梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

無題

2006年10月20日 | 芝居
先ほどインターネットのニュース記事で知たのですが、中村屋(勘三郎)さんご一門の、中村源左衛門さんが、本日七十二歳でお亡くなりになりました。

昭和三十年に初舞台ということだそうですから、芸歴は五十年を越えていらしたのですね。
私も度々ご一緒する機会がございましたので、その舞台姿はとても印象深く覚えております。『籠釣瓶花街酔醒』の太鼓持ちや『与話情浮名横櫛 木更津海岸見染め』での噺家相生、『髪結新三』の鰹売り…。私ごときが申し上げるのは、はなはだ不遜なことかもしれませんが、出ていらっしゃると<江戸>のかおりがさっとわき起こるような、粋で軽妙で、さりげなくて深い味わい、雰囲気に、正直あこがれに近い感情を抱いておりました。普段もとても気さくな方で、ときにはご自分のお役のもろもろについて、色々とお教え頂くこともございました。そうしたお話の数々は、とても大切なものとして、忘れ得ぬものでございます。
普段からお着物で過ごされていたあのお姿に、もう会うことがないと思いますと本当に淋しい限りでございます。ご家族はもとよりご一門の方々のお心落としはさぞかしとお察し申し上げますが、大大輩の一人として、心よりお悔やみ申し上げますとともに、つつしんでご冥福をお祈り申し上げます。