コロナによる不安が世界を覆い、ポピュリズム(大衆扇動主義)や全体主義が横行する現代の世界は、随所に国民間の分断が顔をのぞかせている。アメリカでの大統領選挙を巡る国民間の分断なども、2020年から2021年にかけて露わになってきた国民間の分断だ。そのような時に、私たち日本では東京五輪を迎える。
開催か、延期か、中止か。世論は割れている。それに追い打ちをかけるかのように、コロナの第四波感染拡大が現実のものとなってきている。この四波は変異種の感染者急増をともない、1~3波と比べものにならないような感染拡大も不安視されている。こんな中、100日後に迫った東京五輪。この夏に五輪を開く意義を改めて国民的に考え、意義を確認していくことが大切なことだと思う。私たちの国・日本の人々に、世界の人々に、「東京からどんなメッセージを打ち出せるのか。その理念が多くの人々を納得させられるか。後世に夢を伝えられるか。」この100日間をかけて模索していくことになる。
3月25日から始まった東京五輪・パラリンピック聖火リレー。121日間をかけて7月23日に東京・国立競技場に到着するまでに約1万人の聖火ランナーたちによって日本全国をリレーされる。現在91人の聖火リレーランナーの辞退者が出ているが、そのうち12人は柔道の古賀稔彦さんのような死去のための辞退。そして、半分ほどの約40人ほどが残念ながら著名人と呼ばれている人たちだ。辞退の理由の多くがスケジュールが合わなくなったというもの。
「○○のスケジュールとぶつかってしまって」と、やむにやまれぬ具体的な理由を述べている人もいる。まあ、それはしかたがないかとも納得できる。しかし、ただ「スケジュールが合わなくて」とだけのぼかした理由の人も多い。納得させられる辞退理由を述べられない人の方が多いようだ。もうかなり以前から聖火リレーの日や時間は決まっていたはずなのにいまさら辞退とは‥とは思えるが。
聖火リレーの出発地となった福島県内を走る予定だった著名人で、サッカー女子日本代表だった川澄奈穂美さんの場合は「アメリカ在住で、日本に帰国すると2週間の隔離が必要のため、スケジュール調整ができなくなった」とのこと。これは納得できる。同じく、なでしこジャパンの澤穂希さんは「耳の三半規管の病気のため」。三半規管が不調だと走りが難しいから、これも理解できる。
同じく福島県内の走る予定だったTOKIO(トキオ)。「スケジュールが合わない」とのこと。「鉄腕ダッシュ村」であれほど長年にわたり世話になった福島県なのに辞退かよ‥と思う。昨年のNHK朝の連続テレビ小説ドラマで福島県出身の作曲家・古関裕而役を演じた俳優の窪田正孝も単なる「スケジュールの問題で」との理由で辞退。歌舞伎俳優の香川照之にいたっては、辞退の理由も公表していない。
長年にわたりNHKの国民的番組の一つ「鶴瓶に乾杯」で日本全国にお世話になっている笑福亭鶴瓶。兵庫県内を走る予定だったが辞退。これも単なる「スケジュールが合わない」との言い訳。数日前に、競泳の池江璃花子東京五輪内定の報道に、「池江さんのためにも東京五輪が開催されればいいですね」との、辞退とは矛盾した言動。鶴瓶さん、あんた東京五輪のこの夏開催に反対でリレーを辞退したのではないのですかと言いたくもなる。
私と同じく福井県出身の、演歌界の大御所ともなっている五木ひろし。彼も単なる「スケジュールが合わなくて」との釈明で辞退していた。五木さん、あんたは日本人の心を歌う演歌界の大御所と呼ばれる存在なんですよ、辞退して平気なの‥とも言いたくなる。五木ひろしに代わって五木ひろしの故郷の隣町の若狭町出身の元日本バレーボール代表の荻野正二さんが走ることになった。日本の国技・大相撲の正大は地元熊本県での走者を辞退している。国技の関取だろうが‥とも言いたくなる。
TOKIO、窪田、香川、五木・鶴瓶・正大などは、今どんな気持ちでいるのだろうか。
他に、故郷の高知県での走者予定だった末広涼子(女優)、茨城県での走者予定だった渡辺徹(タレント)、石川県での走者予定だった常盤貴子(女優)なども単なる「スケジュールが合わなくなった」とだけの辞退理由。常盤貴子の代役として、女優の若村真由美さんが走行することとなった。
このような辞退者たちの中で、「私が走れば沿道が密になり、コロナ感染予防によくないから」との理由ではっきりと辞退理由を公表したのは福岡県での走行を予定していた女優の黒木瞳ぐらいだろうか。大会や試合出場の日程と重なってしまいと具体的に理由を説明しているフィギアの宇野昌磨(愛知)やラグビー日本代表の田村優(栃木)などの理由は納得できる。沖縄での走行予定だった知花くらら(モデル)は、「第二子を妊娠し、苦渋の決断で辞退しました」との理由もたいへんよく理解できる。
