梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

上空で独り…

2006年10月24日 | 芝居
本日の<簀の子>にて…。
花びらを降らせるまでにはまだ十分間があって、なにをするというでもない待機時間。急に目がかゆくなって、ゴシゴシとやっておりましたら、右目のコンタクトレンズがポロッと外れてしまいました。幸い黒衣の胸元に張り付いていたので、無事もと通り装着できましたが、天井部分は当然ながら暗いので、つけ直すのはけっこう大変でした。まあ使い捨てタイプでしたし、楽屋に戻れば予備もあるので、別に支障はなかったんですけれど、足もとは<簀の子>の名の通り、隙間だらけですので、そのまま舞台に落っこちてしまったら、照明があたってキラリと光りながら落下…なんてことになっていたりして。ごくごく小さい物ですから、目に立つこともないのでしょうが、余計な心配をしないですんでよかったです。

散り花などの効果で、舞台の上から作業をするとき、気をつけなくてはいけないのが<落とし物>です。黒衣の懐には、普段は万が一のための裁縫道具や汗ふきなど、細かなものが入っているのですが、<簀の子>から下を覗き込みながらの作業中、ポロリと懐中から落っこちてしまったら大変ですよね。私は<簀の子>にあがるときは、懐を必ずからっぽにしています。お客様の前に出るわけではないので、装着する必要のない頭巾や手甲も、いつもなら腰帯に挟んでおくところですが、これも何かに引っ掛かって外れるのが怖いので(なにしろ簀の子は狭い!)楽屋に置いておきます。
舞台で演ずる方々に何かあってからでは遅いですので、念には念を入れて、というところでしょうか。

以前夏の舞台で、自分のお役の出番を終えてすぐさま<簀の子>にあがって仕事をしなくてはならないとき、走って移動するものですから、汗が吹き出てしまいまして、それが下を見ているうちにポタポタ…となってしまい、幕開きで無人の舞台だったからよいようなものの、黒衣の袖で額を拭いながらの作業に難儀をした思い出がございます。