浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

親父とお袋の聴いたマリアン・アンダーソン

2011年04月03日 | 歌もの
親父とお袋が学生時代に聴いたといふマリアン・アンダーソンの演奏を聴いてゐる。お袋はこの日の演奏会が殊の外印象に残ったと見え、其の美声について、何度も同じ話を聴かされて育ってきた。

僕の生まれる前の話なので、太古の話のやうな間違ったイメージを持ったままでゐた。
が、今回、此のCDを聞くにあたって少し調べてみると、アンダーソンの来朝は1953年のことで、親父たちは19歳の学生のときの話だといふことが分かった。

CDにはプリムローズとの協演やオールマンディの伴奏によるアルトラプソディのやうな大曲が含まれてゐる。殆どが戦前の録音であり、アンダーソンが差別と戦ってゐた時代だ。トスカニーニによってザルツブルク音楽祭に抜擢されるといふ幸運を掴み取った1937年以降の10年間の録音を集めたものである。アンダーソンの最盛期の録音であることは間違いない。

コントラルトからアルトの高域まで幅広い音域を楽々とこなすアンダーソンの美声は此の貧しい録音からも十分に愉しむことができる。お袋が席を立って会場の後ろの端で聴いたアンコール曲の「はっきりと届く弱音の不思議」なるものが、なんとなく想像できる。

盤は、英國BiddulphによるSP復刻CD LAB150。


ブラームスのレコヲドは現在、入手が難しいようだが、アンダーソンの美声は同じ時期の下の録音で愉しむことができる。ご存知でない方は、この深い包容力ある美声を是非お聴きいただきたいものだ。
アリア・歌曲・黒人霊歌集「精霊を感じるたびに」(1930-1947)(Marian Anderson Vol.2)
マリアン・アンダーソン,コスティ・ヴェハーネン,ウィリアム・キング
Naxos Nostalgia


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