彦四郎の中国生活

中国滞在記

パリ・オリンピックがあと1週間後に開幕、「排球」「足球」「兵兵球」―中国では日本のアニメ映画「排球少年」がヒット上映中

2024-07-18 12:06:49 | 滞在記

 あと1週間後の7月25日(木)から2024パリ・オリンピックの競技がフランスで開始される。(開会式は7月26日[金]・閉会式は8月11日[日])

 私は中学校では卓球部、高校ではバレーボール部、そして40歳代では地域のサッカークラブに所属していたこともあり、パリオリンピックでも特にこの三つの競技の日本代表(男・女)チームの活躍に期待をしている。

 中国語では、バレーボールは「排球(パイチョウ)」、サッカーは「足球(ズーチョウ)」、そして卓球は「兵兵球(ピンパンチョウ)」と言うが、中国でもこの3競技への関心はとても高い。

 バレーボールの国際大会である2024ネーションズリーグ(2024・5月~6月・7月1日)では、男子日本代表は決勝でフランス代表に敗れはしたが準優勝。

 石川祐希、高橋藍、西田有志らの主力中心選手だけでなく、宮浦健人など選手層の厚さを誇る代表チームとなっている。女子日本代表の活躍にも期待したい。

 中国では、日本のアニメ映画「ハイキュウ!!」が6月15日より上映が開始されていた。この映画は、日本以上に中国ではヒット上映されているようだ。(※中国での上映では「排球少年」の映画名)

 大型ショッピングモールのグッズ売り場店では、店先に「排球少年」の大型パネルが置かれてもいるし、モール街の入り口付近にも、「排球少年」の特設場が設置されているほどだった。

 この「ハイキュー」は漫画雑誌『週刊ジャンプ』に掲載されている漫画がアニメ映画化されたもの。日本の岩手県のある高校バレー部員たちの物語。

 卓球(男子・女子)日本代表の活躍にも期待したい。立ちはだかる王者、中国の高い壁。特に、女子日本代表、そして男子の張本智和選手と妹の張本美和選手、早田ひな選手や平野美宇選手たちは中国とどう渡り合うか‥。

 サッカーオリンピック日本代表(男子・女子)の活躍にも期待をしたいと思っている。最近の新聞で、「57歳カズ 現役続行—グラウンドで情熱燃やしたい」の見出し記事が掲載されていた。ポルトガル2部リーグのオリベィレンセに所属していた三浦知良選手(57)が、日本のアトレチコ鈴鹿(三重県)のチームに期限付き移籍をすることが決まったとのニュースだった。そして、つい最近の鈴鹿の試合に出場した。選手としての現役続行とは、しかもサッカーというプロ競技で‥。驚きではあるし、また我々、70歳代の高齢者からしてもある種の励みともなる。

 

 

 

 

 

 

 


ド迫力、緊迫感のある軍事演習動画報道に驚きもした

2024-07-18 03:40:55 | 滞在記

 台湾の台北から台湾海峡を挟んで、私が暮らす中国本土の福建省福州市までは約160km。台湾が実効支配している媽祖列島の最も中国本土に近い島までは、その福州市からわずか10km。また、日本の沖縄県の先島諸島の最西端の島である与那国島から台湾島までは約110km。(※福建省南部の都市・厦門(アモイ)市から、台湾が実効支配している金門島までは2kmの距離。中国政府はこの福建省と台湾本島を「両岸」と表現をしていもいる。)

 この7月3日に福州空港から離陸した関西空港行きの飛行機の機内から、4分~5分後には、媽祖諸島が眼下に見え始めた。

 2024年5月20日、台湾では民進党の頼清徳氏が台湾総統に就任した。就任式での新総統演説では、緊張関係にある中国との関係について、「卑下せず、おごらず、現状を維持する」とした上で、「中華民国(台湾)と中華人民共和国(中国)は互いに隷属しない」と述べ、「台湾は中国の一部だ」とする中国の主張を否定した。

 この就任演説に対して、「中国共産党(中共)中央台湾工作為公室/国務院台湾事務為公室」は5月22日に声明を出し記者会見を行った。(※声明の題名—台湾地区領導人"5.20"講話是‥‥"台独自白—[意味:台湾・頼総統就任演説は"台湾独立の自白"]) そして、記者会見では報道官が頼総統の就任演説内容を"台湾独立の自白"として非難した。そして、翌日の23日・24日の二日間にわたって台湾を取り囲むようにしての大規模軍事演習を行った。

