦)
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104230312.html
コメント (2)
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明日に向けて(69)水棺は意図せずに出現・・・。

2011年04月24日 08時30分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110424 08:30)

福島原発の現状を推し量ることができる幾つかの記事が出ています。
一つは毎日新聞の「福島第1原発 1号機格納容器内に水6メートル」という
記事です。

記事は次のように語っています。
「格納容器を燃料棒の上部まで水で満たして原子炉を冷やす「水棺」作業は、
事故収束に向けた工程表で最初の3カ月目標に掲げた対策の一つ。同社が
意図しない形で事実上の水棺状態が進行しているとみられるが、このまま
燃料棒上部まで水位が上がるかどうかについては不確定要素もある。」

昨日、紹介した記事でも「事実上」という言葉が使われていましたが、この
記事では東電が意図しない形で、水棺化が進行していることが指摘されて
います。つまり水棺化しようとしたのではなく、コントロールできないままに
水が溜まっているのに過ぎないというわけです。

その量も、6メートルであり、原子炉格納容器の下、半分にも満たなくて、
原子炉圧力容器を冷却するような形になっているわけではない。それ以上、
水位が上がるかどうかも不確定だとされていますが、反対にこれ以上、上がる
ことで本当に格納容器が持つのかも不確定です。

一方、僕がずっと知りたかった窒素封入については、
「格納容器には既に容量(約6000立方メートル)の2倍近い窒素約1万
700立方メートルを注入しているが、一定以上に圧力が高まっていない。容器の
損傷も考えられ、このまま水位が上がれば、損傷部からの水漏れが懸念される。」
と書かれています。

単純計算すれば、4700立法メートルのものが漏れ出していることになる。
それは窒素なのか、水素なのか、あるいは放射能を含む水蒸気なのか、
恐らく三者が混ざり合ったものでしょう。

ここで疑問が生じます。繰り返し述べてきたように、窒素注入は「水素爆発の
可能性を限りなくゼロに近づける」ためのものとして行われてきました。
ちなみにこれは、枝野官房長官が、はじめて原子炉格納容器が内側から
水素爆発にみまわれる可能性があることをはじめて認めた発言でした。

そのため、重い内容であるわけですが、その危険性は去ったのかどうか、
この重要な点が明らかにされていない。また水棺化は、工程表に書かれた
方法であるわけですが、すでに窒素注入の段階で、格納容器が損傷している
明白になったわけで、初期に設定した条件が早くも崩れてしまっていることが
わかります。それでも同じ行為を続けるのか。

まとめましょう。
この記事から類推できることは、一つは水素爆発の危険性がどの程度、
低めることができたのか分からないこと、この場合、東電や政府自身も把握
できていないことがうかがわるということ。

二つは1号機もまた格納容器の破損が明らかであり、水棺化に耐えうるもので
あるかどうかまったく分からないこと。そもそも水棺化自身が、世界初の
非常対処であり、健全な格納容器に対してすら、安全がまったく保障されて
いない試みです。それが破損が明らかな格納容器になすことができるのか。

三つは、そもそも水を入れて溜めることが、任意にできてはいないこと。
水位のコントロールもかなり難しく、意図しないのに水棺化が進むという
アンコントロールな状態が現出していることです。

これらから1号機はとても制御できているとは言い難く、危機的な状況が
継続していることが分かります。この点をしっかりと把握しておくことが
大切だと思います。



****************************

福島第1原発 1号機格納容器内に水6メートル
4月24日(日)1時17分配信 毎日新聞

 東京電力は23日、福島第1原発1号機の原子炉格納容器に深さ約6メートル
の水がたまっていることを明らかにした。格納容器を燃料棒の上部まで水で
満たして原子炉を冷やす「水棺」作業は、事故収束に向けた工程表で最初の
3カ月目標に掲げた対策の一つ。同社が意図しない形で事実上の水棺状態が
進行しているとみられるが、このまま燃料棒上部まで水位が上がるかどうか
については不確定要素もある。

 東電によると、1号機は燃料棒の損傷が推定70%と最も激しく、圧力容器に
これまで約7000トンを注水して冷却を続けてきた。ここで発生した蒸気が
格納容器に移って水になっている可能性や、圧力容器と直結する配管などが
地震で損傷し、格納容器に水が漏れ出ている可能性が考えられるという。

 水位は、水素爆発を防ぐための窒素注入による格納容器の圧力変化から
東電が推計した。その結果、格納容器下部にある圧力抑制プールは既に
満水となっており、「ドライウェル」と呼ばれるフラスコ状の球形部
(直径17・7メートル)も深さ約6メートルの水がたまっていることが分かった。

 2、3号機も同様に圧力容器への注水が続けられているが、2号機では
圧力抑制プールが破損し、高濃度の放射性汚染水が外部へ漏れ出ており、
格納容器内の水のたまり具合は分かっていない。

 一方、水棺方式には課題もある。格納容器には既に容量(約6000
立方メートル)の2倍近い窒素約1万700立方メートルを注入しているが、
一定以上に圧力が高まっていない。容器の損傷も考えられ、このまま水位が
上がれば、損傷部からの水漏れが懸念される。また、水の重量の負荷に
伴う耐震性は「最終チェックしている段階」(経済産業省原子力安全・保安院)
の上、長期的には高濃度に汚染された水の処理も必要となる。
【八田浩輔、阿部周一】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110424-00000000-maip-soci
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明日に向けて(68)1号機、事実上の水棺処理・・・?

