tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

冬のモンゴル

2019-02-23 10:27:37 | 人々

これまで経験した極寒気温は、アラスカ・フェアバンクスの年末年始。ヒートテックの下着とダウン・ジャケットでなんとかなってた。
ちなみにフェアバンクスの寒い日はマイナス45℃にもなるらしい。↓

https://blog.goo.ne.jp/tetujin282014/e/373d7fd8804bfdf0983aba482bd253b5

じもぴーは水着だし、大丈夫じゃね?とか思ってたけど、モンゴルでは雪がさほど積もらない分、日が落ちてからの放射冷却は半端ない。よく言われるように、夜の戸外で30分もじっとしていると、外気にさらされてる顔がジンジン痛みだす。
ウランバートルなど都市部では、酒に酔っぱらって道路に寝込んでの凍死冬にはたまにあるらしい。
ちなみに、持ってったデジタル温度計は、マイナス30℃を超えたあたりでリチウムイオン電池の起電力が低下、表示しなくなった。あるいは、液晶が凍結してしまったのかもしれない。


通訳のプージェーによると、モンゴルのゲルでは電気がほとんど利用できないから、車のエンジンを温める電気ヒーターなんて使えない。なので、昔は車のエンジンの下で火を燃やしてエンジンを温めスタートさせる。
かつてモンゴルでは、可愛い外観をしているロシア製の車プルゴンが普及していた。燃料噴射制御など難しい電気仕掛けはなかったから、エンジンを直接火で温めても問題なかったわけだ。いや、問題なかったわけではない。時々、エンジンオイルに引火し火を噴くこともあったらしい。

というようなモンゴルの土産話を職場の同僚たちにすると、そんな極寒の世界にわざわざお金を払って身を投じるのは信じられないという。
冬のモンゴルは確かに極寒の地であるけど、どこまでも明るく、人情味に溢れる人々が幸せに暮らしている。


ゲルの寝場所

2019-02-22 22:00:31 | 人々

ふだん、おじいちゃんのゲルは、おばあちゃん、息子夫婦とその子供たち2人の合計6人。これに長い休みになれば、親戚の男の子メンクバトが加わり7人。
ゲルの室内にはベッドが3つ。入口の反対側にもベッドが置かれて、その両脇に祭壇、および、チェスト。普通のゲルに比べてベッドが一つ多い分、一般的な配置とは違った家具の配置をしている。

そのゲルへ通訳のプージェーを伴ってのホームステイ。いくら何でも総勢9人は多いから、息子さんの奥さんと一人の子供は里帰りしてたのかもしれない。モンゴルの遊牧民は、そんな気遣いをしてくれる人たちだ。今になって、それに気づくのも遅すぎだが( ^ω^)・・・。

さて、3つのベッド。滞在中、どうやって寝たかというと、おじいちゃんは絨毯をしいて床の上、それに倣ってぼくも床の上。客用の入り口から左側のベッドは、ぼくに譲られた通訳のプージェー。普通なら祭壇がある入口の正面のベッドに息子さんと5歳の女の子。台所用品が置いてある入口の右側は、おはあちゃんと孫のメンクバト。

実は保温性の高いゲルの中でストーブに石炭をくべるから、ゲルの上部と下部でかなりの温度差がある。ベッドの高さあたりは20℃に近い温度、床の上はそれよりも5~10℃ぐらい温度が低い。なので、ベッド組はT-シャツ一枚。ふとんからはみ出して寝ていることもある。
一方、床上は冬用の寝袋でちょうどいい温度。寝返りをうってもベッドから落ちる心配ないから、心おきなく動ける。

親戚のメンクバトがいる変則的な寝場所なのだろうけど、ぼくらゲストがいない時はどんな配置で寝ているのだろう。息子さん夫婦が一人ずつ子供と寝るとして、おばあちゃんはメンクバトと。とすれば、おじいちゃんはやっぱり床の上ということ?
男はつらいよだね( ^ω^)・・・。


モンゴルの大晦日

2019-02-21 22:12:26 | 人々

モンゴルの大晦日にあたる日はビトゥーン。「閉じる」という意味らしい。一年の締めの日だ。
この日は朝の家畜たちの世話が終わったら、大掃除の後、お正月の飾り付け。そして、みんながゲルにいるから、久々のテレビのスイッチ・オン。
多くのチャンネルで、ウランバートルで開催中のモンゴル相撲の中継が行われている。大晦日のモンゴル相撲は、国民的な行事であり、抜群の視聴率という。勝者が決まってモンゴル相撲の中継が終われば、番組はモンゴルの歌謡曲。いろんなモンゴルの人気歌手が延々とはやりの歌を歌い、飾り付けの家族もまた、歌に合わせて口ずさみながら仕事を進めていく。

昼と夜ごはんは、ゆでた羊肉(前菜?)から始まって、前もって大量に作って冷凍保存してたボーズ。縁起を担いで幸せを包み込む小麦粉の皮で肉を閉じて蒸した餃子のようなショウロンポウのような料理。そして甘さを感じる乾燥チーズのアーロールがテーブルに並ぶ。〆は羊肉うどんのゴリルタイシュル。

