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モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

その15 フェルメール 『レースを編む女』、 ルーヴル美術館展

2009-04-05 09:07:41 | フェルメール
(写真)ルーブル美術館展看板にフェルメールが


上野国立西洋美術館で、『ルーヴル美術館展』が開催されている。
サクラ見学で上野に行ったときに、そのポスター・看板に見たことのある絵が載っていた。なんとフェルメールだった。

フェルメール部分をアップすると『レースを編む女』だった。
知らなかったな~、気づかなかったな~
と反省をし、後日の花見で見に行くことにした。

(写真)『レースを編む女』(フェルメール、1669-70年頃の作品)


待ち時間30分ということだったが、たっぷり40分は待った。

中に入ると、思い通りに進むことが出来ず、後戻りもしにくいような状況だった。
大部分の絵が、天使が空を飛んでいるような宗教画だったので、これらはほとんど遠くから肩越しで眺めてふ~んという感じでいた。

同じ17世紀頃の作品とはいえ旧教徒の国フランスと新教徒の国オランダとの絵の違いに驚き、嫌いというほど感情が刺激されるわけでもなく、見れども見えず、記憶に残らない絵だった。

『レースを編む女』は意外とはやいところにあった。しかし小さい。人を掻き分けて前に出るのが大変だ~。ここは人が動かない。

フェルメール 『レースを編む女』
(アンダーラインをクリック)
フェルメール(1632-1675)晩年の作であり、1669-1670年頃に制作された。サイズは、縦23.9×横20.5cmで現存する中で最も小さい絵だった。
フェルメール作と認められている33作品の中で、縦が100cmを越えるのはわずか4作品だけであり全体的に小さい作品が多い。しかしそれにしてもこの人ごみでは見えにくい。

ルーヴル美術館では、フェルメールの部屋があり『レースを編む女』と「天文学者」が展示されているが、部屋の大きさの割りに絵が小さいのでどこにあるのか気づくのに一瞬の間があるそうだ。

その小ささの割には、この絵は、妙に緊張感がある。
息を止めて見ないでも感じられるぐらいの緊張がある。
遠くからは見えないのに、視線が編み物をしている右手と左手の糸のありそうな場所に誘導される。
それから目を上げ、少女の顔を見るが、また少女の視線に誘導され手の間に何か見落としたものがあるかもわからないという気になり手元を見てしまう。

フェルメールの大好きなブルーと、イエローが消えていくから不思議だ。
ただあるのは、緊張感と編み物で過ぎ行く時間だけのようだ。
一心不乱は無の境地に導くというが、そんなことを会得した少女がキャンバスの中にいた。

左脇のクッションからは、白と赤の糸が飛び出ている。この赤糸を除くととたんに緊張感が弱まり良家の子女の自画像となってしまう。赤糸は編み物で失った時間やこの時間でできたコトの犠牲の様でもあり、流した血の様でもある。
この犠牲で得たものは集中力であり何ものかを成し遂げる推進力なのだろう。

編み物は、上流階級での子女のたしなみだった時代があったという。
1600年代のオランダでは、裕福な市民が増加したので、余暇の過ごし方の新しいスタイルが出来上がったのだろう。
編み物は、意識を集中させ、この時間を継続させないと出来上がらないし出来映えもよくならない。しかも家の中でやるので悪い虫がつく時間がなくなる。 この精神の集中と悪い虫予防が裕福な家庭にとって必要だったようだ。

日本でも、昭和の中ごろまではこの価値観があったようだ。バレンタインデーでレース編みのしおりをもらった時にこのことを知っていれば人生も大分変わったのだろう。今では、“安くていいものが買えるわよ!”という娘たちの一言で何も言えない親になってしまった。親だけはこの価値観をわかっていたいものだ。どこかで応用できるかもわからない。

ルーヴル美術館展には、40分待で入ったが、ほぼ30分で見終わった。
展示作品は70を超えていたが、見たいものが少なかった。だが収穫もあった。

ボタニカルアートの草分け的な絵で、「風景の見える石のアーチの中に置かれた花束」(アンブロシウス・ボスハールト、1619-1621年作)だ。
花が主役として絵画で登場したのは、ヤン・ブリューゲルの『木桶の花束』が1606年に描かれていて、これが最初ではないかと思うが、改めて取り上げることとする。



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相変わらずルーブルは、、、 (きよみどす)
2009-04-05 16:01:15
ルーブル展は,混んでいるんですね~~。ブログ友だちは土曜日に行ったら1時間待ちだったようです。
人生に一度で良いから,フランスで3,4日をかけてじっくり
見てみたいものです.出来ればうんちくを聞きながら、、、。
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きよみさん (tetsuo)
2009-04-05 16:23:54
ルーブル展が込んでいるのか、お花見客が流れているのか、両方を兼ねた人が多くなっているのか混雑していました。さらに朝まで飲んだのでくたびれました。
ルーブル、大英博物館など見るものを調べていったなら楽しいでしょうね~。
今回のように、フェルメールのついでに見ると1部屋を一瞬で見て、欲しいものなしと移動することになります。(怪盗ルパンになったつもりで絵を見るのが私の見方で、ほんの下調べです。欲しいものの。)
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ご覧になったのですね (mugu)
2009-04-05 19:34:41
小さい絵なのですね、額縁の方が大きい。
ルーブル展は混んでると聞き 行くのどうしようかと、迷ってます。
わざわざ九州から行くほどでもないかと・・・
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meguさん (tetsuo)
2009-04-05 19:57:24
どうして込んでいるんでしょうか?
展示作品からは想像できません。3点しか記憶に残らないほどでした。宗教画が好きな方は別でしょうが。
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両手に (花ひとひら)
2009-04-05 23:19:32
画像を見た一瞬、額縁と、赤い糸が目に飛び込みました。いいですね。お花も見れてフェルメールも見れて。解説してくださって何度も画像に戻って楽しんでいます。有難う御座いました。
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花ひとひらさん (tetsuo)
2009-04-06 08:46:13
額縁の方が目立つのは確かで、主役に失礼だなと思いました。というぐらい小さい絵です。いろいろ試して選んだ額縁なんでしょうね。
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Unknown (meru)
2009-04-08 07:22:38
行ってみたいと思っていましたが、思っただけで終わってしまいました。
少し残念です。
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meruさん (tetsuo)
2009-04-08 19:42:27
ルーブル展はお奨めではないです。フェルメールしかない感じです。その割りに待ち時間がかかるので不思議です。
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Unknown (Cartouche)
2009-04-09 10:05:13
お久しぶりです。
他ブログさんから入れるのですね。
こちらgooさんのブログって記事の部分が広く、広告も入ってなくて(笑)いいですね。お花の写真も一段と映えてます。
ところでルーヴル展にフェルメールも来ていたとは知りませんでした。去年まとめて見ましたが、小さいけれど、ものすごくインパクトがある絵ですよね。でも展覧会自体は・・なのですね。
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Cartoucheさん (tetsuo)
2009-04-09 16:00:04
ありがとうございます。遠路はるばる。来て見れば簡単のようですが、Yさんのほうで、ログイン者しかコメントをかけないように設定している方は(私もYではしてましたが)シャットされますので、YのID,パスワードで入りました。こちらには自由に出入りできますが、コメントなど事前に承認しないとアップできないようになってます。(コメントは事前承認なしでアップできますが、トラックバックは、事前承認してからアップです。また、広告は、表示するかしないかの選択です。)まあ、選択できるのが面倒でもいいかなと思いました。
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