単なる「スケージュール合わず」説明の有名人たち、ちょっとなあ‥。東京五輪開催の是非や五輪聖火を巡って、日本では国民間の分断が残念ながら起きているのかと思う。
1年半あまり、視聴率が低迷しながらも続いたTBS(毎日系)の朝の報道番組「グッとラック」が3月末をもって終了した。この朝の報道番組、他の各局の報道番組に比べてかなりレベルの低い報道番組だったためか、平均視聴率も朝8時からの報道番組の中でダントツの最下位だった。大きな原因は、司会の立川志らくのダラダラ司会と能力の低さ。それに、番組プロデューサーたちの能力の低さだろう。志らくなどは最後の回でも「五輪開催反対」を田村淳とともにぶっていた。
コメンテーターの常連だったロンドンブーツ1号・2号のタレント田村淳(47)。彼の能力・知見もかなりの低レベル。2月上旬に早々と「聖火ランナー辞退」をこの番組で公表した「聖火ランナー辞退1号」的存在だ。辞退の理由はかなりつまらない(当時の日本オリンピック委員会会長の「感染防止のために田んぼ道を走ることもありうる」に「この発言に怒りを覚える。ランナーをバカにするな。辞退する。」と辞退。)受け狙いの辞退と言う軽薄な感じが見え見えだった。この田村淳、将来は国会議員を目論んでいるとの憶測もされている。
このTBSの「グッとラック」の後継番組が朝の情報番組「ラビィット!」。「日本で一番明るい朝番組」を旗印に3月29日から始まった。これまでの報道番組路線を大きく転換し、暮らしに役に立つ情報番組としてスタート。司会は麒麟のタレント・川島明。少し視聴して見たが、もう見る気がしなくなった。
TBSは、何度テコ入れしてみても「グッとラック」の視聴率が上向かなかったために、あえて報道番組路線を止めて、他局との差別化を図ったが、まったくの期待外れの状況と早くもなっているようだ。初回2.7%、2回目2.1%、3回目2.2%、4回目はついに1.8%、そして、5回目・6回目は1%を切って0.9%、0.8%となった。「国民をバカにするな」とTBSに言いたくもなる。
国民の知的レベルをあまりにも馬鹿にしていて、その馬鹿さ加減に合わせようという馬鹿番組をもってきたという、TBSの馬鹿さを露呈している。
ちなみに民報各局の午前8時開始の報道番組の最近視聴率平均では、①ABC(朝日系)の「羽鳥モーニングショー」は10.6%、②読売系の「スッキリ」が8.8%、③フジ系の「めざまし8」が6.2%となっている。また、3月までの「グッとラック」の平均視聴率は2.8%と超低率だった。
22年間にわたって小倉智照(73)が司会を務めたフジ系の「とくダネ!」。なかなか優れた朝の報道番組だった。この番組の後継番組が3月末からスタートした。「めざまし8(エイト)」だ。司会は俳優の谷原章介(48)。なかなかの司会ぶりだと見て思った。この谷原章介は、聖火ランナーとして草笛光子(女優)やタレントの出川哲朗らとともに神奈川県内を走る予定だ。30日の放送のでは、東京五輪開催の是非が問われている中、続く聖火リレーの話題を取り上げた。谷原は聖火リレーについて、「アスリートの方たちにとって、自分から辞退はあり得ない。人生をかけてやっているわけじゃないですか! IOC、JOCなりが中止と決定するまでは、やるんだって前提で僕は突き進んでいきたいと思っています」と明言していた。
その上で、「スポーツってビジネスって面もありますけど、平和とか統合の象徴でもあると思う。コロナ禍でも、分断が叫ばれている中でも開催されれば、みんなの気持ちが一つになって日本が盛り上がる」と話し、「中止は中止、やるならやるの早い判断をしていただきたいですね」と続けていた。なかなか、見識や視野に優れている司会者のように思った。「スッキリ!」の司会者・加藤浩二(この3月に吉本興業から解雇・退社)や「羽鳥モーニングショー」の羽鳥アナのよきライバルになりそうな気がした。
さて、コロナ第4波がすごい勢いで感染拡大が始まった。聖火リレーもこのあとどう展開するか分からなくなった。五輪開催そのものも危うくなる可能性もある。だが、一筋の希望への道に向かって歩む努力は国民的にも必要だ。五輪辞退を安易に辞退した人たちは、今、どう、何を思うのだろうか。自分自身への辞退の正当化だけではちょっとさみしいなあ。「日本人としての矜持(きょうじ)とは‥。」を改めてこの分断の中で思う。