瀬崎祐の本棚

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詩集「僕らの、「罪と/秘密」の金属でできた本」 小島きみ子 (2018/01) 私家版

2018-02-02 21:13:34 | 詩集
56頁に、連作のような形式で序詩とそれにつづく15編が収められている。表紙/扉の絵は小笠原鳥類。京谷裕彰の「潜在意識、あるいは創造性の源へ」と題した一文が巻末にある。

 シュルレアリスムについての仮称の手紙を序詩としての以下の15編(散文詩と行分け詩の形態が交互にあらわれる)は、夢を始めとする無意識から浮かび上がってきた言葉を核にして展開されているようだ。しかし、無意識は意識された瞬間に意識的なものへ変容してしまうという宿命を担っている。そのために、無意識の海に漂っていたものをどのような形で拾い上げ、取り出してくるか、そしてそれを意識の上でどのように有意義なものにつなげていくか、そこが大きな命題となる。

この詩集では叔父の遺書から始まり、キリスト教神話や仏教、日常の光景の中にあらわれる哲学などがうねっている。

   きょうは青い月夜ですから、向こうの宵闇へ行けたら行くのに行くことは叶わ
   ない。あなたは夕暮れのルビーオレンジの雲に乗って手を振る。(僕らは同じ
   一つの)空しさの中へ帰っていくしかなかった。・・・帰っていくしかなかった。
   空しさの尽きるところまで(僕らは別人同士)だったから。
                   (「7 (僕らは同じ一つの)」より最終部分)

 エートスは主体固有の理論へとつづいていく。そしてそれに陰影を与えつづけるのがパトスであるだろう。それこそエートスとパトスをどのように調和させるか。この詩集は、その両者が支え合うところのものを目指しているように思えた。

   (あなたと私の愛を愛する子どもたちは(あなたと私自身のスケッチ(表象と
   は(想像力と構想力によって像を作る(美的な極めて美的な(思考を棄てた戯
   れのスケッチという比喩です
           (「11 (Harb・Bの鉛筆で描かれたスケッチ)」より最終部分)


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