浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ポンゼルが歌うマスネ「エレジー」

2009年08月06日 | 歌もの
昔、ローザ・ポンゼルといふ大歌手が居た。カラスが絶賛するくらいだからおそらく鷹か鷲くらいのレベルだらう。完璧な技巧を持ち、豊かな声量を生かした余裕の或る歌が聴ける。

マスネのエレジーは名曲・名旋律で数多くのレコヲドが残されてゐる。とても好きなメロディでときどきCD棚から引っ張り出して聴く。ポンゼルはこの名旋律を非常にゆっくりとしたテンポで歌い上げる。豊かな声量と肺活量あってのテンポ設定だと思ふ。体そのものが楽器となる歌い手は、音楽性とそれを表現しきる体が無ければ務まらない。少々内にこもった響きのメッゾ・ソプラノで、その偉大な歌声を讃えてカルーソー女版といふのださうだ。

このCDは1919年の機械式吹き込みの「或る晴れた日に」から始まる。清らかだが何か恐ろしい力を秘めたやうなその歌声は、一度聴くと忘れない。最後のトラックでは、カザルスの伴奏者として活躍してゐたロマーノ・ロマーニの洋琴伴奏でアーネスト・チャールズの俗謡"When I have sung my songs"を格調高く歌ってゐる。

盤は、英國NimbusによるSP復刻CD NI7846。


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