たびたび神社

ライターあかりの神社ブログ

土偶のタブー

2019-10-15 09:04:09 | 縄文への旅

 

<是川縄文館>

 

考古学的な面から考えれば、

胸部・臀部の膨らみや女性器を思わせる刻みなど、

「女性」「妊婦」などを示す

「証拠」が多々見られる縄文土偶を、

「豊穣や子孫繁栄を願うための造形物」

と推測するのは自然の流れです。

ただし、縄文時代の人々は、

あえて「人型」のキモである

「精密な顔の造作」を徹底的に避け、

宇宙人説まで囁かれるような

奇妙な風貌の偶像を造り上げました。

 

もし仮に、制作者たちが妊婦の

「安産」を祈ろうとしたのなら、

対象となる妊婦の女性に似た顔立ちや、

極めて人間に近いスタイルの

造形を選んだことでしょう。

また、当時の縄文人の技術を以てすれば、

現代彫刻に匹敵するような、

写実的な表現を極めることも容易だったはずです。

 

ならばなぜ、縄文の人々は

自らのスキルを封印してまで、

人間の「リアルな描写」を

拒もうとしたのでしょうか……。

もしかすると、縄文の人々の共通認識として、

「人間の顔を描いてはいけない」あるいは

「人間の形を正確に写し取ってはいけない」

という決まりがあったのかもしれません。

千差万別なデザインの土偶を眺めておりますと、

「何らかのタブー」を犯さないために、

縄文人たちはあえて土偶の輪郭をぼやかし、

曖昧に処理しようとした形跡が透けて見えるのですね。