2011年04月23日 12時30分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110423 12:30)

福島原発の現状は、このところ僕には、靄がかかった状態が続いています。
一時は1号機で臨界の可能性が懸念されていましたが、東電が基礎的データで
あるクロル38の存在の有無を間違っていたことが分かりました。臨界の懸念は
薄まりましたが、データの誤りが訂正されただけで、実態は相変わらず、よく
分からないままです。

一体が何がどうなっているのか。何がどこまで進んでいるのか。

そう考えあぐねているときに、新しい情報が入ってきました。1号機で「事実上の
水棺処理が進んでいる」というのです。水棺処理とは、原子炉圧力容器と、
その外側にある格納容器の中を水で満たし、原子炉の冷却を行おうと
するもの。これまで理論的な検討はされてきたものの、実際には一度も
適用されたことのない全く未知の技術です。

これが初めて報じられたのは4月7日に頃。東京新聞の記事によれば、
「同本部(対策本部)は、現在1~3号機で進めている格納容器への窒素の
注入が終わった後で、1号機から作業に入ることを検討している」と
書かれていました。

ところが、1号機の窒素注入の完了の報道はあいまいにしかなされませんでした。
ある程度以上は入らないことが報じられていたので、どの時点かであきらめて
注水に踏み切ったものと思われます。

しかし当初予定されていた2号機、3号機への窒素注入は行われず、1号機の
水棺が優先されている。つまり、「水素爆発の可能性を限りなくゼロにする」
ための2号機、3号機への窒素注入はいまだ行われないままの状態が
続いています。

一方、1号機について、読売新聞は「事実上の水棺処理」と書いていますが、
何が「事実上」なのでしょうか。おそらく、東電側が、「水棺」とは言ってないが
ゆえに「事実上」という修飾がつくのだと思われますが、それがなぜなのか
この短い記事からは読み取れません。

また他方で記事には次のように書かれています。
「1号機の圧力容器には、これまでに約7000トンの水が注入されており、
東電は、この水がほぼ全量、格納容器内にとどまっているとみている」。
本当にそうなのでしょうか。

これまで東電は再三再四、甘い見通しを語ってきましたが、窒素を一定以上
注入すると圧力がそれ以上上がらずに漏れてしまうのは、格納容器のどこかが
壊れていることを物語っています。あるいは格納容器の上部なのかもしれま
せんが、ともあれ破損が生じている可能性のある格納容器が、7000トンもの
水の重圧に耐えられるのだろうか。

とくに懸念されるのは、大きな余震があった場合です。水がたくさん入った
容器は地震の揺れに非常に弱い。そのために、汚染水を回収しようとして
いるタービン建屋内の復水器も、満杯にはしない処置が取られています。

ましてや1号機の格納容器には、一時期、設計強度である4.3気圧を大幅に
上回る8気圧の圧力が加わりました。温度も上昇し、設計限界を上回って
いた。それやこれやさまざまなダメージが蓄積してきています。そこに水を
たくさんはって大丈夫なのだろうか。

恐らくこれもまた、他に手段がないがゆえに取られている選択の余地のない
手段なのではないかと思われます。そうであるならば、その成功を祈る以外
ないものの、少なくともその危険性を、明らかにするべきです。

また爆発阻止と銘打った窒素注入の1号機での成果や、2号機、3号機の
遅延の理由も明らかにされなければいけない。にもかかわらず、どうして
記者さんたちはこのことを尋ねないのでしょうか。

他方で、東京新聞では4号機のプールの水温が91度もあり、高止まりしている
ことが告げられています。これもかなりの危険な状態なのではないか。
ここには燃料集合体が1535体もあります。そのうち使用済み燃料は1331体
であり、新しい燃料がさらに重ねてあって、発熱量が高く、なかなか冷えない。
ここもまた危機的な状況が継続しているのではないか。

ともあれこのところの発表は多くのことが僕には不透明です。
情報解析を進め、靄の奥を見通すための尽力を続けます・・・。


*****************************

1号機、事実上の「水棺」処理

2011年4月23日06時00分 読売新聞
 東電は22日の記者会見で、福島第一原発1号機の格納容器の下部にある
圧力抑制室が、ほぼ水で満たされているとみられることを明らかにした。

 ドライウェルと呼ばれる上部も半分程度、水がたまっているとみられ、燃料が
完全に水につかるまで格納容器を水で満たす「水棺」処理が事実上進行
していることになる。

 圧力抑制室は通常、約50%の水が入っており、圧力容器の内部が非常に
高圧になると、弁を通じて内部の蒸気を導き、水中で冷却、凝結させて全体の
圧力を下げる。1号機の圧力容器には、これまでに約7000トンの水が
注入されており、東電は、この水がほぼ全量、格納容器内にとどまっていると
みている。

 2、3号機には格納容器の容量(約7000トン)を上回る1万4000トン、
9600トンが注水されているが、圧力抑制室の損傷などで格納容器から
流出し、タービン建屋などに流入している可能性が高いという。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110423-OYT1T00160.htm

福島第一原発 「水棺」冷却を検討

2011年4月8日 朝刊 東京新聞
 福島第一原子力発電所の事故で、政府と東京電力の事故対策統合本部が
、核燃料棒が入った圧力容器とその外側の格納容器の内部を水で満たすことで、
原子炉を継続的に冷却する「水棺(すいかん)」を検討していることが七日、
分かった。水棺は原発事故の処理方法として研究されているが、実際に
行われれば世界で初めてとなる。

 政府と東電の関係者によると、福島第一原発では大量の高濃度汚染水が
建屋内などにたまり、復旧作業が難航している。対策本部は水を循環させて
海水との熱交換で水を冷やす「残留熱除去系」の復旧を目指しているが難航
している。仮に復旧しても、海水を大量に注入したことで冷却機能が
落ちている恐れもあり、水棺による冷却案が浮上した。

