先年亡くなった安川奈緒氏へ捧げられた詩集であることが巻頭に記されており、巻末には彼女の妹である安川有果の解説が付く。
全文横書きで、95頁。1頁ごとの作品となっているが、個々の作品にタイトルは与えられていない。
”追悼詩集”であるからには、ある特定の人物にまつわる、あるいはその人物との関係にまつわる世界が構築されているわけで、安易には入り込めないようなものとなっている。
作品では絶えず”僕”が”君”に語りかけている。すべての事柄は僕の語る僕らの中に在る。タイトルとなっている”明るい遺書”という言葉は33頁の作品にあらわれる。
踝を傷めた常世の罪過に安逸な生活を僕は生活するの
だが忘れやすい書きかけの手紙を焼いてもらうために
も今も手紙を書いている、明るい遺書をかいているただ
今日が何曜日なのかわからなくなるまで不思議な心臓
のなかで待ち続けていると鼓動のリズムを刻む燻る押
韻はゆるやかにロマン派詩人の戯言となり雑踏のざわ
めきへ転換してゆく、
世界の仕組みに対する苛立たしさがあちらこちらで尖っている。それは書かれている事柄を棘のように突き破って、傷をつけながら(あるいは傷をつけられながら)どこまでも転がっていく。そんな行為が追悼のためには必要だったのだろう。
そして最終作は、「(略)まるで/夕立だね。(ことばは、/世界だった、未来だった、君/だった」と、美しく終わっていく(この作品は中央揃えで印刷されている)。
全文横書きで、95頁。1頁ごとの作品となっているが、個々の作品にタイトルは与えられていない。
”追悼詩集”であるからには、ある特定の人物にまつわる、あるいはその人物との関係にまつわる世界が構築されているわけで、安易には入り込めないようなものとなっている。
作品では絶えず”僕”が”君”に語りかけている。すべての事柄は僕の語る僕らの中に在る。タイトルとなっている”明るい遺書”という言葉は33頁の作品にあらわれる。
踝を傷めた常世の罪過に安逸な生活を僕は生活するの
だが忘れやすい書きかけの手紙を焼いてもらうために
も今も手紙を書いている、明るい遺書をかいているただ
今日が何曜日なのかわからなくなるまで不思議な心臓
のなかで待ち続けていると鼓動のリズムを刻む燻る押
韻はゆるやかにロマン派詩人の戯言となり雑踏のざわ
めきへ転換してゆく、
世界の仕組みに対する苛立たしさがあちらこちらで尖っている。それは書かれている事柄を棘のように突き破って、傷をつけながら(あるいは傷をつけられながら)どこまでも転がっていく。そんな行為が追悼のためには必要だったのだろう。
そして最終作は、「(略)まるで/夕立だね。(ことばは、/世界だった、未来だった、君/だった」と、美しく終わっていく(この作品は中央揃えで印刷されている)。
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