浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

クーセヴィツキによるラフマニノフの「ヴォカリーゼ」

2013年03月27日 | 指揮者
世界大戦が終末を迎える頃、露西亜から米國に渡った大指揮者クーセヴィツキが母国の音楽を録音してゐる。ラフマニノフのヴォカリーゼである。

ゆったりとしたテンポ運びで始まる。いつもは速いテンポで突き進むイメージのクーセヴィツキだが、望郷の念からか、非常にゆったりと静かに音楽が奏でられてゐて、別れの春には心の奥底にまで沁み入る。しかしながら、単にメランコリックとかノスタルジックとかいふ類の音楽ではない。人人の心から永遠に離れ去ることのないものを、音楽で表現するとこのやうな深い音楽になるのだらう。そこには、米國の映画音楽のやうな安っぽさは微塵も感じられない。

夜の庭のシモクレンの花が雨に打たれてゐる。嗚呼、ため息が出る・・・・

盤は、英國BiddulphによるSP復刻CD WHL045。


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