tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

アポカリプト

2007-10-28 22:37:48 | cinema

アポカリプトの意味をネットで調べたら、どうやらメル・ギブソン監督自身がテレビコマーシャルでその意味を明かしてたらしい。
You might have seen Gibson himself explaining in the TV commercials for the movie that "Apocalypto means 'a new beginning,'" an assertion he was making to reporters more than a year ago.
'a new beginning,'「新しい始まり」というのが答えだ。

今から約4600年前に中央アメリカの密林に誕生し、エジプトのピラミッドを上回る巨大ピラミッド文明を築きつつも、 15世紀に突然謎の消滅をとげたマヤ文明だが、小さな都市国家が合従連衡と興亡を繰り返し、統一されることはなかったという。川沿いの肥沃な土地でなく、川もない密林に高度な文明。その失われた文明の特徴は、高度な建築技術や暦、複雑で独特の絵文字を持つ一方、鉄器などの金属器や車輪、牛や馬などの家畜を持っていなかった点だ。
マヤの人々が、この映画で描かれたような狩猟民族であるか、あるいは、農耕民族であるかという議論は置いておいても、あの巨大なピラミッドを牛や馬などの動力を使わずに人力だけで建築したとすれば、その社会は奴隷制度、あるいは、税制に代わる労役の制度のようなものがあったに違いない。また、マヤ北部(メキシコ)のチチェン・イツァーの遺跡。ここでは、当時4万人が暮らしていたと推定される。ここに地下10mにセノーテという泉があり、水深15mの底に歯をギザギザに削った118体以上の人骨が発見されている。顔を強打された子供の頭蓋骨には、石のナイフで皮を剥がされた跡が残る。これらは神に捧げられた古代マヤの人々だ。天候不良や雨の為に生贄にされた。生贄にされた人間は戦いの捕虜たちであり、この映画で描かれたように生贄を得るため周辺諸国に戦士を送ったと考えられる。
かくして、奴隷として無理やり徴集されたとあるの人々が、自由を求めて権力と戦うというストーリーが湧き出てくるのだろう。戦いの場を密林に求めるのなら、ストーリーの関係でどうしてもマヤの人々を森の勇者にしなければならないのもうなずける。そうした世界では、女を守るため、一家を守るために、ぎりぎりの戦いを毎日のように強いられるのだろう。まさに、弱肉強食。果たして自分は、もしそのような社会に放り込まれたのなら生き延びることができるのだろうか。命は戦いの中で始めて得ることができる。生きるための戦い、生きるための忍耐。ともに、前作の「パッション」からメル・ギブソン監督が訴える人間の宿命が描かれている。

戦いに明け暮れたマヤ文明は、内乱とスペインの侵攻によって崩壊していった。1519年、スペイン人が新天地を求め、また異教徒を改宗させるために中央アメリカに到達した。当時のユカタン半島は小国家や部族の乱立状態にあった。こうした状況下においてスペイン軍は予想以上の苦戦をしいられた。だが、近代兵器を携えたスペイン軍の前に、やがてマヤの都市は次々に征服されていった。決定的だったのは、スペイン人が持ち込んだ伝染病だった。侵攻から100年の間にマヤ族のおよそ9割が疫病で死に絶えたとも言われている。
1527年から始まったユカタン地域の征服は着々と進み、1542年にはスペインの町メリダが建設され、スペインの植民地時代が始まっていく。マヤの人々はその後、キリスト教への暴力的な改宗をしいられつつも抵抗を続けたが、1697年のタヤサルの戦いを最後に、マヤ人はスペインの軍門に下ることになる。
ボナンパックの壁画に描かれた当時の戦士の様子を見ると、映画に出てきたような全身の刺青や、耳にも首にも唇にも穴を開けて数々の装飾が施されている。なぞに満ちたマヤ文明であるが、それは自然を敬い、その恵みを大切に分け合いながら暮らそうとした人々の知恵の姿なのだろう。


