瀬崎祐の本棚

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詩集「遠いサバンナ」  田島安江  (2013/10)  書肆侃侃房

2013-11-18 19:04:38 | 詩集
 第5詩集。109頁に23編を収める。
 生きものたちがいろいろな顔つきで登場してくる。「カタツムリ」では、カタツムリの足跡が午後の陽を受けて光り、「ジャリッ/口のなかでなにかが砕ける/ジャリッ/からだのなかでなにかが崩れる」のである。夜更けに来たあの人も窓辺に立ってカタツムリをみている。そしてあの人は、カタツムリになりたいと思ったことがある、と言うのだ。そして、カタツムリはカメの餌として食われるためにだけ生きているのだと言う。

   ゆっくり歩くのも
   足跡を残すのも
   カタツムリの意志であった
   カメがやってくるまで
   無限大とも思える時間を過ごすために

 自分が消滅するまでになにをすればいいのか、さらには、自分が消滅することにどのような意味があるのか、ということまでも問い直しているような作品となっている。そこには、おそらくは今はもう居ない”あの人”の存在を、今も大切に思う気持ちがあるのだろう。 
 「鶏町」は、「うっかり迷い込んだりしたら/抜けでるのは容易ではない」町だ。そんな町へ「ちょっとした手違いで迷い込んでしまったのだ」。鶏たちの住まいがあるのだが、どこからともなく現れる夜の住人はねずみの顔をしていて、「鶏たちはどんどん不安にな」っていく。

   うっかり迷い込んでしまったわたしも
   不安にとりつかれ
   いまでは
   眠れないまま鶏町に住んでいる

 鶏町にはわたしのような人ばかりが集まって住んでいるのだろう。ちょっとした手違いで来てしまったのに、眠れないでいる内に、わたしも他の人からは鶏のように見えてくるのに違いない。いや、眠れないでいたために鶏町へ迷い込んだのかもしれない。
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