 私が驚いたのは、中国のアパートで5月24日にスマホで視聴した、この軍事演習の様子を報道している中国のインターネットニュース動画のド迫力と緊迫感だった。(※音声や発射音、バックに流れる映画「ゴジラ」のテーマ曲のようなもの。)

 中国の艦艇から間断なく発射されるミサイルや艦砲射撃などの光景は、これが軍事訓練なのかと驚くぐらい迫力と緊張感がただよう映像だった。(※このミサイル発射や艦砲射撃などの動画映像は、今回の軍事訓練で実際に行われたものかどうかはわからない。他の時に実弾、ミサイル演習を行った時の映像を放映している可能性もある。しかし、このインターネットニュースを視聴した中国国民は、これが23・24日に行われた軍事演習のものだと思う可能性は大きいだろう。)

 この中国軍による軍事演習について、日本のテレビ報道では「中国軍 台湾周辺で軍事演習開始」と題されて報道されていた。報道のテレップには次のような説明が‥。「頼清徳新総統への対抗措置を示唆 中国軍 台湾周辺で軍事演習開始」「台湾独立勢力に対する懲戒であり 外部勢力の干渉・挑発に対する深刻な警告」「軍事演習は二日間 台湾海峡や台湾北部・南部・東部、金門島・媽祖島周辺で実施」「陸軍・海軍・空軍・ロケット軍が参加 連合部隊の実戦能力をテスト」(※この日本のテレビ報道では、中国でスマホ視聴したようなミサイル発射などの映像などはいっさい流れていなかった。)

 この軍事演習に対し、台湾国防部は、「地域の平和と安定を乱す 不合理な挑発行為に遺憾の意を表明する」との声明を出した。これに対し中国国防部報道官は、「台湾独立という挑発の度に対抗措置はさらに一歩進む。これは、祖国の完全な統一まで続く」との声明を発表した。

■2022年、アメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問。その際に、台湾を取り囲むようにして中国軍は軍事演習を行った。この時、おそらく福建省だろうと思われる中国大陸からの、ミサイルの発射実地訓練なども行われていた。(※今回は行われなかったようだ。ただ今回は、新たに金門島や媽祖列島周辺での軍事演習が行われたと報道された。)

 2005年頃から日本と中国双方の団体が取り組んでいる「日中共同世論調査」は、2023年度に第19回目となった。(※日本の民間非営利団体「言論NPO」と中国の「中国国際出版団体」が行っている共同世論調査)

  2022年度(第18回目)は、7月~9月に、18歳以上の日本人約1000人と中国人約1500人から回答を得てその調査結果を発表。2022年度には初めて、調査アンケート内容として「台湾海峡で軍事紛争があると思うか」という項目の調査が実施された。その結果は、➀「将来的には起きると思う」との回答➡日本34.1%、中国40.5% ②「数年内に起こると思う」との回答➡日本0.4%、中国16.2% ③「起こらないと思う」との回答➡日本9.0%、中国29.9% ④「わからない」➡日本46.3%、中国12.8% という結果だった。

 この世論調査の結果をみると、➀の「将来的に起きる」や②「数年内に起きる」と回答した、いわゆる「台湾有事」は起きると考えている人の①②の合計割合は、日本が34.5%、中国が56.7%となっていた。

 このような台湾を巡る問題や、ロシア・北朝鮮の軍事的同盟強化など、東アジアの政治的・軍事的緊張関係が続く中、5月27日に「日本・中国・韓国首脳」(日本:岸田首相、中国:李首相、韓国:尹大統領)による「日中韓サミット」が4年半ぶりに韓国のソウルで開催された。

 6月上旬、台湾の頼総統は、インドの総選挙での勝利を、モディ首相に対しX(旧ツイッター)で祝った。これに対しモディ首相は頼総統に対し、「台湾とより緊密な関係を築くことを楽しみにしている」と直接返信し、謝意を表明した。これに対し中国外交部の毛寧報道官は6月6日の定例記者会見で、「インド側に抗議した」と説明。「インドは、台湾当局の政治的たくらみを見極め、警戒し、抵抗すべきだ」と述べた。