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6 コメント

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Unknown (amasaki)
2007-11-05 20:47:44
トラバ先の内容も読まずに送信しているのでしょうか。
あなたがトラバを送信した先では、【スペイン軍はマヤを滅ぼしてはいません。スペイン軍が滅ぼしたのはアステカ文明です。メル・ギブソンは勝手なご都合主義でマヤ文明にスペイン軍をかち合わせたのです。】と指摘しているのです。
ttp://ep.blog12.fc2.com/blog-entry-622.html
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Unknown (tetujin)
2007-11-06 19:34:59
amasaki 様。
>トラバ先の内容も読まずに送信しているのでしょうか。
はい、トラバ先の確認が足りませんでした。気分を害されたのでしたら誤ります。ごめんなさい。
「侵攻から100年の間にマヤ族のおよそ9割が疫病で死に絶えたとも言われている」
たしかに、マヤ文明の没落はスペイン軍が直接の引き金にはなっていませんね。それに、amasaki 様が指摘されるように、スペイン軍が押し寄せたときは、マヤ文明はほとんど虫の息だったのかもしれません。

スペイン軍によるという説は、マヤ文明と同様に一人で崩壊していくのかもしれませんね。でも、フィクションとしての映画からすれば、スペイン軍が持ち込んだ疫病が原因とした方がドラマチックなんですよね。史実をとるか、文学をとるか。それが問題なんですかね。
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Unknown (蚊帳冨孑)
2007-11-26 18:56:44
映画をレンタルで借りて観ました。

いやぁ~太古の時代は戦乱に明け暮れた日々だったんだな~っと、思います。

映画では都とは関係の無い人が襲撃され拉致され、挙げ句の果てに都で処刑又は、奴隷にされてます。
それが史実ならばだ、東西冷戦時代に各エリアで、民主解放戦線等と名乗る反政府軍が存在していた事実も納得する感がある。

さて映画の評価ですが、自分はあまり好まないし、残酷すぎの場面が多多ありで、×です。
なんか感動も無いし、トラウマになった翌日の朝であった。
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Unknown (tetujin)
2007-11-26 20:31:09
蚊帳冨孑 様。いらっしゃい。

たしかに、メル・ギブソンは暴力的な映像を創りますね。あおれほどまでに人間を追い詰めれば、どうにかなっちゃうんじゃないかと思えるぐらいに。
アメリカのフロンティア精神は、西部からロッキー山脈を越えてさらに宇宙へ。行くところまで行ったと思ったら、ラストサムライで日本へやってきて、そして、マヤへ。
・・・・・・そろそろ、ネタもつきかけてるんでしょうかね。

ところで、蚊帳冨孑様の名前はどう読むんでしょうか?
これからも、よろしくお願いします。
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Unknown (蚊帳冨孑)
2007-11-27 12:41:09
名前の話しですが、[かちょうふうげつ]花鳥風月を別の字に変えました。
映画のある都に到着した場面では、何故か日本の弥馬大国を想わせる髪型の女性が映ってましたので、その名前を遊び半分でつけました。

おそらく他文明でも似た髪型の人がいたのでは、無いのかな~と想います。
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Unknown (tetujin)
2007-11-27 20:29:02
蚊帳冨孑様。
[かちょうふうげつ]さんですか。風流なHNですね。

>何故か日本の弥馬大国を想わせる髪型の女性が映ってましたので
北米大陸のネイティブインディアンも、アジア系の顔つきですよね。人類(現代人の祖先)はアフリカで誕生して中央アジアに行き、それからヨーロッパに行ったものとさらに東に行ったものに別れ、韓国、あるいは日本を経由して、ベーリング海峡を渡りアメリカ大陸に渡った人類が北米インディアン、南米インディオの子孫なのかも知れませんね。
もし、彼らの言葉であるケチュア諸語と日本語の間に類似があれば、南米インディオは我々日本人とかなり近い人種ということになりますね。
ロマンを感じるなあ。
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