 水棺では、圧力容器と格納容器をともに燃料棒の高さ付近まで水で満たし、
高い熱を持つ燃料棒を冷やす。燃料棒が破損して放射性物質が漏れるのを
抑える狙いもある。熱で蒸発する水は外部から注入。燃料棒が冷めて取り
出せるようになるまで、少なくとも数年は続けるとみられる。

 同本部は、現在1~3号機で進めている格納容器への窒素の注入が
終わった後で、1号機から作業に入ることを検討している。

 格納容器は厚いコンクリートで囲われており、水を満たしても一般に強度の
問題はないが、地震などで損傷していないことが条件。2号機は格納容器の
圧力抑制室に損傷の疑いがあり、汚染水が外部に漏れ続ける恐れがある
ため事前チェックが必要となる。水棺は、米国でも冷却水を喪失した重大
事故時に取り得る手段として研究されている。福島第一原発の事故に関しても、
米原子力規制委員会(NRC)が水棺に言及。「水の重さと格納容器の
耐震性に留意すべきだ」と助言している。

 一九八六年に原発史上最悪の事故を起こした旧ソ連のチェルノブイリ
原発は格納容器がなく、放射性物質を閉じこめるため全体をコンクリートで
覆う「石棺」が行われた。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011040802000039.html

4号機プール高温続く 91度、水位には変化なし

2011年4月23日 朝刊 東京新聞
 福島第一原発の事故で、東京電力は二十二日、4号機の使用済み核燃料
プールの水温が九一度だったと発表した。十二日の測定とほぼ同じ水温で、
高止まり状態が続いている。安定した冷温停止状態は約三〇度。プールには、
原子炉から取り出して冷却期間が短い燃料が多数あり、東電は監視を
強めている。

 東電はこの日、生コン圧送機のアームに計測機器を取り付けて調査を
実施し、水が燃料の上二メートルまであることを確認した。

 水温は十二日の測定でも約九〇度あったため、一日おきに百四十トンの
水を注入し、冷却に努めていた。水注入について、東電は「計算通り蒸発分に
ほぼ見合う量。プールの水位に大きな変化はなかった」と説明している。

 ただ、プール内の燃料棒は損傷が疑われているため、東電は水中カメラを
用意したが、この日は高温で断念。注水などで水温が五〇度を下回った際に、
撮影可能か検討する。

 4号機のプールには核燃料棒を束ねた燃料集合体が千五百三十五体
入っている。他号機のプールより千体前後多く、新品や炉から取り出した
ばかりの使用途中の集合体もある。

 一方、集中廃棄物処理施設へ高濃度の放射能汚染水を移送している2号機
立て坑では、水位が朝から一センチ下がった。1号機の「水棺」作業では、
最下部にある圧力抑制室が満水になり、格納容器下部にまで水が
たまっているとの見方を示した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011042302000043.html
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明日に向けて(67)人間を返せ!・・・被ばく者と共に歩む

2011年04月23日 02時30分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110423 02:30)

今宵は、情報分析を少し離れて、この間の出会いのこと、そこから考えて
いることについて、述べさせていただこうと思います。

数日前、あるところで福島原発に関する学習会を行う依頼を受けました。
そこで企画をされた女性とお会いし、うち合わせをしました。初めてお会いする
方だったので、どのような問題意識をお持ちなのか、手探りだったのですが、
お話しているうちに、大変、問題を深く捉えておられ、かなりしっかりした
知識もお持ちで、何も僕が話をせずとも、ご本人自身がお話されてもいいのでは
と思うほどでした。

話が進む内に、その原因が見えてきました。仮にこの方をAさんと呼ばさせて
いただきますが、彼女は、被ばく二世でいらっしゃるのです。お母さんが16歳の
時に、長崎で被ばくされたのだそうです。しかも爆心地に近かったため、窓から身を
乗り出して、爆発を見た友だちが、そのまま亡くなられてしまったそうです。

そんな彼女にとって忘れられない思い出が、小さいときに連れて行かれた長崎原爆
資料館の恐ろしさだそうです。それもあって、福島原発の事故が起こった時は、
恐怖にかられ、パニックになったといいます。

ちなみに最近僕は、パニックとはむしろ当然の反応であり、正しい危機感によって
起こるものでもあると思うようになりました。パニックを起こすなどころか、危機感が
薄いとパニックなど、起こそうにも起きないものでもあることが、今回の経験で
分かった。その点で、被ばく二世である彼女は、正しい危機感を持っていた
と思うのですね。

ただそれで今後、この大規模な放射能漏れとどう立ち向かうのかの話になり、
僕は最近、持論としている、能動的に被ばくと立ち向かうお話をしました。
たとえ大量の放射線に被ばくしようとも、それで終わりではない。ガンになる
確率が高くなっても、ガンにならない人もいる。そのことを見据えて、
さらなる被ばくを避けるとともに、ガンになる他の因子を取り除くことが大切だ
・・・というようなお話です。

そうしたら彼女、実はお母さんは今にいたるも、いたって健康なのだという
話をしてくださいました。その理由を2人で振り返ってみて、実は戦中・戦後の
動乱期、ある偶然から食糧事情が良く、栄養に恵まれたのだというお話が
聞けました。戦後直後に撮った写真に、ふっくらと太ったお母さんが写って
いたそうです。

きっとそれが良かったのではないかと話し合いました。もちろん、どこまでも
推論の余地はでませんが、被ばくをしても、栄養に恵まれたことは幸いだった。
しかも今より、科学物質の汚染が少ない食べ物を得ることができたかもしれない
などとも話し合いました。