 台湾の頼清徳新総統就任式のあった5月20日の二日前、5月18日に日本の東京都内のホテルで大阪府の吉村洋文知事と台湾の台北市市長の蒋万安市長が面会をしている。蒋市長は親中国を党是としている現在の台湾国民党の若きホープとも目されている人物(蒋介石のひ孫)だ。頼総統就任式の二日前というタイミングだが、吉村氏が蒋氏と会って懇談したり写真を撮ったりするのは、それはそれで必要なことだとは思う‥。

 しかし、ツーショットの写真での吉村氏の親指を立ててのポーズはいかがなものかと思う。そこまでして、蒋氏との会談をアピールする必要があるのだろうか‥。何かあさましい感すらする。東アジアでの政治的問題を踏まえたうえでの、国際政治見識や感覚を、この人はどれくらいもっているのだろうか‥。かなりの浅はかさを感じてしまう人物だ。何も考えずに親指ツーショットをしているのだろうなあ‥。

 

 

 

 


中国の20・30代を中心に、衣食住でのライフスタイルがこの10年間で大きく変化—好まれる「日系元素」(ユニクロ・無印・ニトリ、日系コンビニ)

2024-07-14 06:11:33 | 滞在記

 アパートから大学までの通勤の時にバスで通る倉山大型商業店エリア。このエリアには「倉山万達(ワンダ)ショッピングモール」など3つのショッピングモールが隣接して立ち並ぶ。数年前にこのエリアにも地下鉄駅ができ、交通の利便性も向上し、多くの人たちがこれらのショッピングモールに来ている。

 (※「万達(ワンダ)」は、日本で言えば「イオン」のようなショッピングモール。中国ではこの「万達」が自分たちが暮らす都市にオープンすれば、発展する都市の象徴みたいに思われていた。福州市では2箇所に2015年頃に開店した。)

 日本でもショッピングモールに必ずある三つの店が「ユニクロ・無印・ニトリ」だが、今、中国福建省福州市のこの大型商業施設のショッピングモール街にも「ユニクロ・無印・ニトリ」の日本系(日系)店舗が進出している。そして、最近、市内でよく見かける日系コンビニの「セブンイレブン」も。この6月下旬、これらの日系店舗に、衣服や座布団などを探しに立ち寄ってみた。

 「ユニクロ」と「無印良品」はかなり早くからこのショッピングモール街に開店していたようだが、「ニトリ」は今年の2024年4月にオープンしたばかりだとのこと。ここ数カ月、いろいろな店で探していた日本式の座布団をようやくこの「ニトリ」で見つけることができた。

 中国でのこれらの日系店舗の中国語表記は次の通りとなっている。「➀ファミリーマート➡全家便利店、②ローソン➡LAWSON  夢森、③セブンイレブン➡7-ELEVEN便利店、④ユニクロ➡UNIQLO優衣庫、⑤無印良品➡MUJI無印、⑥ニトリ➡NITORI宜得利家居」

 この10年余り、中国で暮らしていて、最近は私の生活も日本系の商品を買って消費できるのでとても助かってる。特にセブンイレブン(※福州での日系コンビニはほとんどセブンイレブン)では、日本のせんべいやチョコレートなどのお菓子が日常的に買えるので、わざわざ日本で買ってキャリーバックに詰めて中国に持っていかなくてもよくなった。

■特にこの10年間で思うことは、20代・30代の若い人たちの、衣食住に関する生活スタイルの好みの変化。要するにシンプルさを好むようになってきたという大きな変化かと思う。中国人の多くは、日本ブランドに対し、簡素、シンプル、自由、快適、健康といったイメージを持っている。このような要素は「日系元素」と呼ばれ、特に若い世代のライフスタイルを語る上で欠かせないワードとなっている。中国の経済に大きな影響を与える若い都市生活者ほど「日系元素」を好む傾向が強まっている。

 日系元素の象徴とも言える「ユニクロ」と「無印」の両ブランド、そして近年は、それに「ニトリ」が加わった。前号のブログで紹介した「日本食ブーム」とともに、衣食住にわたってこの「日系元素」が若い世代を中心の日常生活に定着してきた感がある。

 それらの日系店舗の御三家「ユニクロ・無印・ニトリ」と日系コンビニ御三家の、中国での近年の進出状況はどのようになっているのか。まず、日系コンビニでは現在(22年~24年)、①ローソン6330店舗、②セブンイレブン3906店舗、③ファミリーマート2707店舗となっている。私が暮らす福州市に日本のコンビニが初めて開店したのが2018年頃だった。セブンイレブンの福州1号店だった。そして現在は、市内のいたるところでセブンイレブンの店舗がみられるようになっている。

