浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

アドルフ・ブッシュとルドルフ・ゼルキンによるシューマンの奏鳴曲第壱番

2012年11月10日 | 提琴弾き
シューマン作曲提琴と洋琴の為の奏鳴曲をゼルキン・ブッシュの演奏で愉しんでゐる。シューマンの作品は句読点の明確でない主題や次々とたたみ掛けるやうな動機の展開が聴く側を戸惑わせることが多々在るやうに感じてゐる。此の奏鳴曲の第壱樂章も其の一つの例ではないだらうか。

ブッシュの個性は第壱樂章で発揮され押しの強い音楽運びが緊張感をより高めてゐる。一方、ゼルキンの洋琴は独奏の時に見せる硬質で武骨なイメージとは異なり、武骨さはブッシュに譲り洋琴は柔和な表現で抒情的で浪漫的な音楽を奏でてゐる。

シューマンのもう一つの特徴である幻想曲風な、或いは即興的な音楽づくり、またおとぎ話を聞かされてゐるやうな心地よい小品にも魅力がある。此の第弐樂章はその典型で奏鳴曲と云ふよりも組曲の中の第弐曲目であったかのやうな錯覚に陥る。

ブッシュもゼルキンも流麗な音楽を奏でるヴィルトゥオーゾといふイメージは僕には無い。特にブッシュは精神の音樂家だと思ってゐる。此の曲は同じメンバーによるライブ録音も存在するが、今日のレコヲドは1937年10月9日、HMVのスタジオ録音である。精神の音楽家の演奏はやはりライブがいい。かすれる音、暴れる音、不揃いな音、荒々しい息遣い、此のやうな正しくない音たちが作曲家の精神を正しく伝へるといふことが非常に面白い。

盤は、伊太利The Piano LibraryによるSP復刻CD PL189.ただし、此のCDの復刻技術はかなり酷い。

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