瀬崎祐の本棚

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墓地  63号  (2008/09)  栃木

2008-10-29 21:21:18 | 「は行」で始まる詩誌
 「月見るうさぎ」石下典子。かって遊女街であった吉原では、懐胎は最も避けなくてはならないものだったという。女たちは次の「月のもの」がくるように、ひたすら願っていたのであろう。吉原では、そんな女たちの願いを込めてきちんと正座した「月見うさぎ」の焼き物が今でも売られているという。

   女の憂苦は絶え間ない
   児を宿すのも辛し 宿せぬのも哀し

   願掛けに求める今時の女(ひと)は
   不順なる月の翳りか あるいは
   居待ち月のまろうどへの得恋か

 現在では懐胎祈願ものとして求める人もいるらしいこの人形にはそんな歴史が隠されていたのだ。女の生理的な本能としての懐胎を、男たちの欲望との引き替えに忌避しなければならなかった残酷さが伝わってくる。
コメント
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