浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

矢野 滋 ベルリン時代の録音を愉しむ

2014年03月02日 | 歌もの
神戸が生んだ我が國初のコロラトゥーラ・ソプラノ、矢野 滋は神戸市民にとってはなじみ深い存在である。久々にその美声を聴いて昔のことなど懐かしんでゐる。春はそういふ季節である。

記憶が定かではないのだが、年の瀬が迫ってくると必ず神戸中央合唱團のメサイアを聴くためホールに足を運んだものだ。どういふ訳かは知らないが指揮者の中村仁策氏はニサクさんと家族内で呼ばれてゐた。そのくらい中央合唱團やらニサクさんは市民権を得てゐたのだらう。そのステージに矢野滋が立ってゐたのだ。この世界的歌手は僕たち神戸市民にはとても身近な存在に感じられたのだった。

今、数十年の月日が経ち、半世紀以上前の伯林での録音を愉しんでゐる。伴奏はなんと、提琴家ゲルハルト・タシュナーの奥さんであるゲルダ・ネッテ・タシュナーである。フルトヴェングラーとの協演暦もある此の洋琴家のシューベルトはクロイツァーの音色を思わせる美しさと奥深さがあり、矢野の可憐な美声との相性も抜群だ。マリア・イヴォーギュン、エルナ・ベルガー、ロッテ・レーマンといった僕の好きな大歌手について学んだといふことで、当然、矢野の声質も気に入るわけだ。

放送録音ということで、途中にモールス信号音が混入したりノイズも多いが、よくぞ復刻してくれたものだ。僕が知る以前の矢野滋の若かりし歌声が本場の空気とともに我が家に鳴り響いてゐる。其の幸せを噛み締めながら、過ぎ去った日々を懐かしんでゐる。春はそういふ季節なのだ。

盤は、グリーンドア音楽出版による復刻CD OMCDS-001。


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