瀬崎祐の本棚

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詩集「ひとの望み」  近藤起久子  (2014/02)  ジャンクション・ハーベスト

2014-02-22 08:29:13 | 詩集
 第2詩集。77頁に16編を収める。
 冒頭の作品「生活習慣」は、「簡単な/いくつかのことばで/暮らす」とはじまる。身や心を守るために、飾りのようについまといたくなる余分なものを潔く振り捨てている。そのむきだしの立ち姿は頼りなげにも見えるのだが、実は素晴らしく強い心の表れなのだろう。

   ざらざらの砂糖のような
   あらい塩みたいな
   少しのことばで暮らす

 古い歌をうたえば雨がぽつぽつと降り出し、「じょうろに溜まったあの水を/あしたは/鳥が飲みにくる」のだ。渇いたものをうるおしてわずかに溜まったことばも、何ものかが求めてくるのだろう。
 「復元」では、「端が欠け/欠けたところが光っている」ものを「海で洗って/手のひらに載せ」ている。そして「きのう届いたことばは/ひびわれていたのだ」。欠けてしまったものは何だったのか、欠けた部分は何を伝えようとしていたのだろうか。私に残されたかけらから伝えられるものを探ろうとしている。

   すり硝子みたいになったかけらを
   日にかざすと
   空と同じ色をしている

 淡彩画のように描かれた光景は、色を重ねられなかったその省略された部分で、はるか遠くまで続くものを見せている。
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