もちろんこれは科学的な分析を経た話ではありません。でも僕にはAさんの
今でも元気なお母さんと、そのお母さんのもとに生まれて、今日まで元気に
生きてこられたAさん自身が、人間が放射能に立ち向かっていける
生き証人ではないかと思えたし、そのようにAさんにお伝えしました。

後になって、彼女から、「放射能を闇雲に恐れるだけではなく、たとえ被ばくしても
対処の方法があるということに、あらためて気づいて少し元気が出てきました」
というメールが届きました。

Aさんとは今後も、いろいろな思いを互い重ねていきたいものだと思います。
とてもありがたい出会いです。


不思議なことに、実は僕はこのところ、被ばく二世、三世の方々と連続的に
出会ったり、出会い直しています。京都であったある脱原発の講演会のおり
にも、主催者の方たちに二次会に誘っていただいたのですが、そこで昔から
知っている広島出身のBさんにお会いしました。その席で、Bさんは、「今、
懸念されることは被ばく者への差別だ。福島の人々が差別されないように
真剣に考えていかなければならない」と発言された。

その後、僕のところに来て、こんな話をしてくれました。
「僕は広島を出て京都に来て、被ばく二世ということを表に出して社会運動を
したことはなかったのだけれど、実は親父もおふくろも被ばくしているのだよね。
被ばくした若い夫婦は、最初の子どもを産むときは決意がいったそうだ。
それで生まれたのが僕だ。僕は小さい頃、病弱で、ずいぶん心配をかけた
らしい。下の妹はぴんぴんしていて元気でさあ。親はずいぶん悩んだらしいよ。」
「でもその下に弟がいてね。49歳でガンで死んだよ。親父もガンで死んだ。
親戚はみんなガンだらけだよ」・・・・。

さらに話をしているうちに、何とも僕とも因縁めいた話が出てきました。
というのは、僕の父は当時、陸軍船舶隊にいて、香川県善通寺の基地に
いました。それで原爆が落ちて、すわ救援だということで広島に向かい、呉の
海軍基地に入った。そこから偵察隊を出したけれど、市内には何もない・・・
ということで部隊はそれ以上進まなかった。偵察隊の方は後に二次被ばくで
亡くなったと父に聞きました。

ところがそのBさんのお父さんは、なんとその呉の基地にいたそうなのです。
そこで閃光とキノコ雲を見た。そしてそのキノコ雲の下へと救助に向かった
といいいます。それはいつなのだろう。Aさんのお父さんたちが爆心地に
向かった後に、後詰め部隊として、僕の親父の部隊が入ったのかも
しれない。あるいは僕の親父の部隊が来たので、ところてん式に、Bさんの
お父さんたちが爆心地に向かったのかもしれない。

そうしてBさんのお父さんは被ばくし、僕の親父は被ばくしなかった。
なんということでしょう・・・。いや、そうではないのかもしれない。呉までいった
僕の親父もまた被ばくしたのかもしれない。それは分からないことです。


そんな話を聞いた後、二次会の会場を、Cさんという方と後にしました。4月9日の
講演会の講師に僕を誘ってくれた方です。僕は彼に、Bさんってさあ、被ばく
二世なんだよね。御両親とも被ばくされたそうでさあ・・・と話をすると、Cさん、
やにわに手を挙げられた。「守田さん、僕も被ばく二世ですよ!」・・・・。

Cさんのお父さんは広島郊外にいたらしい。朝から上半身裸で野良仕事を
しているときに原爆が投下された。お父さんは「背中が熱かった」記憶がある
そうです。
そのお父さんは今もお元気にしておられるとのこと。Cさんもお元気です。
少々薄くなった頭をなでて、「これが後遺症です」と笑っておられました。

「Cさん、まさに今こそ『人間を返せ』ですね」、と僕はつぶやいた。
「そうですよね、脱原発の声を今こそ広げたいですね」・・・とCさん。
その後、僕たちは、夜の街を何か熱い思いを胸に抱いて、2人で
歩き続けました。


ちなみに僕のピースウォーク京都のHPに設けたブログサイトの運営を
バックアップしてくれているDさんも被ばく三世です。彼には、気心しれた
友人たちと、広島の町を訪れた時に、被ばくにまつわる場所を案内して
もらったことがあります。

原爆ドームを訪れ、平和祈念資料館にいくと、原爆投下時の広島市内を
あらわした大きなジオラマがありました。その真ん中の空中に、火の玉が
おいてある。破裂した原爆です。そしてその周り、ジオラマで表現された
半径数キロの円の内側から外へと猛烈な熱線と放射線が襲っていった。

「僕のおばあさんは、2人とも、この中の2.7キロの地点にいたんですよ」と
Dさん。父方のおばあさんは、建物疎開か何かで集合して点呼を受けている
ときに被爆し、後方の竹薮に吹き飛ばされたそうです。母方のおばあさんは、
職場の建物の中で被爆しましたが、建物の柱が陰になって助かったのだそうです。
やがてそれぞれに命の鎖がつながれていき、Dさんが生まれました。

そんなDさんは、この間、被ばく者のこと、米軍のABCC(原爆傷害調査
委員会)のこと、広島放射線影響研究所のこと、被ばく者の裁判のことなどで、
次々と僕に貴重な資料を送ってきてくれます。僕の書いた内容をチェックして
細かい訂正などもいれてくれています。


何だか僕には、多くの被ばく者の方々・・・広島や長崎で瞬時に亡くなった
方たちや、その後にボロボロと亡くなっていた方たち、そして戦後の長い時を
ガンと闘った方たちが、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんなどを通じて、僕に
メッセージを伝えて来ているように思えてなりません。