夕ご飯が終わって牛の乳しぼりも終わって、ひと段落すると、おじいちゃんは、ストーブのそばで数日間、解凍していた羊のお尻の肉を大きな鍋で蒸しはじめる。いわば、羊の下半身の豪華な姿蒸し。モンゴルの豪勢なお正月料理の主役だ。
ストーブに石炭をくべガンガン蒸す。そのうち、ゲルの中は、室温が28℃、湿度90%に。真夏の日本の暑さ。
ヒートテックやらなにやらを重ねて厚着していた、ぼくはたまらずのぼせてゲルの外へ一時避難。マイナス30℃の夜風が気持ちいい。

良い加減に体を冷やしゲルに戻ると、またそこは熱帯夜の東京。温度差は60℃近くあってふらふらになる。ゲルの中では、羊の大腿骨を割って骨中の髄をみんなで食べてた。通訳のプージェーが、骨を割るのは「開く」という意味がある・・・とかなんとか説明をしてたような気がするが、もう体の限界。一人だけ床面に広げた寝袋に潜り込んで、比較的涼しい床面で就寝。寝酒とか不要。モンゴルのビトゥーンは蒸し暑く、そして、料理はたまらなくおいしい。。
ちなみに、おじいちゃんが蒸してた羊の下半身の豪華な姿蒸しは、今年は失敗作らしい。どうにも長時間蒸しすぎたようで、下半身の格好があるべき姿にはならなかったようだ。なので、残念ながらお正月のテーブルには乗らなかった。長い人生にはそんなこともある。


オボー祭祀

2019-02-20 22:50:48 | 人々

ゲルを見下ろす小高い丘に石を積み上げて作られたオボー。土地神様が奉られてる。モンゴルの山岳信仰、テングリといった古来から続くシャーマニズムが、チベット仏教と時に対立しながらも混じり合い、信仰されつづけてきた。
石の築壇の頂には、主なる木を挿す。昔からモンゴル人は、オボーを神霊が宿る場として見なしていて、祭りを行なってきた。オボーの有る丘に登ることが許されているのは男性のみだ。

大晦日にゲルにいる男たち、おじいちゃん、息子さん、7歳のメンクバト、通訳のプージェー、そしてぼくの5人で壊れたオボーを積みなおし。そしてツァガンサル(白い月)の朝、盛装してお参り。甘いものや金、ミルクやウォッカを供ええ、香が焚かれる。
その後、オボーに降臨してくるエジド・オンゴドに祈願し、守護や生活の平安、家畜の繁殖を求め、オボーの周りを三周、時計回りに回る。

もう一つのオボーの意味は、家族で保持している共同体意識を次世代に伝えるためなのだろう。なお,共産主義期のモンゴルでは、他の宗教と同じくオボー参拝は禁止されたが人々は秘密裏に参拝を続けたという。


やらせの儀式

2019-02-19 22:56:46 | 人々

柄杓ですくった茶を天に、爱する祖国の地に、そして客人を歓迎するために四方に捧げる。
前もって調べておいた古いモンゴルの朝の儀式。朝、母親が沸かしたお茶を天地・四方にささげる儀式だ。ドキュメンタリーにはもってこいのビジュアル。
通訳のプージェーにはこの写真をものにしたいと伝えておいた。

実際に撮影となると、いろんな困難に遭遇した。
例えば、絞った牛乳。絞りたてを天地・四方にささげるのだが、ゲル滞在中の乳絞りはいつも決まって暗くなってから。
真っ暗な中で、おばあちゃんがしぼったばかりの牛乳をささげる。これが、スピードライトを当てての写真では、雰囲気がぶちこわし。

また、朝、一番先に起きるのは、おばあちゃんではなくおじいちゃんだった。外がまだ真っ暗な5時ぐらいに起き出して、ストーブに火を入れる。ゲルの主のみしかできない火入れ。
いつも、このタイミングでぼくも起き出し、ゲルの外へ出てワンコとともに未明の風景写真を撮る。

モンゴルの明け方は遅く、7時ごろ。おばあちゃんが火がおこったストーブで鍋いっぱいのスーテーツァイをつくる。
嫁入り道具として持参したいう年季の入った茶の袋に入った黒茶の磚茶(たんちゃ団茶)の塊を、ステンレス製のラチェット(なぜか)で砕く。
ぐらぐら沸き立つ鍋に、黒茶と牛乳を加え、塩を加えて煮出す。このモンゴル式のミルクティ「スーテーツァイ」は、最も一般的な饮み物のひとつだ。
とっ沸しないように注意してお茶の完成。本当は外に出て、四方の神へささげる儀式をするのだが、なんせ、まだ外は真っ暗なマイナス30℃の世界。
ゲルの扉を少し開け、入り口から外へ向かってスーテーツァイの奉納。写真の構図としてはぜんぜんよろしくない。

それでも、ツァガンサル(白い月)のはじめのスーテーツァイは、日が昇ってからその儀式をしてくれた。
というのも、ぼくが写真を撮れずに困ってることを通訳のプージェーが伝えてくれたから。おばあちゃんは、撮影の準備ができたらいつでもしてあげるよと。
・・・真実を伝えるはずの写真は、多分にこんなことになりがち。

日が昇って、ツァガンサルのスーテーツァイができて、おばあちゃんがポットを抱えて外に出る。孫のメンクバトがつきそう。
おばあちゃんと孫でモンゴルの古い儀式。いい絵だ。
・・・と写真を撮ってたら、プージェーがゲルから出てきて写真の邪魔とばかりに孫をカメラの視野から追い出してしまった。
こんなこともある。思わぬ「やらせ」に苦笑してしまう。ドキュメント写真って、いったいいくつの真実を焼き付けられるものなのだろう。