前号につづいて、”名井島”について書かれた作品を集めている。名井島は言語に特化したアンドロイドのサナトリウムであり、瀬戸内海の島嶼のひとつである。
「ないしまの」は、ひらがな表記で古い歌謡のような雰囲気をまとっている。この一連の作品の設定はSFを思わせるものなのだが、その一方で古来からの伝承物語でもあるように仕組まれている。
ないしまのみちのやみをふみはつしたねこの
かよひしをひそとたとるあにいもうとのあし
うらはすてにけもののやさしいいんをふみし
たいていきつくうたにあさきりのきりもなや
「息の紙縒(こよ)り」には、アンドロイドである私と、伯母と呼ばれるアンドロイド管理者があらわれる。「コトカタをカタコトとゆすり/コトカタの中の 息の紙縒りをほぐしている」のだが、その「カタコトノコトノハのたてる小さな声は 伯母のくちびるに移される」のだ。
みく とじ さは むつ しじ そむ
カタコトノコトノハのたてる 小さな声を
伯母はくちびるを 魚(うお)のくちに似せて
吸い取る
「ゆめのあとを拭き取るようだ」
最後に「雲梯(うんてい)」と題された散文詩とも小文ともつかない作品が置かれている。”雲梯”というのは小さな初期型のアンドロイドの名称なのだが、その由来が述べられている。なんとそれは、後鳥羽院の御製の歌から生じていたのだという。森の中に落とされた歌はコトノハとなり、やがて実体化したようなのだ。
このように、個々の作品が絡みあいながら、名井島を舞台にした”コトノハ”の形成が次第に現出してきている。
今号には、「覚書一葉」が付いている。名井島シリーズで使われている言葉の簡単な解説である。それによれば、「コトカタ」とは、用済みになった蜜蜂の巣箱でアンドロイドの保育器として使用されていたもの。また「カタコトノコトノハ」とは、コトカタに入っているという雛人形のこと。
これらの言葉の解説は、作品を読む上での手がかりになることは確かなのだが、読み手のなかにさらに渦巻くような部分を創り出すことにも寄与している。巧みな手法であると思えた。
「ないしまの」は、ひらがな表記で古い歌謡のような雰囲気をまとっている。この一連の作品の設定はSFを思わせるものなのだが、その一方で古来からの伝承物語でもあるように仕組まれている。
ないしまのみちのやみをふみはつしたねこの
かよひしをひそとたとるあにいもうとのあし
うらはすてにけもののやさしいいんをふみし
たいていきつくうたにあさきりのきりもなや
「息の紙縒(こよ)り」には、アンドロイドである私と、伯母と呼ばれるアンドロイド管理者があらわれる。「コトカタをカタコトとゆすり/コトカタの中の 息の紙縒りをほぐしている」のだが、その「カタコトノコトノハのたてる小さな声は 伯母のくちびるに移される」のだ。
みく とじ さは むつ しじ そむ
カタコトノコトノハのたてる 小さな声を
伯母はくちびるを 魚(うお)のくちに似せて
吸い取る
「ゆめのあとを拭き取るようだ」
最後に「雲梯(うんてい)」と題された散文詩とも小文ともつかない作品が置かれている。”雲梯”というのは小さな初期型のアンドロイドの名称なのだが、その由来が述べられている。なんとそれは、後鳥羽院の御製の歌から生じていたのだという。森の中に落とされた歌はコトノハとなり、やがて実体化したようなのだ。
このように、個々の作品が絡みあいながら、名井島を舞台にした”コトノハ”の形成が次第に現出してきている。
今号には、「覚書一葉」が付いている。名井島シリーズで使われている言葉の簡単な解説である。それによれば、「コトカタ」とは、用済みになった蜜蜂の巣箱でアンドロイドの保育器として使用されていたもの。また「カタコトノコトノハ」とは、コトカタに入っているという雛人形のこと。
これらの言葉の解説は、作品を読む上での手がかりになることは確かなのだが、読み手のなかにさらに渦巻くような部分を創り出すことにも寄与している。巧みな手法であると思えた。