彦四郎の中国生活

中国滞在記

紀伊山地・熊野を巡る❷—日本一ともいわれる"丸山千枚田"①―稲穂が黄金色に色づき始めていた

2020-08-24 05:27:58 | 滞在記

 赤木城跡から車で15分ほどのところに、日本一ともいわれる棚田「丸山千枚田」の光景が広がっていた。最もよく棚田全体が見渡せる展望処のようなところに着く。時刻はもう午後4時半をまわっていた。

 丸山千枚田は、三重県熊野市紀和町丸山地区の山の斜面に幾重にも描かれた棚田で、日本の棚田百選にも選ばれている。この棚田がいつ頃造成されたのかは不明のようだが、関ヶ原の戦いのあった翌年の1601年(慶長6年)にはすでに2204枚の田があったという記録があるようだ。しかしながら、昭和40年代半ばから始まった稲作転換対策による杉の植林や昭和50年代以降の過疎・高齢化による耕作放棄地の増加によって、1980年代後半の平成初期には530枚までに減少してしまったという。

 地元住民は、「自分たちの代でこの貴重な文化遺産を無くすわけにはいかない。素晴らしい景観と農耕文化を後世に残し伝えていかなければならない。」と立ち上がり、1990年代はじめの平成5年に丸山地区住民全員による丸山千枚田保存会を結成し、丸山千枚田の復元と保存活動が始まった。保存会結成後4年間で810枚の田の復元に成功し、1340枚という日本でも最大規模の枚数を誇る棚田となったという。平成8年からは、「千枚田を舞台に都市住民との交流を図り、一緒になって千枚田を守っていこうという趣旨のもと、千枚田の一部(棚田全体7.2haのうちの1.6ha)を利用して「棚田オーナー制度」を始めた。毎年100組を超えるオーナー申し込みがあるという。

  展望処に立って丸山千枚田を見渡す。稲穂が黄金色に色づき始めていた。3週間後の9月中旬ころから稲刈りが始まるようだ。

 大岩とよばれる大きな岩のそばに数体の案山子(かかし)が立っていた。時刻は5時になっていた。展望処に「京都ナンバー」の車が駐車していたので、その車に乗り込もうとしている夫婦らしい人に「これから京都に帰られるんですか?私も京都なんですが、今日 日帰りの予定で来たんですが、ここまで来るのにものすごい時間がかかってしまい、これから帰るのは深夜になってしまい もと来た道を帰るのは大変だなあ どの道がいいんだろうと心配になっているんですが‥‥」と話しかけてみた。

 そうすると京都ナンバーの人は、「ああ、京都から24号線と169号線でひたすら南下してきたんですか。そこを真夜中に戻るのは、そりゃあ大変ですわ。真っ暗闇のカーブ連続で危険でっせ。私らは京都の長岡京市ですが、これから帰ります。高速の紀勢道路と伊勢道路、そして新名神道路、迷信道路を利用したら4時間で長岡京に着きますわ。これが一番近いでっせ。高速代金で5000円ほどかかりますけど。ここから一番近い尾鷲南ICから乗ったらいいんですわ。そうしなはれ。」とのアドバイスをしてくれて、車に乗り込み発車していった。

 延々と広がる棚田を見ながら、「これからどうしよう?」と不安は募る。まあ、もと来た道を戻るのも、他の十津川村を通る168号線を通るのも危険すぎてやめた方が良いということはわかってきた。睡魔を振り払い途中休憩しながら事故なく京都に戻れたとしても、自宅に着けるのは翌朝の2時をまわるだろう。「高速道路で帰るべきか?!それとも宿を探してこの近くで一泊するか?!」

 高速料金が5000円かかるとの話だったので、「それなら宿をとって泊まったほうが良いかも」と思い始めた。この状況を妻に「宿を探して泊まるかも」と電話する。私の車にナビはついていないので、紙の地図が頼り。暗くなったら地図も見えなくなる。ここから高速道路の尾鷲南ICまで行くのも道に迷って難しいかも。携帯電話も3Gのガラ系携帯電話でスマホではないので、宿をインターネットで検索して探すこともできない。どうしよう?! もう宿を直接探すしかないと思った。

 そんな不安を抱えながら、棚田を見て廻った。

 棚田群の下の方に車で移動する。大岩のあたりで車を停めてしばし棚田を見る。

 棚田群の最も低い場所に移動し棚田を見あげる。すごいなあと感嘆する。

 観光案内の地図やデジカメで撮った紀和町の看板に載っていた数軒の宿。このうち最も近い北山川沿いの「瀞流荘」という宿を探して行ってみることにした。もし宿がとれなかったら、車の中で寝るかと思ってもきた。時刻は5時半になっていた。まだ明るい。少し道に迷いながら午後6時ころに「瀞流荘」に到着。新しくきれいで大きな温泉旅館ホテルだった。露天風呂もあるらしい。平日だがたくさんの車がホテルの駐車場に以外にも停まっている。宿泊客だけでなく、温泉利用だけの人の車も多いようだ。

 フロントで「一人ですが今晩宿泊できますか?」と聞いてみる。「少々お待ちください」との返事。「大丈夫です。ちょっと時間が遅いのでご夕食の提供はできませんが、朝食はご用意できます」とのこと。「料金は?」と聞くと、「朝食付きの場合は1万300円になります」とのこと。宿がとれたので安心感が広がった。妻に宿が取れたことを連絡する。

 旅館ホテルの温泉に入る。暑い一日だったが、夕方の露天風呂は川風が吹いて気持ちがよかった。露天風呂から熊野川と合流する北山川の瀞峡(どろきょう)の白い小石の川原が見渡せた。ホテル食堂で1000円のカツ丼を注文し夕食。午後9時すぎには眠りについた。一日が終わった。翌日は朝食前の早朝からもう一度、赤木城と丸山千枚田に行くことにした。山間の霧に包まれた城跡や棚田を見ることができるかもしれない。

 

 

 

 


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