 このように中国全土で店舗が増えている日系コンビニだが、中国資本のコンビニも急増している。代表的なものとしてここ福州では「六意」や「万喜」などがある。(※私も「六意」では日常的によく買い物をする。このコンビニは、日系コンビニに最も商品が近く、かつ、中国の商品も多い。)そして現在、中国の大都市で最もコンビニ激戦区(コンビニの増加率の発展指数)トップ都市となっているのが福建省にある観光都市「厦門(アモイ)市」。最近、日系コンビニのローソンが中国系コンビニの買収をするなどのニュースも話題となった。

 そして、「衣住」の日本の御三家「ユニクロ・ニトリ・無印」の中国での現在の店舗進出状況はというと‥。➀ユニクロ約900店舗、②無印約350店舗、③ニトリ100店舗となっている。このなかで、特に➂「ニトリ」が今後は、店舗数をより増加することが予測される。(※「ニトリ」の店に行ってみたら、日本でもお馴染みのCM「お値段以上、ニトリ♬」が、同じメロディでの中国語バージョンが店内に流れていた。)

 「ユニクロ」のシンプルな衣服はもう、中国の若い世代に定着してきている感がある。それほど、中国でも大きな衣服革命的な存在となっている。一方の「無印良品」は衣服・生活雑貨・ベットなど衣住の二分野の商品を扱っている。だが、ユニクロと比べてちょっと苦戦しているようだ。

 その原因の一つに「無印良品」のパクリとも言われた、中国企業系の「メイソウ」の存在だ。この店舗は現在、中国国内に3378店舗もある。店名には、「メイソウ」と日本語のカタカナ表記がされ、さらに横には「MINI SOU 名創優品」と日本語漢字で書かれた店名が併記されている。まあ、日本の100円ショップの「ダイソーDAISO」と「無印良品」かけ合わせたような店名と品揃え。(※この店の店名や店内内装、商品開発などは日本人デザイナーなどが行った。)

 福州市内では2015年ころに宝龍(バオロン)ショッピングモールで1号店がオープンしていた。このころ、この「メイソウ」のショッピング紙袋を持つのが中国の若い人たちに流行っていて、この紙バックを持っている人は「センス」の良い人と思われる風潮がみられていた。(使いすぎてかなりしわだらけの紙袋でも持っているいるがよく見られた。)

 日本のテレビ報道でも、「ニトリ 中国で100店舗達成」のニュースがこの3月下旬に報道されていた。(※私の中国の大学での学生で、日本の立命館大学大学院に留学した学生のうち、二人がニトリに就職している。一人はニトリの上海店舗にいて、もう一人が日本国内のニトリ勤務。二人とも幹部候補となっているようだ。)

 今年の4月の福州日本企業会定例会では、「日本貿易振興機構(JETRO/ジェトロ)」の中国広州支所の職員が20分ほどの「中国における日本企業の動向」についてミニ講演を行った。その講演の内容や最近のさまざまな報道を考えていくと、中国での「日本企業」の動向は次のようになる。

①中国進出日系企業の拠点数は、2010年代から最近に至るまで約3万強で推移してきている。この数は概(おおむ)ね、日系企業が世界に進出している拠点数の3分の1を占めている。中国での拠点数が多い地域は、上海、江蘇省、広州・深圳、大連、天津、青島などの東シナ海沿岸地域、そして北京や上海に近い浙江省や安徽省。

②2020年以降、中国における外資系企業の撤退、中国離れと呼ばれる動きが始まり(※いろいろな要因から)現在に至っている。日系企業の拠点数としては、2020年から24年の間で2500拠点が撤退している。一方で1500拠点が新たに進出している。撤退企業として多いのが、自動車や電化製品などの製造業関連。一方で新たな進出が目立つのが、非製造業関連のサービス業や小売り拠点店舗(ニトリ、コンビニなど)など。

③2020年までの世界的に「世界の工場」という中国での生産拠点から、「世界最大の市場」というグローバルマーケットへと世界の企業から見ての変容を遂げつつあるのが、世界的にみた現代の中国。

 

 

 

 

 

 


