瀬崎祐の本棚

http://blog.goo.ne.jp/tak4088

詩集「きみょうにあかるい」  村上由紀子  (2015/12)  あざみ書房

2015-12-19 22:00:02 | 詩集
 第1詩集。98頁に21編を収める。
 おそらくは誰も悪い人は居ないのに、それでも苛ついているようなのだ。それは、それでも他人が悪いのか、それともわたしが悪いのか。
 「あかるい旋律」では、幼なかった私は「あかるい窓辺に」「ほおっておかれた」と述回している。窓に吊り下げられた紐をひくとオルゴオルが鳴る。

   くすんだレースのカーテンが大きく呼吸をするたびに
   午後の太陽は 裏の長屋のお二階に干された布団から
   窓辺に滑り降りてきた

   私は玩具の紐を
   何度も何度もひっぱって
   何度も何度もたしかめた

 くりかえされる旋律は誰を捜していたのだろうか。
 「恵まれた夢」。今度はおさなごを抱いての夢。今は恵まれていないからみる夢なのか。

   とりこぼされてゆくものを
   (叫ばなければ
   しずかにてらしているから
   (叫ばなければ
   朝が来るまでにそれらをぜんぶ
   ひろいあつめてしまわなければ
   いけない

 詩集はじめの「蝶を摘む」、最後の「きみょうにあかるい」では、それぞれに”ひかり”が詩われている。「いつだって光はとどくことを/知っている」し、その「うつくしいひかりはたしかに/わたしにもとどく」のだが、その”ひかり”はわたしのなにも照らしだしてはくれていないようだった。
 あかるくないはずなのに何故かあかるいことがきみょうなのか、それとも、あかるさが正しくはないきみょうなあかるさなのか。いずれにしても、そのあかるさが居心地をきみょうに悪くしている。そんな、あかるさ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 詩集「ナポレオン食堂」  ... | トップ | 詩集「異界だったり現実だっ... »

コメントを投稿

詩集」カテゴリの最新記事