瀬崎祐の本棚

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詩集「夕顔」  藤田晴央  (2013/11)  思潮社

2013-12-20 23:19:11 | 詩集
 卵巣癌で亡くなられた奥様へ捧げられた第7詩集。
 あとがきによれば、疾病が明らかになってからわずか9ヶ月あまりで奥様は旅立たれている。この詩集には、闘病中に書かれた作品24編、亡くなられた後に書かれた作品6編が納められている。
 「夏至」では辛い妻の言葉がある。「来年の夏至にはもうこの世にいない/そう 妻は言う」のだ。お互いにそれぞれに覚悟はしている妻の余命だったのだろうが、それが具体的に感じられてしまうものとして突きつけられている。普通の人には毎年当たり前のようにめぐってくる季節だが、今日の季節の日を二度と送ることはできないという、悲しみさえ通り過ぎてしまったような思いが伝わってくる。

   妻は
   突然みじかくなった
   わずかな昼を
   手のひらにのせ
   何かの種でもあるかのように
   みつめている

 「同じ言葉」。おそらくは病状がかなりすすんだのであろう、入院生活となった「おまえは/自転車で来たの?/と言う」。それは春に入院していた病院へ見舞った時に言っていた言葉だったのだ。その頃はまだ「治療の先に明日が信じられてた」のだ。しかし今は「家から遠く離れた緩和病棟(ホスピス)」にいるのだ。

   今
   喜びの泉も枯れ果てて
   うれしかったその朝と
   同じ言葉を
   おまえは言うのだった

 「ぼんやり目覚めた」妻の言葉に、何ヶ月か前にあった状態と今目の前にある状態が否応なく比べられてしまう。どこにも向けることのできない感情がただただ沈んでいく。
 奥様のご冥福をお祈りします。
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