彦四郎の中国生活

中国滞在記

内館牧子「老後小説三部作」、痛快な"小説"がドラマや映画に—『終わった人』・『今度生まれたら』・『すぐ死ぬんだから』

2022-07-31 09:41:20 | 滞在記

 内館牧子の「老後小説三部作」である、『終わった人』・『すぐ死ぬんだから』・『今度生まれたら』が、映画化されたりNHKBSプレミアムでドラマ化され、多くの反響を呼んでいる。人生100年時代とも言われ始めて数年が経過する日本社会。2021年の日本人の平均寿命は、男性が81歳、女性が87歳と、世界で最も平均寿命が高い国として知られている。(世界の2021年平均寿命は、男性70歳・女性75歳。男女平均73歳。)

 『終わった人』は、63歳で定年を迎え、40年間にわたったサラリーマン人生を終えた定年後の人生を終えた男性の話。2015年に発刊され、2018年に文庫本化された。2015年に発刊されたものを読んだ。なにか、主人公に共感しながらも、身につまされるような話だった。まさに、「亭主元気で留守がいい」を彷彿させる話でもあった。そして、読んでいて面白かった。60代を生きる男性の話。

 『すぐ死ぬんだから』は、78歳の女性の話。2018年に発刊され、2021年に文庫本化された。この本を私はつい最近に読み終えた。「痛快、面白い、共感もできる」、そんな小説だった。老いと向き合うが、美しさを少しでも保ちたいという切なる願いが共感できる。

 そして、『今度生まれたら』は、70歳となった女性の話。2020年に発刊され、文庫本化はまだされてはいない。

 この「老後小説三部作」を書いた内館牧子さんは、1948年生まれの現在73歳。これまでに結婚したことがあるのかどうかは分からないが、おそらく結婚したことはないだろうとみられている。結婚したことがないとすれば、この「老後小説三部作」で描かれている夫と妻の日常生活の描写は、どこから文章が生まれてきたのだろうと、驚嘆もする‥。絶妙な描写なのだ。

 『今度生まれたら』のドラマ放映が、2022年5月8日から始まったので、毎回熱心に視聴した。主人公の70歳の女性を松坂慶子が演じていた。夫役は風間杜夫。全7話は6月19日に最終話となった。

 主人公の姉(役・藤田弓子)の夫(役・平田満)が他の女性(役・ジュディ・オング)を好きになり、妻のもとを去っていく場面もあった。高齢者女性の心の揺れが、これでもかというくらいに描かれていた。しかも、痛快で視聴していて面白いのである。主人公役の松坂慶子や風間杜夫もまた適役だ。自分の元を去っていく、藤田弓子の哀愁の表情、平田満のまじめそうな人柄と、妻への申し訳なさそうな表情などなど‥。

 最終話、主人公がふとつぶやく、「なにかを成し遂げることもなく、平々凡々と、でもそれなりの苦労や喜びもあった、普通の人生もまた、それはそれなりによいのかも‥」の台詞が心に何か残った。私も最近、つとにそう思え日々が多くもなってきているからだ。「不完全燃焼は心に重くありながらも、平凡がいいのかも‥」と。

 『終わった人』は、2018年に映画化され上映されたようだが、私はまだその映画は見ていない。舘ひろしが主人公だ。

 定年後の第二の人生に入り、「夢なし、仕事なし、趣味なし、家(居所)なし」に直面する主人公。妻はまだ生き生きと働いている。上映初日、妻役の黒木瞳さんや広末涼子さんとともに挨拶にたった舘ひろしは、「終わらない人になるための秘訣は何でしょうか?」の質問に、「女性好きを続けることかな‥」と一言。まあ「正鵠を射る」の一言にも思える。

 『すぐ死ぬんだから』は2018年にNHKBSプレミアムでテレビドラマ化されていたようだ。主演は三田佳子さん。ドラマの主人公の年齢と同じく、2020年には三田佳子さんも78歳だつた。このドラマでの三田さんは適役だったようだ。夫役は小野武彦さん。今年8月には、舞台でこの『すぐ死ぬんだから』が上演される。主人公役は泉ピンコさん、夫役は村田雅浩さん。

 この私も、3週間後の8月22日、世界男性平均寿命の70歳(古希)となる。もう、このあたりでいいか‥という感もするが、あと5〜6年は生きてみるかとも‥。混沌とした時代に入った世界の行く末がとても気がかりなのだ。2027年、世界はどうなっているだろうか。孫の寛太は、2027年には7歳になっている。

 

 

 


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