再び日本食が中国では人気となり、人々の日常食の一つとなっている感がある―最近できたらしい日本料理店に行くと‥それは日本にもないような素晴らしい店だった

2024-07-12 08:54:03 | 滞在記

 2013年9月から中国福建省福州市の二つの大学に赴任して、時々は市内に数軒ほどしかなかった日本料理店に行って食事をしたり、学生たちや友人、知人たちと乾杯🍻🥂の会食をしたりもしてきた。2019年12月頃までは市内にあった日本料理店や日本式料理食堂、居酒屋は、私が知る限り市内に10店舗ほど(「古都」「上野一番」「熊本家」「吉野家」など)だった。その中で、日系企業駐在員など、最も日本人の多くが行きつけの店にしていたのが、日本料理店「古都」。

 2020年1月から始まった新型コロナ感染パンデミック問題で、私は市内にあるアパートは3年間、家賃は毎月電子決済で日本から送金して借りていたが、中国に戻ることは難しく、日本からのオンライン授業を行い続けた。2023年3月に中国に戻って驚いたことの一つに、日本料理店や日本式料理食堂や居酒屋が激増していたことだった。日本食、日本の和食、日本料理が大人気になっていたのだ。特に「日本式すき焼き」はどの店に行っても人気が高かった。アパート近くにも「深夜食堂」という、日本のドラマの影響のある店名の日本式居酒屋もできていた。

 ところが、昨年の2023年7月から9月にかけて、中国政府は日本の福島原発の処理水排出を巡る問題で、日本を強く批判することとなり、日本食の安全性なども風評被害が中国で大きく広まり、日本料理店や食堂、居酒屋は中国人の足が遠のき、店主は困り果てることとなった。そして、それから半年後の2024年3月ころになると、日本料理関連の店には、客足がもとに完全に戻ったという状況となり、再び日本式料理の人気が再燃しているという感がある。

 このことを中国人に聞くと、「もう、中国の人々のほとんどは、福島のことなんか完全に忘れていますわ」とのことだった。そして、今、日本式の料理の人気が昨年の人気の高まりの時以上に高まっているとのことで、中国人の人にとっては特別な料理ではなく、家族や友人で定期的に食べる食事の一環になってきている(日本式料理が食事の定番化してきてもいる)ようにも思われた。

 ここにも、この10年間で、衣食住における和式(日本式)への日常化というか関心の高まりというか、好みの変化というか、そのようなことが20代から30代にかけての若い世代を中心に中国で起きていることを実感もする。(※衣食住の衣住については次号のブログで紹介したい。)

 日本帰国2日前の、この7月1日(月)の夜、最近できたらしい福州市内の新しい日本料理店に、王さんに誘われて行くこととなった。アパートからライドシェアタクシー(中国ではもうこれが一般的)で20分ほどして、王さんとその店に午後7時過ぎに到着した。店の外観を見て驚いた。中国のここ福州の伝統的な立派な民家(建物)を買い取って料理店にしたような門構えと周囲の白壁の塀。店名は「食べ物家」と日本語で書かれている。門の上の木々がライトアップされていて幻想的な雰囲気がとても良い。

 店内に入ると、中国の伝統的な建築物を生かしながらも、シンプル簡素な和風の趣(おもむき)が随所に感じられる。これまでの中国の飲食店にはない板敷の床。日本の掘り炬燵(こたつ)のように足が広く伸ばせて座れるテーブル席。席と席を区切る木製のシンプルな衝立(ついたて)。店の天井から吊るされた丸く白ぽい提灯のような飾り灯り。接客にあたる店員さんのどこか日本の袴(はかま)っぽい衣装。

 このような店内の内装や衣装は、中国の飲食店には見られないものだった。まあなんというか、ほとんど日本の居酒屋チェーン店の「魚民」のような雰囲気と、中国の伝統的な建物がうまく融合した店内だった。

 しばらくして、王さんのフィアンセ(今年の1月に婚約)した甘(かん)さんがやってきた。甘さんの大好きなすき焼きをはじめとして10品ほどの料理を注文。どの料理を食べても、日本の「魚民」で注文する料理と味はよく似ていて、特に中国人の好みに味付けをアレンジしているということもない。実は、甘さんは広告会社に勤めていて、福州市内の飲食店をインターネット(携帯電話などで視聴できる)で紹介するような仕事をしているとのこと。この「食べ物屋」も仕事で取材しネット広告を作成したとのことだった。(※この店「食べ物屋」の店主・オーナーは中国人。)

