tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

マスケラ(ベネチアンマスク)

2012-02-27 22:11:45 | プチ放浪 都会編

  
 

マスケラ・・・本心や素性を隠すためのマスク。
日本のこの時期の花粉症対策としてのマスクは、社会不安障害とかで他人とのコミュニケーションが苦手な一部の人達にとっての、人と接触を断つための道具となっているようだ。あるいは、アイドルを真似てストーカー行為の防衛対策とか、あるいは駅前のナンパの声掛け対策とか。
一方、ベニス(ヴェネツィア)でのマスケラは、中世の貴族になりきるための魔法の道具の一つ。
ベニスカーニバルのマスクにはいろいろあるが、それを着けた人々は自分以外の何者かに成りきって、つかの間のプチ冒険を楽しんでいる。つまり、マスケラはベニスカーニバルというシチュエーションでのコミュニケーションのための手段であり、この扮装一つでより多くの旅行者たちと触れ合いを楽しむことができる。
この点、写真を撮る側からも、マスケラを見かけると気軽に声をかけることができる。写真を撮ってもいいですかと。マスクの目からのぞく目が即座に笑ってOKをくれる。
・・・どさくさに紛れて、素顔のままのかわいい女性たちなんかにも、声をかけてしまうのだが。。
ってことは、カメラも一つのコミュニケーションの手段っつうこと。。
ドイツの社会学者ゲオルク・ジンメルによれば、「社交」は、「社会化の遊戯的形式」。中世の貴族たちのお仕事は、自分の領土を「社交」によって守ることにあったのだ。

狂乱と退廃との妖しい匂いが立ち込めるマスケラ。手に手袋、頭には帽子や頭巾を被り、極彩色の繻子を纏って金襴緞子に身を包んでいる。
それぞれのマスケラは、二つと同じものはなく、スタンリー・キュービックが描いたEyes Wide Shutのような秘め事や、喜び、愛情、陶酔、快楽、退廃、あるいは、怒りや悲しみ、お人好し等を浮かび上がらせている。
仮面には二つのアーモンド型の穴が穿たれ、その穴を通してカメラのレンズを覗き込んでくる緑や青の目は、ぼくをむせ返るような頽廃と幻想に誘い込む。
・・・ダリの不思議な時計がまた、頭の中を泳ぎ始める。

人々が着けているマスケラの種類は、大別すると5種類。
・目から鼻にかけて顔の上半分だけを隠すおなじみのColumbina(バッドマンみたいなやつ)。同名の喜劇女優のためにデザインされたらしい。美人向けだ。
・Bautaと呼ばれるフルフェイスの口の部分が前に突き出しているペンギンみたいなやつ。仮面を付けたままでも飲食が可。
・Medico Della Pesteと呼ばれる鼻と口に鳥の嘴のような突起をもつ仮面。この仮面は中世の医師たちがペストの治療の際に用いたマスクで、嘴の部分には、空気を洗浄する目的で香の強い薬草を入れていた。また、目には直接目をあわせないようにメガネをかけ、手には直接触らないで布団をめくり上げるための棒を持つ。
・Morettaと呼ばれる1760年ごろにのみ流行ったという黒のベルベット製の女性用マスク。もともとはフランス起源のマスクで、結ぶためのヒモはなく、マスク内側のボタンを咥えて装着。このため、このマスクをかぶった女性は話ができなくなる。会話は優雅な身振りのみ。競馬観戦なんかの時に主に装着されたようだ。
・最後はLarva(Voltoとも)呼ばれる白の典型的なベネチアンマスク。Larvaはラテン語の”マスク”、あるいは、”幽霊”からきている。映画Vフォー・ヴェンデッタででVが着けていたマスクだ。軽くて装着がしやすく、着けたままダンスや食事など気軽にできるので一番人気。

さてさて、優雅さを身にまとうためのマスケラだが、着けているほとんどの人々の目が笑っている。まあ、こんだけ歩く道すがら、みんなからカメラを向けられると、ちょっとしたいい気分になれるのかもしれない。それに引き替え、マスケラたちの写真を撮ろうとカメラの群れに突っ込んでいく東洋の美人たち。その表情がまるで仮面を着けたように無表情なのが不気味だ。
・・・カメラはコミュニケーションを楽しむことができる魔法の道具なんだけどなあ。。
では、ciao, ciao


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