瀬崎祐の本棚

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詩集「王墓の春」  古賀博文  (2010/11)  書肆青樹社

2011-02-14 14:20:20 | 詩集
 第6詩集。113頁に14編が収められている。
 作者は九州の地に住んでおり、本詩集には土着的なものに対する関心の在り方が大きくかかわっている。「九州島 パート1」「九州島 パート2」と題される長編詩もある。”九州島”という固有の地があるのかと調べたが不明であった。おそらくは九州全体を捉えているのだろう。今詩集でも海のイメージはさまざまな形で出てくる。これも”島”にその立脚点を求めた作者が必要としたものだったのだろう。
 「雨宿り」は「脳髄のねむりをめぐる旅」という副題がついた7章からなる長編詩である。副題の通りに、レム睡眠状態で去来した想念を綴っているようだ。わたしは海底にもぐり”なにものかの<声>”を聞き、食事の裏側にある腐敗現象を思い、眠りそのものを眠りの中でみている。

   驟雨の中心をさがしていけば海へいたる
   (やはりもうここしか残されていないのだ)
   ひかぶかと燐光をたたえて乱反射している海原
   霧雨がはれ 波濤を月光が 雲間から照らす
   古代からその水域に棲むという
   人魚一族が忘れていった遺失物が
   びっしょり濡れたままとどけられたりする
                      (「雨宿り」4章より)

 非常に意欲的な試みの作品で、同じ手法で私(瀬崎)も書いてみたいものだと思わせる。しかし、眠りのなかのリアリティを言葉として書きとめるのは、相当に困難なことだ。言葉にしたときには、全く異なるリアリティが必要とされるのだろう。
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