浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

麗しのアマリリ 愛犬の月命日に

2009年12月08日 | 歌もの
愛犬が息をひきとって半年になる。月命日の今宵は、多くを聴きたい気分でない。有名なカッチーニの「アマリリ」を連続再生にして小さな音量で流してゐる。歌ってゐるのはヒナ・スパーニで1926年の電気録音SP盤の復刻である。

バロック時代初期に活躍したカッチーニの「アマリリ」を知らぬ音大生は居ないだらう。副科声楽で此の歌を歌ったときのことが甦って来る。皆の前で指名され、恥をかかぬやうにと、慎重に慎重に歌い終えると、教授から「君の歌は草鞋の裏から足を掻いてゐるやうだ」と絶賛されたのだった。周囲の羨望の眼差しを一身に浴びたあの瞬間のことがつい先日のことのやうに思い出される。

スパーニの飾らない奥ゆかしい歌声は実に切ない。愛犬の遺影を眺めながら、楽しかった9年前の北海道キャンプのことなどを振り返ってゐると、時の経つのがなんとも早いことにますます切ない気持ちになる。「アマリリ」を歌ってゐた頃からは数十年が経つといふのに、僕は何をして生きてきたのだらう。

歌には、その時代の空気の匂いや哀しい想い出などを一緒に封じ込める魔力のやうなものが備わってゐるやうだ。愛犬の冥福を祈りつつ、満天の星空を眺めてゐる。オニオン座が丁度真上に位置してゐる。

盤は、洪牙利Club99によるSP復刻CD CL509/10。


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