 2階に行くと、日本式の簡素な生け花がさりげなく置かれていた。

 2階は個室が数部屋あり、これも日本の「魚民」に来ているような雰囲気の個室。店内の広い1階には、超大型スクリーンテレビが置かれていた。音量は小さく、前には一人でも利用できるカウンター席があり、テレビ画面に映る景色を眺めて食事をしたり、時には、スポーツ競技中継を見たりして食事を楽しめるようになっていた。7月1日のこの日は、ヨーロッパサッカー選手権が中継されていた。(※この日は月曜日の平日にも関わらす、たくさんの客で店内は賑わっていた。)

 まあ、この日初めて来てみたこの「食べ物屋」のように日本料理店は、その素晴らしさに驚いたが、私はまだこのような店を日本では見たことがなかった。中国ではこれから増えていくのかと思われた。

 午後9時頃に店を出て、歩いて5分ほどの「三坊七巷」の伝統的古街に3人で行くと、たくさんの人々が通りを歩いていた。この日から中国の小学・中学・高校は夏休みに入ったこともあるのか、月曜日の夜にもかかわらず、親子連れの人たちも多い。中国の人たちにとっての日常では、午後9時頃はまだ宵の口(よいのくち)で、午後10時半ころまでは街中は人でにぎわっている。

 

 


「中国新文化運動と中国共産党創立(紅船起航)」に関する展示と「覚醒年代」という中国で大ヒットした歴史ドラマのこと

2024-07-11 11:58:38 | 滞在記

 6月28日(金)の午後、中国福建省福州市内の伝統的建築群エリアの三坊七巷にジャスミン茶を買いに行った時、エリア内にある何箇所かの展示用建物の一つで、中国共産党が創設される時代の「新文化運動」に関する展示会が開催されていた。

 1910年代から20年代にかけて、中国では雑誌『新青年』などが刊行され、北京や上海などを中心に「新文化運動」が起きた。そして、1921年には中国共産党が創設されることにもなる。それらの中心になった重要人物が、陳独秀(ちん・どくしゅう)や李大釗(り・だいしょう)、そして魯迅(ろじん)や蔡元培(さい・げんばい)、胡適(こ・てき)たち。特に、陳独秀や李大釗は中国共産党創立の中人人物となった。(※魯迅以外は、日本では知名度はほとんどないが、中国でも2020年まではあまり知られていなかったかもしれない。)

 私はこの「紅船起航」と題された、特に「新文化運動」を中心とした展示を興味深く見ることとなった。おそらく、中国の人々にとってもこの展示は興味深く、関心をもって見る人が多かったのではないかと思う。若い人の参観者も多かった。なぜ現在、この展示を多くの中国人が興味をもつかというと、2021年に中国中央テレビ局で放映された歴史ドラマ「覚醒年代(かくせいねんだい)」(全43話)を、老若男女、中国の多くの人々が視聴し大反響を呼んだのだった。そのドラマの中心人物がこの「新文化運動」や「中国共産党創立」の中心を担った人たちだからだ。

 このドラマによって陳独秀や李大釗、蔡元培、胡適などの名前は広く中国の人たちにとっても親しみと共に知名度が高まることとなっている。

 陳独秀、李大釗、魯迅、そして、蔡元培、胡適、毛沢東などなど、彼らの実際の写真と略歴などが記されている展示パネル。

 日本でも少し知名度のある郭沫若(かく・まつじゃく)などの写真パネルも展示されていた。(※私は数年前に北京に行った際に、郭沫若が暮らしていた邸宅に行ったことがあった。また、毛沢東が生まれ育った実家にも外国人教員研修で2013年に行ったことがあった。)

    中国の人たちも、「覚醒年代」のドラマでの中心人物たちを演じる俳優たちの顔を思い浮かべながら、展示での本物の写真を見ながら、「ああ、実際の人はこんな顔をしていたのか‥」と、感慨深くこの展示を見ることとなったのかと思う。

 この「紅船起航—新文化運動」のパネル展示を一通り見終わって、三坊七巷の小さな雑貨店(書籍もおいてある)に入ると、習近平著作集がずらりと店の前列に並べられていた。(※習近平国家主席は私より一歳年下の1953年生まれで、今年は71歳になるかと思う。)

