浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

フランシス・プランテ ショパンの同時代人による奇跡の録音

2006年08月03日 | 洋琴弾き
フレデリック・ショパンの自作自演レコヲド。ピアノ音楽愛好家にとっては誰もが夢見る永遠に叶わぬ夢。ショパンはこのフレーズをどのように弾いていたのだろう、ここではテンポルバートを使っていたのだろう・・・想像の域を出ない。しかし、現代のピアノ弾きたちのつまらない演奏しか聴いたことのない人たちには、考えられないやうな演奏をしていたに違いないと僕は思っている。その一つの証拠がここにあるのでご紹介しよう。

以前にベルリオーズのセレナーデで紹介した仏蘭西人洋琴家、フランシス・プランテがショパンの小品を3曲残している。プランテは1839年生まれであるから10歳のときにショパンが他界したことになり、仏蘭西に活躍の中心をおいていたショパンから大きな影響を受けて育ったことは容易に想像できる。

曲は、エチュードの作品25から1番、2番そして有名な「木枯らし」の3曲。特にプランテの弾く「木枯らし」は「大枯らし」とか「唐辛子」などと云はれていたが、この録音がプランテ79歳の録音であることを考えると驚異的である。しかも2日にわたるセッションで録音された10曲全てがファーストテイクといふから驚嘆する。

それよりも1番と2番のフレージングや左手の使い方、ペダリング、テンポ運びなどが絡み合った音楽づくりは、現代のピアニストしか知らない人たちには絶対に真似のできない全く別の次元のものである。

プランテのショパンの凄さは言葉では表現できない。たった3曲しか聴くことができない。しかし、高齢にも関わらず、しかも電気録音で後世に遺言を残してくれたことに対し、全世界のピアノ愛好家は感謝すべきだ。もしも、この演奏を聴いて、時代錯誤とか懐古趣味とか云うのなら、それはショパンに対する冒涜だと心得るべきだ(と僕は勘違いをしている)。

完全に失われてしまったショパンの真のピアニズムをさぐる一つの手がかりがここにある。

盤は、英國Pavilion Records社の素晴らしい復刻CD OPALCD 9857。


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