tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

ロッキー・ザ・ファイナル

2007-10-16 20:13:47 | cinema

1975年3月24日 無名のボクサーのチャック・ウェプナーは、54戦52勝37KOを誇るボクシング史上屈指の偉大なチャンピオンのモハメド・アリに挑戦し、15ラウンドにKO負けを喫した。だれもがチャンピオンのKO勝ちを予想する中で、ウェプナーは思いもかけない善戦だった。
ニューヨークのスラム街で生まれ育ったウェップナーは、「強盗」、「強姦」、「窃盗」など悪い事はすべて経験して少年院から刑務所入り、刑務所でボクシングを覚えてオールアメリカン・コンビクター(囚人)・チャンピオンになった。彼が無名だったのはこんな理由による。そのアリと善戦した試合の第9ラウンドのことだ。クロスカウンターを放ったウェプナーはアリからダウンを奪う。しかし、ウェップナーがダウンを奪えたのは、実はアリの足を踏んでのパンチだったらしい。後年の喧嘩屋ボクサーの特徴を良く表すエピソードだ。

この試合を見たやはり無名の俳優だったシルベスタ・スタローンは、無名のボクサーが無敵のチャンピオンに善戦するストーリーを思いつき、3日間で『ロッキー』の脚本を書き上げる。そして早速、売り込みを開始。その際につけた条件が、自らが主人公を演じること。こうして、わずか100万ドルという低予算ながら、スタローンの脚本・主演で映画『ロッキー』が完成する。『ロッキー』はアカデミー賞の作品賞、監督賞を受賞し、無名だったスタローンはこの一本で一躍スターにかけあがった。まさにアメリカンドリーム。

『ロッキー』とともにスター人生を歩き始めたスタローンは、その後、第5作まで後編をだすが、第1作ほどの成功は得られなかった。 『ロッキー4/炎の友情』 ではゴールデンラズベリー賞の最低監督賞を、 『ロッキー5/最後のドラマ 』 では、スタローンが自身が認める脚本の失敗に。脳に損傷を受けて引退したロッキーは、ラストファイトをリングではなくストリートファイトして『ロッキー』のファンから拒否されたのだった。
この失敗を挽回すべく、スタローンはもうこれで最後の最後という「ロッキー・ザ・ファイナル」を引っさげて再挑戦してきた。前作の失敗があまりにもみじめだったからだろう。
主人公のロッキーは、チャンピオンになった後も、その後に引退してからもまったく変わっていない。とても正直で誰に対しても悪口やねたみを言わない。自分の恐怖心、弱点、そして強さも知っているそんな人間。ただ、あのエイドリアンが亡くなっていた。もし、エイドリアンが生きている設定なら、きっと彼女はロッキーの最後のリングを止めているだろう。60歳を超える高齢で、ボクシングのような危険なスポーツへの復帰は、どう考えても死ぬ。妻じゃなくても、誰もがロッキーの現役復帰を止めるはずだ。ロッキーも、反対するエイドリアンを悲しませてなお現役復帰に固執するだろうか?だから、エイドリアンの死は、この物語ではなくてはならない設定だ。そして、それはロッキーの死の覚悟を表している。
スタローン自身は公開直前、オーストラリアの空港で禁止薬物(ヒト成長ホルモン=HGH)所持で捕まった。1990年代にスタローンが出演したアクション映画を見れば、どの作品でも彼は筋骨隆々の肉体を披露している。恐らく彼は、HGHのみならず、アナボリックステロイドなどの大量の筋肉増強剤を長期にわたって使って肉体美を作っていたと考えられる。そしてこれらの薬剤の使用は、確実に人の寿命を大幅に縮める。たかが映画のためにスタローンは命を賭けてきたのだ。マネキュアの爪を大事にして、ギターの弦を押えることをしなかったどこかの国の映画のヒロインとは大違いだ。スタローンはすでに成功者であり、たかがボクシング映画のために無理をする必要もないのだが。 ・・・・・・されど映画。

ハードトレーニング。年老いて運動能力に劣るのなら、これぞというパンチが必要。必殺技をなくして、勝つための公算がなりたたない。負けてもともとなら、試合をする意味がない。観客はそんな試合を見たくはない。ロッキーがやったのは、『ロッキー1』で見せた1970年代の古いトレーニング。しかも、あいかわらず、生たまご5コを一気飲み、精肉工場の冷凍庫にぶら下げられたの牛の半身をサンドバック代わりにしている。そして、息子からも試合を反対される。「頼むからやめてくれ」しかし、ロッキーは「自分を信じなきゃ人生じゃない。叶わない夢はない!」と息子に返す。

試合予想は、誰の目にもロッキーが劣勢で、調子に乗りまくるチャンピオン。会場は伝説の王者であるロッキーを応援する。
Never Giveup~ 諦めたらそこで試合終了だ! ゴング前にコーナーに向かって祈る仕草。そしてゴング。1Rからダウンするロッキー。
まるでパンチが全然効いていないかのように、打たれても打たれたも前にでるロッキー。
"It ain't how hard you hit; it's about how hard you can get hit, and keep moving forward. How much you can take, and keep moving forward. That's how winning is done."
「大事なのはどれだけ強く打つかではなく、いくら強く打ちのめされても、こらえて前に進み続けること。そうすれば勝利をつかめる」

あれから30年かあ。ぼくにとって人生ほど重いパンチは無かった。でも、自分を信じて頑張ってみる。そしていつか、きっとあのフィラデルフィア美術館前の72段の階段を一気に駆け上がってガッツポーズする。絶対に!


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