梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

出どころは様々

2006年10月13日 | 芝居
今月の『元禄忠臣蔵』をご覧になった方は、お気づきかと存じますが、今回の上演では、三味線音楽が一切使われません。というより、<鳴物>さんたちしか、黒御簾の中にいないと考えてくださってもかまわないというくらいで、新歌舞伎だから、といってしまえばそうなのかもしれませんが、非常に珍しいことだと思います。<鳴物>にしても、「第二の使者」での<鐘>と、「最後の大評定」での<時の太鼓>ぐらいなもの。笛方さんは朝の開場時の<着到>、各幕の終幕での<シャギリ>のためだけに出勤くださっているのですよ。

かわって各場で多用されているのが、音響さんの操作による録音された効果音。侍たちの騒ぎ声、小坊主の触れ声、時計の音、フクロウやトンビの鳴き声、などなど。あえてリアルな音を使うことで、臨場感や下座音楽では出しにくい雰囲気を作り出しております。
面白いのは、録音ではない生音による効果音も、いくつか使われていることで、例えば「最後の大評定」の<大石内蔵助屋敷玄関>での、ピチチチチ…という小鳥のさえずりや、<赤穂城大手御門外>で、門扉が開くときのギギギギギーッという音は、それぞれ専用の道具を使って、舞台裏で人の手によって作り出しております。
国立劇場の本公演では、こうした生音の効果音も、基本的に国立劇場の音響さんが担当いたします(歌舞伎座や他劇場では役者(多くは主演者の弟子)の仕事)が、こうして下座、録音、生音と、用途に応じて使い分けているのが、面白いですね。

これからご覧になる方は、是非是非聴き比べて下さいね。