tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

9:59舞浜駅着

2006-12-26 20:40:14 | プチ放浪 都会編

家族と別居中の彼。一年ぶり子供達に会うため、舞浜駅の南口・東京ディズニーランド入口側の改札で子供達を待った。東京からの9:59舞浜駅着の快速電車から降りた大勢の客の中に、中学2年になる息子と中学1年の娘がいた。ディズニーランドへはこれまで家族で数回来ているが、一番最近訪れたのは2年前の夏。子供達の夏休みに3人で来た時だった。

一年ほど見ない間に一回り大きくなっている子供達をじっと見ていると、2人は照れたように近づいてくる。中一の娘は、ときどき携帯からメールをくれるものの、実際に会うと話しづらいのか彼女もよそよそしい。横殴りの雨の中、ランドまでの道のりを3人とも何を話していいのかわからず沈黙がちだった。直接会って、いろいろ聞きたいこともあった。普通の父親がするように、悩み事の相談なんかものってやりたかった・・・でも、もう親離れの年頃なのか、会話しようにもきっかけがつかめず、そのままイン・パーク。まずは、3人でビックサンダーマウンテンのファースト・パスをとると、指定の時間まで待ち時間の少ないサブアトラクションを回った。いろいろアトラクションを回る内に少しずつ3人の会話は増えてきた。が、お互いに気を使っていて、どこかよそよそしい。
ザーザー降りの雨の天気ながら、冬休みに入りランドは小学生ぐらいの子供達でにぎわっていて、人気アトラクションは、大体90分から2時間待ちであった。色とりどりの雨合羽を着てスタンバイに並んだ小学生の女の子のグループ。お菓子持込で、順番を待っている。お前ら紙くずをちらかすなよ。

2年前の夏訪れた時、スペースマウンテンのスタンバイに並んだ我々の目の前に、その最悪のバカップルが居た。恐らく、東京近郊の田舎から出てきたのであろう20歳ぐらいのカップルは、容赦なく照りつける強い日差しのもとで口げんかを始めた。けんかの発端は良く判らない。はでな黒いシャツを着た男が、千葉の奥か茨城かその辺のアクセントで<暑い。暑い。>と言っていたのが気に触ったらしい。確かにただでさえ暑いのに、すぐそばで暑苦しい男に<暑い。暑い。>と言われれば、余計に暑さがましてイラついてくる。
「少しは我慢しろ」というようなことをその娘は言った。
長髪の髪の先を指先でくるくる丸めながら、「なに怒ってんだよ」男は、相手の言葉を受けてやり返す。
しつこく、何度もなんども男は女になぜ怒ったのか聞いた挙句、「おれが悪いんじゃねーだろう」。女は説明をあきらめて黙り込む。
黙り込んだ女に対し、男はまた無意識に<暑い。暑い。>を繰り返す。
2人は2時間近く炎天下で並んでいる間中、ずーとそれを繰り返していた。
<こんなところで喧嘩すんなよ・・・みっともない・・・>と当時は思った。今考えると、彼らはそうやってお互いに気持ちをぶつけ合って分かり合っていたのだろう。それはそれで、彼らにしてみれば幸福だったのだ。人目を意識して、だまってお互いが我慢するよりもずっとその方が良いのかもしれない。我慢することで、目に見えない亀裂が深く進行して行き、気がついた時にはどうにも修復不可能な状態になっていることがある。それと比べると、ささいなことで喧嘩しあえるのは幸せなことなのかもしれない。喧嘩していた彼らは、今頃うまくやっているのだろうか。幸せになってくれるとうれしいのだが・・・。

冬の日は短く、あっという間に日没。ずぶぬれの体が冷え切って寒さが押し寄せてくる。ワールドバザールで子供達が欲しがった土産物を買ってあげる。レジで財布を取り出しお金を払おうとする子供達を制して精算する。少しは親らしきことをさせてくれ。長いようで短い、8時間ほどの親子ゲームが終わり、日の落ちたゲートをくぐり出た。子供たちはすぐ大きくなってしまうだろう。高校、大学へと進学すれば、親と一緒にディズニーランドに来るなんて絶対にしない。今日が3人で来る最後の日。もう来ることはないと思ったら、彼はつらくなってきた。子供達も、彼の気持ちを察してか、駅までの途中で彼に顔をむけようとはしない。どしゃぶりの雨の中、3人で下をむいたまま傘をさし、とぼとぼとそれぞれの家路をたどる。駅について、東京方面へ帰る子供達を彼は見送る。

電車のドアーが閉まる寸前、息子が周囲も気にせず大声で叫んだ。
「おとうさん、また来ようね!」
その日聞いた、初めての「おとうさん」という言葉。娘はつり革につかまってボロボロ泣いている。
1人、電車の中で携帯で撮ったずぶぬれの子供達の顔の写真を見ていると、彼はなんだか泣けてきてしまった。

 


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