私たちの体験を、人類のために生かしてくれ、被ばくと立ち向かう道しるべに、
私たちの苦しみを使ってくれ、人間を返せという私たちの声を、明るい
未来に向けて解き放ってくれ・・・。そんな切々たる声が僕には聞こえてきます。

・・・そうだ。僕らには、被ばく者が血と汗と涙で綴った貴重な経験がある。
今、フクシマの事態と立ち向かう時、こんなに心強いことは僕はないと
思えます。


戦争のとき、やはり少女だった僕の母は、東京深川に住んでいました。一家は
生粋の江戸っ子であり、親戚はみんな、映画、『フーテンの寅』の登場人物の
ような話し方をする。そんな人懐っこい人々が住まう東京の下町はまた、東京
大空襲の爆心地でした。

1945年3月14日未明の大空襲、10万人を焼き殺す猛火の中を、母は本当に
奇跡的に生き延びた。そして父は、8月6日に呉まで進軍し、そこで止まり、恐らくは
高線量の放射線の被ばくを免れた。そして2人はやがて出会い、僕が生まれました。
だから僕は、東京大空襲と広島原爆の狭間から生まれた子だと思うのです。

その僕に被ばく者たちが、今、人類のために働けと語りかけて来ているのでは
ないか。きっとそうに違いないと僕は思うことにしました・・・。


今宵は最後に、峠三吉さんの詩を掲載させていただきます。


ちちをかえせ ははをかえせ
としよりをかえせ
こどもをかえせ

わたしをかえせ わたしにつながる
にんげんをかえせ

にんげんの にんげんのよのあるかぎり
くずれぬへいわを
へいわをかえせ

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明日に向けて(66)ヘリ放水はアメリカ向けパフォーマンスだった・・・

2011年04月22日 17時30分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110422 17:30)

なんとも情けなくなる記事がたったいま、舞いこんできました。
事故6日後の3月17日に行われたヘリによる放水が、アメリカに日本政府の
覚悟を示すためのパフォーマンスだったという記事です。

なんということでしょう。

記事は書いています。
「相次ぐ水素爆発と放射性物質の広域拡散……。原発暴走を制御でき
ない無力な日本という印象が世界に広がりつつあり、菅政権は「日本は
見捨てられる」と危機感を強めていた。「放水はアメリカ向けだった。
日本の本気度を伝えようとした」。政府高官は明かした」・・・。

ではどうしてこんなことが必要だったのか。記事は続けてこう書いています。
「『原発の状況が分からない』。米国のいら立ちは震災直後からあった。
NRC先遣隊が12日の1号機水素爆発直後に日本に派遣されたが、
複数の政府関係者によると、経済産業省原子力安全・保安院は『情報開示に
慎重だった』といい、米政府は原子炉の現状を推測するしかなかった。」

要するに保安院は、アメリカに対しても情報開示をしようとしなかった。
そのためにアメリカが焦燥感を深めたわけで、これは私たちがおかれた
状況と同じです。
しかし菅首相は、私たち、国民と住民が、深刻な放射能漏れ事故を前に
情報が開示されないことに、不安と焦りを募らせていることに目を向けず、
アメリカに見放されることを恐れ、自衛官に派手なパフォーマンスを
させたのです。

この記事の最後は、印象的にこう結ばれています。
「『今日が限度と判断をした』。北沢防衛相はヘリ放水後の会見で言った。
米政府は好感し、現実には冷却効果が期待できないヘリ放水は二度と
行われなかった。」・・・。


ヘリによる放水は大変、印象的でした。確かに1回目は多少、建屋にあたって
いたけれど、他のものはほとんど当たらなかった。
僕はあの時、もうこんな手段しか残されていないのか、これはもうダメなの
ではないか・・・と深く落胆したことを覚えています。
世界の報道でもこうした論調は多かった。ヘリの放水は、あまりに効果が
感じられず、失望感が大きかった。

もっともこのとき、僕は気を取り直しました。自衛隊がうまくできないのは
仕方がない。大変な任務だからというよりも、これは自衛隊が実戦経験が
ないことのあらわれだ。つまり自衛隊は戦争的な展開には弱いのであり、
それはこの国の平和の一つのバロメーターでもある。もともと僕は、軍隊の
弱い国ほど、いい国だと思ってきたので、そんな風に考えました。

もちろん、これは自衛隊がまったく無力だということを意味しているのでは
ありません。自衛隊は、あらゆる組織の中で、唯一、自分たちで食糧も
寝るところも、運べる組織であり、いざとなれば風呂もすぐに作って沸かせる。
そのため、被災地での捜索やがれきの撤去には凄い力を発揮しています。
だから早急にもっとレベルの高い、災害救助隊に変えることがのぞましい。
もちろん、現状では殺人部隊であることは間違いないので、隊員のリハビリと
再教育が必要ですが。

これに対して、消防隊は本当に凄かった。消防隊の人々は、いつも燃え盛る
炎の前に身をさらして消火活動をしているのですね。命がけの実践を
かなり重ねて来ている。消防隊は、すでに地震当日からのコンビナート火災
でも大活躍していた。コンビナート火災では、放水場所を間違えると爆発し
自分たちも巻き込まれてしまう可能性がある。そんなところでのピンポイントの
消火能力をこれらの人々は持っている。

この見事な技によって、私たちは最大の危機をとりあえずは一たび乗り越える
ことができました。もちろん消防車からの放水には自衛隊も参加しましたが、
自衛隊は、消防隊の力にひっぱられて頑張れたのではないかと思います。
しかし政府はその意義をきちんと国民にも住民にも伝えませんでした。
消防隊と自衛隊、原発サイトで働くすべての人々が、深刻な被ばくに直面しながら
時間を紡ぎだしていた時、政府は安全ばかりを強調し、人々に被ばくの備えすら
訴えなかった。