■昨年2023年3月に3年ぶりに中国に戻り、このCCTV歴史ドラマ『覚醒年代』(全43回)を視聴した。このドラマは、中国共産党創立100周年を記念して作成されたドラマで、2021年2月から放送が始まったようだ。中国国内のインターネットを通じての視聴なので、もちろん中国語なのだが、字幕で中国語も併記されるので、会話の内容はかなり理解できた。

 このドラマはとても面白く、また、そんなに内容が硬くもなく、歴史ドラマとしてとても視聴しやすかった。また、人気俳優や若い俳優たちも多く、このドラマが中国の若者たちにも大きな支持を得た理由もわかる。とにかく見ていてあきないほど面白いドラマだった。近年では、中国ドラマ史上、視聴率の高さもそうだが、中国中央テレビ(CCTV)としては大成功のドラマ制作だったかと思われる。

 第1回目には、日本の早稲田大学留学中の陳独秀、李大釗などの場面が描かれていた。陳独秀の息子たちやガールフレンドなどのドラマでの描かれかたも、若者たちの支持を受けた要因ともなった。私は個人的には、このドラマで李大釗と北京大学の校長(学長)の蔡元培が好きだ。ちなみに、毛沢東は李大釗のつてで、北京大学図書館の職員に迎えられていて、李を「私の先生」として敬慕していたようすがドラマで描かれている。

 「新文化運動」の中心地となった北京大学。陳独秀は文科長(文学部部長)として迎えられ、李大釗や胡適らも教授として教鞭をとる。ドラマでの北京大学校長を演じた人と、実際の蔡元培とはとても良く似ていた。

 1919年、「五四運動」が北京大学の学生たちを中心として巻き起こった。この運動は、大規模な反日・反帝国主義、反封建主義の抵抗運動。直接的には、日本の「対中21箇条要求」(日本の中国への軍事力を背景としてた帝国主義的、植民地主義的要求)に対する抗議行動だった。これらもドラマでは描かれた。

■このドラマでは、創立100周年を迎える中国共産党創立(1921年)までの1910年からの10年間余り、そして創立に至る時代、そしてその後の10年間余り、つまり20年間余りを中心に、中国共産党の黎明の時代を描いたドラマとなっている。2020年1月から始まった新型コロナウイルス感染拡大、それにともなう中国国内での超厳格な「ゼロコロナ政策」。都市封鎖などにより中国国民の多くは自宅での生活を余儀なくされることも多く、2021年2月から始まった「覚醒年代」は、ドラマの面白さとともに高い視聴率得ることともなった。

■1921年7月に中国共産党は創立された。第1代委員長は陳独秀。創立メンバーは57人(58人という説もある)だが、そのうち3分の1余りのメンバーは、日本に留学経験のある人たちだった。当時、中国からの日本留学生が最も多かったのが早稲田大学。早稲田は1899年に清国留学生部を設置するなど、中国からの留学生受け入れ体制が整ってもいたようだ。このこともあり、現在の中国の大学生にとって、有名で留学したい大学の筆頭は早稲田大学、次いで東京大学となっている。

■李大釗は、早稲田大学留学時代に、日本の社会主義者だった安倍磯雄や、京都帝国大学でマルクス経済学の研究を行っていた河上肇らを信奉。かれらの影響を強く受け、彼らの著作を日本語で読み漁ったといわれている。これらを歴史的にみると、➀マルクス➡➁河上肇➡③李大釗➡④毛沢東➡‥‥‥‥‥➡習近平などの流れとなってもいるのかもしれない。

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 2021年7月、中国は「中国共産党創立100周年」を迎え、全国各地で行事が行われた。そして、2024年6月30日、中国共産党は昨年末(2023年12月末)時点での党員数が9918万5千人になったと発表した。1億人の党員数が目前となっているようだ。(※党員で最も多い年齢層は61歳以上の2787万2千人。30歳以下の党員は1241万2千人。女性党員の全体の割合は約3割。)

 2023年4月、閩江大学の教室でのようす。教室の後ろの小さな黒板には、「学習 二十大 青春向未来」「学習貫徹二十大 奮闘譜写 新編章」「学習 二十大」「喜迎二十大 永遠党走」などの標語スローガンが書かれてもいる。このような光景は中国のどこの大学でも見られるようだ。(※「二十大」とは、2022年10月に開催された「中国共産党第二十回党大会」のこと。)