梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

<乱歩歌舞伎>体験日記・第三夜

2009年09月29日 | 芝居
11時より、2回目の<附立>。

<プロローグ>のええじゃないかは、お陰様で一発OKでした。昨日の録音でかなりの数歌ったので、出演者一同、歌詞が頭に入ったのがよかったのですね。
…このええじゃないか、さんざん歌い踊り狂ったところで、一転、突如現れた人間豹に襲われる修羅場となりますが、ここもなかなか大変です。数分間、舞台中を泣き叫びながら逃げ惑うおぞましい光景をスキなく見せるには、集中力が必要です。
演出の高麗屋(幸四郎)さんがおっしゃる、「気の抜けた人はすぐわかる」とのお言葉の重さ(というか怖さ…)。
とにもかくにも、お客様を物語へと引き込むパワーを、我々で生み出さなければなりません!

さて、明日はもう1回目の<舞台稽古>がございますが、衣裳、小道具、大道具、そして仕掛けといった諸々の準備も、いよいよ大詰となっております。
一昨年の国立劇場での『うぐいす塚』上演時の記事でも申し述べましたが、復活にせよ新作にせよ、「お手本がない作品」を上演するにあたっては、台本を読み込んだ上で、衣裳や鬘といった扮装、それに合わせた持ち道具のイメージを一から作らねばなりません。逆にいえば、そのイメージに基づいて、稽古場で演技を作っていったり、下座音楽を決めたりすることもあるくらいですから、大道具の装置も含め、ビジュアル面の準備は非常に大切であり、難しいのです。

先月の歌舞伎座公演中から、衣裳や鬘はそれぞれの担当とご相談して仕立てられ、今日劇場に運ばれました。大道具さん、小道具さんは、この記事を書いている今(午後11時)も、最後の追い込み作業をなすっていらっしゃることと思いますし、特殊技術専門のアトリエ・カオスの皆様もご同様でしょう。
我々も、それぞれの師匠と各スタッフの皆様との間に入って、明日の舞台稽古が少しでもスムースに進むよう、色々と打ち合わせをさせて頂くことになるのですが、師匠演じます陰陽師・鏑木幻斎のことにつきましても、
小道具方さんと、祭壇になにを飾るのかとか、どんな扇を持つのか。
衣裳方さんと、どの場で何を着て、いつ着替えることになるのか。
大道具のことでは舞台監督の方と、セリ下がりのきっかけや登退場の段取り、仕掛けの方法を伺いました。

しっかり打ち合わせしたと思っても、イザ舞台稽古をやってみると、どんどん変わってしまうということもあるのですけれど、そんなときこそ、どれだけ事前に把握していたかで、迅速な対応ができるかできないかが変わってくるんですよ。
なにかを生み出す、作り出すために、必要な時間と申しましょうか、わかっておかなきゃいけないことの多さ…。
これとても、経験を積んでいれば<応用>が利くのでしょうけれど、私はまだまだ…。

新しい芝居が生まれる瞬間に立ち会える幸せ、喜びとともに、大変さもひしひしと感じております。





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