モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

プレ・モダンローズの系譜 ③ 品種改良

2008-12-28 11:27:44 | バラ
あわただしい年末に世事と離れていいのかという気もするが、避けて通れないテーマなのでとりあげることにする。

園芸品種の開発

バラの園芸品種の育種は、偶然と必然の歴史のようだ。
偶然は発見されないと歴史に或いは記録に登場しないが、必然は、計画的に新種開発をするということだが、この新種開発は、時間とコストがかかるリスクの高いビジネスのようだ。
クルマのような人工物を作るのではなく1年という自然のリズムの上で開発をするので、気が遠くなるほどの時間を覚悟しなければならない。

この時間を短縮する方法はないが、唯一の対策は、同時に数多くの種をまき、数多くの苗を育て、そして交配をする。その中から選別して良さそうなものだけを残して育てることのようだ。バラの場合は、2万のタネを蒔きそこから絞り込んでいくようようだが、初期投資の資金が莫大となり誰でもが手を出せる代物ではなくなってきている。
何故2万ものタネを蒔くのかというと、優良な品種の出現の確率が、1万分のⅠとか二万分のⅠとかいわれているのでこの逆を行っている。“千三つ”という故事があるがそれよりも確立が悪くなるが当たって遠からずのようだ。

品種改良・新品種開発といえば聞こえはいいが、細々では偶然を待つ以外ない。
“青いバラ”をつくるというような目標を持ち、結果を出すということはリスクを前提に、リスクを如何に減じるかという“のどか”ではない裏舞台になっているという。

こうしてつくった大事な新種は、権利を保護しないと直ぐマネられる。
だから、保護される前に育種の機密を盗もうとするスパイ活動があり血みどろの争いもあったというから育種家同士は仲がよくないという。

高嶺の花の代表バラ、これらを含む植物の品種改良という知的権利の保護に関しては、工業製品が歩んできた道をおくれてたどり、知的な活動を保護する国際条約が出来たのは、1961年パリで作成された「International Convention for the Protection of New Varieties of Plants(植物の新品種の保護に関する国際条約)(略称UPOV条約)」であった。やはりフランスの伝統を国際条約で守ろうとした園芸先進国だけはある。

国内法としては1947年(昭和22年)に制定された“種苗法(しゅびょうほう)”があり、日本のバラ育種家の第一人者であった鈴木省三(1913-2000)もこの育苗法改定に尽くしたという。

http://www.hinsyu.maff.go.jp/
(参考:農林省品種登録ホームページ)

実践:品種改良の方法
品種改良はタネを蒔いて育てる実生法(みしょうほう)、放射線をあてて変異を作る放射線法、バイオテクノロジーを使う方法があるが、我々でも出来る実生法を紹介する。出典は鈴木省三氏の『バラ花図譜』である。

1.花の両親を決める
元気のよい花をたくさんつける株を選び、父親となる株は色・形のよい物を選ぶ。

2.交配(交雑)する時期
春の一番咲きの時期

3.母親株の雄しべを取り除く
母親株の花が咲く1~2日前の花弁を全部取り除き、ピンセットで、雄しべを全部取り除く。風や虫による他の花の花粉がつかないように雄しべを取り除いた花に紙袋をかけておき、1~2日後に父親株から採った花粉をかける受粉作業をする。

4.父親株の雄しべから花粉を集める
父親株のつぼみの状態の花から、母親株と同じように花弁を取り除き、ピンセットで雄しべをとり、適当な容器に集める。これを日陰で乾燥させた後で冷蔵庫に保管する。2週間ぐらいは保存が利くのでこの間に受粉で使う。

5.受粉
3で雄しべを除去した母親株の雌しべが成熟(柱頭が濡れる感じ)したら、保存した花粉で受粉させる。受粉は、指先或いは筆に花粉をつけ、柱頭に塗りつける。受粉後は、他の花粉がつかないように袋をかぶせておく。受粉させた花には、両親の品種名と受粉させた年月日を書いた札をつける。

6.採果と脱粒
受精がうまくいって1ヶ月ぐらいすると子房が膨らみ受精が確認できる。(失敗した時は子房のしたが黄色くなり枯れる) 受精した花は、毎日観察し虫害や病気から守ってやる。受精後3ヶ月ぐらいで種子は発芽能力を持つので、果実が赤く色づいたところで収穫する。ナイフで中の種を傷つけないように果実を割り種を取り出す。
このタネを直ぐ蒔いてもよいが、冷蔵庫で保管し、12月から翌年3月にかけて蒔いてもよい。冷蔵庫では種子を乾燥させないように水分を含ませたガーゼの上に種子を並べた容器で保管する。

7.種まき
用土はバーミキュライトとパーライトを混ぜたものを使い、2~3月頃に蒔く。(温室の場合は11~12月頃) 過湿にならないように水分の与え方に注意する。

8.発芽と鉢がえ
発芽してから3~4週間たつと本葉が2枚になる。この時期が移植に適しているので、苗を丁寧に抜き2号鉢に1本ずつ植え替える。このときに育ちが悪くなるので子葉を落とさないように注意する。
用土は、堆肥1に赤土2の割合で混ぜたものを使う。品種・両親の名前を書いたラベルは忘れないでつけておく。

9.選抜
発芽後約2ヶ月後頃に本葉が7~8枚になり四季咲きのものは最初の花をつける。この花は咲かせないで摘み取り、苗の生育に力を注ぐようにしてあげる。
その後2ヶ月に1回のわりで開花するので、その中からいい苗を選別する。最後に残った優良な苗を芽接ぎしたりして新しい品種を増やす元として使う。


バラ以外にも応用できるので試してみてはいかがでしょうか?
いずれにしても、根気よく、記憶に頼らずに記録することが重要なようだ。


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