意図的なベントが行われ、ほとんどこの数日に、チェルノブイリ事故の10分の1、
あるいはそれ以上と言われる放射能が大気に飛び出し、レベル7の事態に
なっていたにもかかわらず、それを黙りとおした。スピーディーが作動して、
「こちらに逃げてください」という情報が出ていたのに、それも握りつぶして
しまった。およそ、この数日間、国民や住民との間で政府が行ったことは
それが全てでした。

アメリカには見放されることを恐れて、自衛隊に命がけの派手なパフォーマンス
をさせる一方、国民と住民は、危険地帯から逃げさせることもしない。このような
非人道的なことを繰り返している政府、国民と住民ではなく、アメリカの目を
怖がり、アメリカを満足させるために作戦を練っていた政府を、私たちは
このままにしておいていいわけがありません。


ちなみにある友人が次の情報を伝えてくれました。

【地震】東電、英語版サイトと日本語サイトに極端な資料差の不思議
http://www.rbbtoday.com/article/2011/04/19/76286.html

東電のサイトも、日本語版より英語版の方が圧倒的に充実していると言うのです。
英語版でしかみられない情報がたくさん載っている。要するに東電も、国民や
住民ではなく、英語圏の人々、おそらくは投資家のことばかりを考えている・・・。
もはや何をかいわんやです。

私たちの前には、なすべきたくさんのことが横たわっています・・・。


************************* 


検証・大震災:不信洗った、ヘリ放水 原発から白煙…
政権「世界に見放される」
 ◇自衛隊が前面、米に覚悟示す
 晴れ渡る空に陸上自衛隊の大型輸送ヘリCH47が2機、巨大なバケツ
(容量7・5トン)をつり下げて仙台市の陸自霞目(かすみのめ)駐屯地を
飛び立ったのは、東日本大震災6日後の3月17日朝だった。東京電力
福島第1原発3号機からは白煙が上がる。使用済み核燃料プールの水が
沸騰した放射性水蒸気だ。海水をくんで放水し、プールを冷やす前代未聞の
作戦だった。

 「炉心溶融が進行していれば、放水によって水蒸気爆発を起こすおそれ
もある」。菅直人首相らは「最悪のシナリオ」を危惧し、防衛省は搭乗隊員
向けにできる限りの防護策をとった。放射線を極力遮断するため戦闘用
防護衣の下に鉛製ベストを着込み、床部にはタングステン板を敷き詰めた。
原発上空に停止せず、横切りながら放水する方式とした。

 「ヘリ放水開始」。午前9時48分、テレビ画像のテロップとともに映像は
世界に生中継された。計4回(計約30トン)の放水で1回目が目標に
命中したが、爆発は起きなかった。日本政府が命がけの作戦を
開始した--。ニュースが伝わった東京株式市場では全面安の展開
だった日経平均株価の下げ幅が緩んだ。

 「自衛隊などが原子炉冷却に全力を挙げている」。作業終了から約10分後、
菅首相はオバマ米大統領に電話で伝えた。その後、米国防総省は藤崎
一郎駐米大使にこう伝えた。「自衛隊の英雄的な行為に感謝する」

 翌18日、米原子力規制委員会(NRC)代表団や在日米軍幹部と、防衛、
外務当局や東電など日本側関係者が防衛省でひそかに会合を持った。
米側の一人はヘリ放水を称賛した。「よくやりましたね」

 相次ぐ水素爆発と放射性物質の広域拡散……。原発暴走を制御でき
ない無力な日本という印象が世界に広がりつつあり、菅政権は「日本は
見捨てられる」と危機感を強めていた。「放水はアメリカ向けだった。
日本の本気度を伝えようとした」。政府高官は明かした。


 「原発の状況が分からない」。米国のいら立ちは震災直後からあった。
NRC先遣隊が12日の1号機水素爆発直後に日本に派遣されたが、
複数の政府関係者によると、経済産業省原子力安全・保安院は「情報開示に
慎重だった」といい、米政府は原子炉の現状を推測するしかなかった。

 14日には「トモダチ作戦」に参加していた米原子力空母ロナルド・レーガンが
乗員から放射性物質が検出されたとして三陸沖を離れ、16日にはNRCの
ヤツコ委員長が下院公聴会で「4号機の使用済み核燃料プールには
水がない」と証言。17日未明にルース駐日米大使が日本の避難指示より
広範な原発から半径50マイル(約80キロ)以内の米国人に圏外避難を
勧告した。一連の言動は日本への不信と強い危機感の表れと映った。

 日米がかみ合わない中、打開に動いたのは防衛省だった。15日に
東電側と相談して「3号機は上空、4号機は地上から」という放水作戦を立案。
水蒸気爆発を懸念した菅首相は防衛省に「地上の前にまず上空から」と
指示した。隊員から戸惑いの声も漏れたが、「やるしかない」と陸自幹部は
覚悟を決めた。

 16日の夜には北沢俊美防衛相と制服組トップの折木良一統合幕僚長が
「放射線量の数値が高くても踏み切る」と「17日決行」を決める。「隊員の
命にかかわる作戦だ」。17日朝、折木統幕長が東電から「安全」を確認
すると北沢防衛相に最終的なゴーサインを告げた。

 「今日が限度と判断をした」。北沢防衛相はヘリ放水後の会見で言った。
米政府は好感し、現実には冷却効果が期待できないヘリ放水は二度と
行われなかった。【震災検証取材班】
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110422ddm001040072000c
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明日に向けて(65)再臨界の可能性、遠のく

2011年04月22日 16時00分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110422 15:40)

