12月25日の朝8時台の東京へ向かう京葉線の電車。この中にはミッキーやドナルドたちも乗っているのかもしれない。今年もありがとう。君達のクリスマスはこれからなのかな。ファンタジーの世界が広がる夢と魔法の王国では、いつも変わらない笑顔をもらっている。キャストの彼ら、彼女達にサンタクロースが今年もやって来ますように。
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時計は午後10時をまわり、園内放送が流れると、ようやく人が少なくなって来た。昼の間、あれほど人の群れでぎわっていたアトラクションもすべて終了した。向こうに見えるアリスのティー・パーティ(コーヒー・カップ) は、すでにロープを貼ってゲストが入れないようにしている。急に静かになったパークは怖い感じもしてくる。一番奥の方からセキュリティのキャストが出てきて、園内で遅くまで残っているゲストを追いかけるように点検していく。若いカップルが多いゲスト達は、素直にキャストに従って結構きちんと帰ってくれる。ゲスト達は“ピクシー・ダスト”の魔法にでもかかったのだろうか、その素直さが不思議だ。
ゲートのそばのワールドバザールもこの時間になると、店の入り口にキャストが立ってそれ以降の入店を制限しだす。おみやげ屋さんでいつも一番最後に閉まるのはグランドエンポーリアム。施設で一番最後はメインストリートハウスだ。ゲートでは、キャラクター・グリーティングをやっているらしい。女の子の団体が写真を撮りあっている。
夕暮れ時にミッキーによって飾り付けをされたシンデレラ城に、ディズニーの仲間たちが光を灯す。クリスマス・ファンタジーは12月25日が最後の日。明日からは、少しはゲストのイン・パークが減るのだろう。けれど、カストーディアルの彼にとっては、クリスマスはこれからなのだ。ゲストがいなくなるとキャストも帰ることが出来る。時計は11時をまわった。そろそろ、最後のゲストがセキュリティに追われて、ゲートをくぐった頃だろう。
いつも、武蔵野線の最終11:49の帰りの電車の中で、帰宅途中のゲストといっしょになる。彼は、ユニフォームを着替えて表舞台をつっきってゲートに向かった。途中、携帯から彼女に電話する。
「メリー・クリスマス!」
二日前の電話を思い出す。彼女の気落ちした声・・・
「・・・明日も、ダメなの?」つまり12月24日、“イブ”のことだ。
「うん、やっぱり一番忙がしくてね」
「そう・・・、バイトなのね。そう・・・」
そんなにガッカリするなよ。ちょっと遅れるけど、プレゼントは奮発して、有名ブランドの指輪なんだから。
きっと、びっくりするぞ・・・
真っ暗い一人暮らしの部屋に戻って、彼女が作ってくれたクリスマス・プディングを食べる。初めて口にしたのは3年前。
「砂糖を入れ間違えたんじゃない?」と思ったほど甘くて、一口以上食べられない代物だったのだが、次第にその味に病みつきになってしまった。テレビでは、ハイビジョン特集として「カクテル大百科」が放映されている。そろそろ、眠りに就こうかと思った時、部屋のチャイムが鳴った。<誰だろう。こんな時間に?>
ドアを開けるとそこに笑顔の由香里が居た。
「メリー・クリスマス!」
彼女は首都高を車でとばしてやってきた。ぼくらのクリスマスはこれから始まる。
恋人がサンタクロース~♪
*ピクシーダスト 【反強磁性結合メディア】 IBM社が開発した、ハードディスクの記録面にルテニウム層をはさむことで記録密度を増やす技術。ではない。
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