浪漫亭随想録「SPレコードの60年」

主に20世紀前半に活躍した演奏家の名演等を掘り起こし、現代に伝える

ラファエル・クーベリックのリハーサル 「レオノーレ序曲第3番」

2007年03月18日 | 指揮者
20世紀半ば、1950年代に入るとLPレコヲドが発売されるやうになる。ラファエル・クーベリックはこの頃、マーキュリーにシカゴ響との録音をいくつか残してゐる。ラファエルの父は一度登場した大提琴家、ヤン・クーベリック、風貌も似てゐる。

ベートーヴェンのレオノーレ序曲第3番の練習を撮ったビデオを見てゐる。珍しくロイヤル・コンセルトヘボウ管弦團との顔合わせだ。中学生の頃に発売されたフルトヴェングラー指揮ストックホルムフィルハーモニーとのリハーサルは音盤が磨り減るほど聴いたものだが、クーベリックのリハーサルは随分と違った練習内容だ。当然といえば当然のことだ。クーベリックの音楽づくりや人柄を知るうえで大変興味深い

練習は序曲を通して演奏するシーンから始まる。アクセントの位置、フォルテがひとつから3つに変わる部分の表現方法、音価、などの読譜上の細かな指示がある。表現上の注意もあるが、フルトヴェングラーが流れを重視したのに対し、クーベリックは響きを大切に扱ってゐるのがよく分かる。例えば、舞台裏からトランペットがファンファーレを吹く場面などは、16部音符を聴き取りやすくゆっくり吹くやうに指示し、距離が離れると音程が低い目に聞こえることを注意してゐる。「フォルテの部分でも美しい響きを忘れないように」といふ言葉が何よりもクーベリックの姿勢をよく表してゐるやうに思ふ。

ある弦楽器奏者がクーベリックに問う。「今の部分はあの弾き方でよかったでしょうか」するとクーベリックは「弦楽器はあれで良かったが、ファゴットが・・・・」と対話がある。フルトヴェングラーのリハーサルにはなかった光景だ。コンサートマスターも立ち上がってボウイングに注意を払うやうに呼びかける。いたって家庭的な雰囲気だ。

それにしても、コンセルトへボウ管弦團の響きはとても美しい。昔、大阪でハイティンクの指揮で聴いたことがある。曲名などはまったく思い出せないが、黒檀のフルートや弦楽器の艶のある響きは忘れられない。多くのオーケストラを聴いたが、維納フィル、ドレスデン、コンセルトへボウの3つが抜きん出てゐると僕は思ふ。

映像は、ZDFが1969年に作成した「クーベリックのリハーサル」より。


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