重要な内容が連続的に出て来ているので、幾つかの内容を発信します。
一つは、再臨界の可能性の指標であった、クロル38の検出について
東電から実は検出されてなかったという修正が出されたことです。
このことで1号機が再臨界を続けている可能性はほぼなくなったと言って
よいと思います。

ちなみにこの点を指摘していた小出さんも、クロル38検出の発表があった
当初から、繰り返し、東電の検出ミスかもしれないし、そうであると願いたいと
言っておられましたが、今回の東電の訂正に対しては、この検知ミスは
初歩的で、考えられないようなミスであり、そのことで世界中の多くの科学者が
振り回された。東電は、解釈を加えない前の、一時的な検出データをこそ
明らかにすべきだとラジオ番組の中で述べています。

また再臨界の可能性がなくなったからといって、危険性が去ったわけではない。
相変わらず現状では大量の放射能漏れを起こしながら冷やすしか手段が
なく、その次の進もうにも放射線量が高くて出来ない状態にあり、まだまだ
困難は継続していると強調されています。

以下に、ラジオ番組で小出さんが語られたことのネットにアップされた
要約(僕は番組を聞きましたが、要約は的確です)と、番組がアップされて
いるサイトのアドレス、また東電の発表を記した読売新聞の記事を
載せておきます。

*********************************

クロル38未検出の報に接した小出さんのお話(ラジオ番組当該部分の要約)

クロル38のこと、半減期の短い物質の過大評価と東電は言っていますが、
ばかげた説明である、ゲルマニウム半導体でガンマー線を計っている、
どの核種がどれだけあるか分かり、クロル38のことは分かるのに、生の
データを見たらすぐ分かるのに、今間違いというのか不思議と言うことなのです。
専門家には簡単なことなのです。スペクトルを見せてもらったらすぐに
分かるのに、20日以上スペクトルを出してない、本当かうそが分からないのです。

 分析・再評価は本当のデータを専門家が検討しないと、本当かどうかは
分からない、東電が勝手に解釈して間違いを発表するのを止めて欲しい
のです。みんなにデータ開示をして、再臨界で世界中が驚いたのです。
東電は正確なデータを出して欲しいのです。
http://hiroakikoide.wordpress.com/

*****
放射性塩素38「検出せず」、東電が訂正

2011年4月20日21時46分 読売新聞
 東京電力は20日、先月25日に福島第一原子力発電所の1号機タービン
建屋地下の汚染水から見つかったとした放射性塩素38について、再分析した
ところ検出できなかったと当初の発表を訂正した。

 塩素38については、燃料の再臨界が起こった根拠と指摘する専門家も
いたが、再臨界を示す他の放射性物質は見つかっていなかった。東電は、
分析のプログラムミスが判明し、再評価を進めていた。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110420-OYT1T00882.htm
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明日に向けて(64)岩手大槌町支援活動報告+原発の現状から明日を考える集い

2011年04月22日 02時30分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110422 02:30)

大変、近々のお知らせになって恐縮ですが、23日(土)、午後7時から
下記の内容の集いを行います。お近くの方、ご参加ください!

**************************

岩手県大槌町での被災者支援活動報告と原発の現状から
将来の日本に向けての支援と私達の生き方を考える集い


みなさま。

3.11以降、私たちはそれぞれの思いで被災地の痛みを共有
してきました。

被災者を直接応援しようと走りまわり、
ある人は現地にボランティアに赴き、
また京都で中古自転車を集めて被災地まで持って行った人もい
て、また義捐金を集めて送った方もいます。
ある人は福島原発ウォッチを続けて、
被ばくから身を守る為の情報発信を続けてきました。

そんな思いを持ち寄って、思いをシェアするために、
出来る限り多くの仲間たちで集まり、簡単な報告・討論会をし
ようと思いたちました。急な企画ですが、是非お越し頂ければ
幸いです。

日時: 4月23日午後7時から10時。
場所: 出町柳駅徒歩1分 アカテレテコベ ラファエルガーデン隣
http://www.sovesahva.org/sovesahva/index.html参加無料 
 


報告者と内容:

*大槌町での支援報告 千田悦子

国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR)専門職職員

難民支援で身につけた緊急支援のノウハウを日本の被災地で役
に立て 日本の若者に伝えたいと休暇と許可をとり
個人としてパレスチナ子どものキャンペーン(CCP)に
ボランティアとして参加。 3月末から3週間 予算と事業計画
書を作成の上、3箇所の避難所で炊き出し・子どもの支援・瓦
礫から発見された写真の整理等を行う

*福島原発の現状と被災地その他への影響についての解説  
守田敏也 フリーライター

原発の危険性を以前より訴え 3月11日以降
精力的に福島原発のモニタリングを続けて
情報発信・解説等を行っている。


質疑応答の時間をとって、みなさんと一緒に色々と
考えたいと思います。ぜひお越しください。

連絡先 守田敏也
morita_sccrc@yahoo.co.jp
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明日に向けて(63)赤ちゃんを守るために、母乳を検査・・・

2011年04月22日 02時00分00秒 | 明日に向けて4月1日~30日
守田です。(20110422 02:00)

友人の、村上麻衣さんのお母さんの、村上喜久子さんをはじめとする
かたたちが、茨城県のお母さんたち5名、福島県3名、宮城県1名に母乳を
提供していただいて、放射能検査を行いました。その結果、千葉、茨城両県の
4人から1キロあたり最大約36ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたことを
つかみ、昨日、記者会見を開いて明らかにしました。

母乳からヨウ素が検出されたのはショッキングなことであり、胸が痛くなる
ばかりです。お母さんたちが内部被ばくしており、その影響が母乳に現れてきて
いることが明らかだからです。

しかしこのことを市民の手で調査し、明らかにしたことは画期的です。
赤ちゃんとお母さんを守るため、実に有益で、ありがたい調査だと思います。
拍手と感謝です!!

