浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

キャスリーン・パーロウによるメンデルスゾーンの協奏曲

2008年06月27日 | 提琴弾き
前にもご紹介したキャスリン・パーロウの戦後の放送録音を聴いてゐる。「スカートをはいたエルマン」は1941年に渡米し、その後、母国加奈陀で亡くなるまでを過ごした。今日のレコヲドは、1950年に母国のCBC響とやったメンデルスゾーンの提琴協奏曲の名演だ。

パーロウ60歳のときの演奏だが、技術の衰えは全く感じさせない。第1楽章のロマンティシズム溢れる演奏は、とても戦後の演奏とは思へないが、オケもその意図をよく汲んでゐると思ふ。品のある表現と奥ゆかしい音色はこの通俗曲を品格のある作品に仕立て上げてゐる。

終楽章では、少々大雑把な印象を受けるが、それでもきっちりとエンディングは高揚を見せ、素晴らしい盛り上がりで締め括る。まるでライブ録音であるかのやうな興奮が伝わってくる(ひょっとすると、放送録音なので招待客が客席に居たのかも知れない)。

これだけの演奏のできる大家が、何故、もっと録音を残さなかったのか、恨めしい。僕の幼少時代に、このやうな前時代的な演奏が行われてゐたといふ事実を知り(僕は此の当時オンタリオに居た)、遠い過去の人と思ってゐたパーロウをとても身近に感ずることができて嬉しいかぎりだ。

盤は、国内WINGによるリマスタリングCD WCD59。


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