梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

<乱歩歌舞伎>体験日記・第二夜

2009年09月28日 | 芝居
楽屋作りを朝から行い、高麗屋(染五郎)さんの行う宙乗りの関係者は安全祈願祭とお祓い。
11時から<顔寄せ>、そして<附立>となりました。

<プロローグ>のええじゃないかが難しい~! 速いテンポの歌をうたいながら踊らなくてはならないのですが、油断すると間がずれてしまうし、集団演技で大切なフォーメーションも気にしなくてはいけないし、昨日も書きましたけど、歌詞を思い出してると振りを忘れ、振りを考えていると歌詞が出てこない!

今日しょっぱなの稽古なぞ、いっとう最初で歌詞が出てこなくなり、歌詞が出ないから歌えないので踊ることもできず、完全に<停電>してしまい、恥ずかしいかぎりでした。慣れるのにはまだまだ時間がかかりそうですが、今日は何回もここの箇所を小返しして下さったので、だいぶ体に入ってきました。
それにしても、“歌い踊る”ということが、こんなに息が切れるとは! ミュージカルの方なんか、どうやってらっしゃるのでしょう!? 
…20人の動きが、おのおの猥雑に、激しく強くということで、揃えなくてもよいというのが有難いところで、これが<一糸乱れぬ>なんてご指示でしたら、私は徹夜でお稽古しても追いつかないでしょう…。
ただ、高麗屋(幸四郎)さんがおっしゃられた、貧困に喘ぎながらも、時代に反発しようとしている町人たちの、一揆ににも似た<激しい気持ちの訴え>が、少しでも観客の皆様に伝わるように。それだけは心して勤めたいと思います。

踊りながらの生歌は、我々ではどうしても弱くなる箇所もあるので、録音したものも同時にかぶせることになりました。国立劇場の<録音室>(こんな部屋があったんだ!)で、20人が揃って「ええじゃないか ええじゃないか」と吹き込む光景はなかなか面白いものでしたが、一定のテンポで歌い続けないと具合が悪いということで、試行錯誤しながらの録音でした。
他に、人間豹に襲われるときの悲鳴、わめき声も収録いたしましたが、スタッフ方の「それでは、『助けてくれ~』テイク1…」などという指示がなんだか面白くて、ツボでした。
何にもない壁に向って心を込めて叫んだり助けを求めたりというのも不思議な体験でした。声優さんはどうやっていらっしゃるの?

                 ◯

今日の稽古は6時間くらいでしたでしょうか。台本も変われば音楽も変わる、振りも立廻りもどんどん変わっています。
迅速に対応する力を大いに養うことになる、当月のお稽古場です。