枝野官房長官も「過度な心配をしなくても大丈夫な状況だと判断しているが」と
いつもの前置きをしつつですが「お母さま方は心配だと思う。念のため、政府
としても一定の調査を行う必要がある」と表明し、厚生省に調査を指示した
ことを明らかにしました。

こうした調査が行われると、赤ちゃんやお母さんの安全が増していきます。
だから本来これは、政府が率先してやるべきことですが、子どもを高い放射線
が飛び交う学校に登校させる政府にそれを期待することなどできない。
ならば市民の側がこうして調査を行い、マスコミに事実を伝え、政府を
動かしていくこともできることが、ここに表れています。

その意味で、この調査は、放射線被ばくへの備えを、市民の側が積極的に
進めて行く一つの好例でもあると思います。わたしたちは、自ら能動的に
被ばくの実態をつかんでいく必要があるし、工夫を凝らせばこのように
進めることができます。

・・・赤ちゃんとおかあさんを守るために、プレスリリースされた、愛情あふれる
声明をお読みください。

*********************

マスコミ関係者のみなさま

母乳に放射能汚染の心配があります。
汚染の高かった地域のお母さんたちに母乳の検査を呼びかけます。
全国の皆さんに母乳検査と母子の支援を訴えます。

 私たちは、「本当に母乳に放射能汚染はないのか」という事を心配して、
茨城県のお母さんたち5名、福島県3名、宮城県1名に母乳を提供していた
だき、放射能検査をいたしました。その結果、茨城県のお母さんの母乳の
複数から、ヨウ素-131が検出されました。福島県の方の母乳は不検出
(1名検査中)、宮城県の方の母乳も不検出でした。(セシウムは不検出)
*数値は記者会見で発表

 実際に母乳の放射能汚染があった事は衝撃です。原因は、様々考えら
れますが、公開されている空気・水・野菜・原乳の汚染の高かった地域の
お母さんたちの母乳は、もしかしたら赤ちゃんに与えるには高いレベルに
あるかもしれないと私たちは心配しています。

 今回母乳を提供してくださったお母さんたちは、赤ちゃんのためを一心に
思い、勇気をふるって協力してくださいました。これからこうしたお母さん
たちを支援するために、母乳の調査を広く実施するとともに、万一数値が
検出された場合でも安全なところへの一時避難や安全な食べ物や水、
粉ミルクや他のお母さんからの母乳の提供など、お母さんが希望される事を
バックアッするネットワークを作りたいと思います。

 国は、繰り返し「直ちに健康障害の恐れはない」とだけ言いますが果たして
そうでしょうか。チェルノブイリでは子供たちの白血病や甲状腺ガンが
ピークに達したのは10年後でした。

 私たちは、市民のネットワークの力で母乳の放射能汚染のデータを持って
おきたいと思います。過去に原爆症、水俣病、カネミ油症、薬害等々、国の
研究は被害者である市民を守るものではなく、長年被害者を苦しめる側に
ありました。今もって母乳の調査がされていない、又は発表されない事は
国は内部被曝の証拠が消えるのを待っているのでしょうか。

 母乳調査は、目には見えない内部被曝の実態を唯一目に見える数値に
する指標ともなります。いろいろな食べ物や環境、生活パターンなどを
合わせてデータ化することは、貴重な内部被曝の実態とその原因や対策を
考えるきっかけにもなると確信します。

 『母乳調査・母子支援ネットワーク』は、福島県、茨城県を始めとする
放射能汚染を受ける可能性のある地域のお母さんに向けて母乳検査を
呼びかけると共に、全国の皆さんに、母子を支援する検査の資金カンパ、
母子を支援する様々な取り組みにお力をお貸しいただけますよう、
呼びかけます。

2011年4月21日

母乳調査・母子支援ネットワーク

発起人 村上喜久子・大賀あや子・宇野朗子・大石光伸・村井和美
・河田昌東・向井雪子・黒部信一・高橋智津子・村上麻衣

連絡先 090-6649-0311 (090-9227-0132 村上)
カンパ先 郵貯 普通 12170 70089991 母乳調査・母子支援ネットワーク

***

福島第1原発:4人の母乳からヨウ素 民間検査会社分析

2011年4月21日 20時55分 更新:4月21日 21時26分 毎日新聞
 市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク」(村上喜久子代表)は21日、
福島第1原発事故を受け、福島県など4県の女性9人の母乳を民間検査
会社で分析した結果、千葉、茨城両県の4人から1キロあたり最大
約36ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたと発表した。

 生活協同組合の組合員から3月下旬に母乳の提供を受け、千葉県柏市の
女性から1キロ当たり36.3ベクレル、茨城県守谷市や同県つくば市の
女性3人から31.8~6.4ベクレルの放射性ヨウ素を検出した。福島県と
宮城県の女性は、不検出か検査中という。

 厚生労働省は、母乳に含まれる放射性物質の安全基準を設定して
いないが、検出した数値は水道水に関する乳児の摂取規制値(1キロ当たり
100ベクレル)以下で、同省母子保健課は「健康への影響を心配する
レベルではない」と話す。

 一方、枝野幸男官房長官は21日の会見で、検査結果について「過度な
心配をしなくても大丈夫な状況だと判断しているが、お母さま方は心配だと
思う。念のため、政府としても一定の調査を行う必要がある」と述べ、厚労省に
調査を指示したことを明らかにした。具体的な調査方法は今後検討する。
【佐々木洋】
http://mainichi.jp/select/today/news/20110422k0000m040118000c.html
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